業務アプリの検証が間に合わず、古いバージョンのWebアプリを使っている。セキュリティの懸念もあり何とかしたいが、人も時間も足りないといった企業は少なくない。
IT担当者にとって、OSやWebブラウザのアップデート/アップグレードは、頭の痛い問題の1つである。業務用アプリケーションは、業務を正しく遂行するために、常に正常稼働が求められる。だが、こうしたアプリケーションの多くは、ベースとなるOSやWebブラウザの影響を受けやすい。
IT担当者は、OSやWebブラウザがアップデートされるたびに、業務アプリケーションが正常に稼働するかどうかをテストしてきたはずだ。OSやWebブラウザの開発ベンダーも昨今のセキュリティ脅威の問題から、頻繁なセキュリティアップデートを自らに課して、ソフトウェアの安全性を担保しようとしている。
例えば、最新のWindows 10では、大規模な機能強化が半年に1回、セキュリティアップデートは毎月という高頻度、加えて影響度の高いアップデートも不定期に発生する。Windows 10で搭載された新しいブラウザの「Microsoft Edge」や「Google Chrome」「Firefox」といった主要なWebブラウザも、およそ6〜8週間でアップデートされる。ソフトウェアベンダーがセキュリティ対策に積極的であること自体は歓迎すべきであるが、業務アプリケーションの管理者としてはたまったものではない。
Webブラウザに限らず、他にも2019年に予定されている消費税増税や、現在議論が進んでいる元号の変更など、業務アプリケーションの改修が必要となる機会は頻繁にある。改修が頻繁になればそれだけテストも必要になり、業務アプリケーション管理者は休む暇もない。
クライアントの環境が多様化していることも問題だ。PC端末の違いはもちろん、Webブラウザの種類によっても細かな挙動は異なる。それらの全て漏れなくテストしなければ、業務ができない従業員が生まれてしまうかもしれない。十分なリソースがかけられない中、明らかに負荷が増大する「アプリケーションテスト問題」をどのように解決すればよいのだろうか。
アプリケーションテスト問題の根本的な原因は、細かなテストをIT担当者が手作業で実施してきたことだ。スクリプトなどで自動化できるものもあるだろうが、その範囲は一部に限られていた。高頻度に複雑なテストを漏れなく実行するためには、高度な自動化の仕組みを取り込まなければ対応できない。そこで有効なツールとして登場するのがIBMの「IBM Rational Test Workbench(以下、RTW)」である。
業務アプリケーションのほとんどはWebアプリケーションかWindowsアプリケーションとして提供される。RTWは、その両者でテスト作業の記録と実行を自動化することができる。用意したシナリオに沿ってマウス操作やキーボード入力を実施するとRTWは「テストスクリプト」を自動的に生成する。スクリプトの内容は「○○をクリックする」のような日本語で表記され、画面キャプチャーも取得するため、動作をチェックして修正するのも容易である。
RTWでは、画面上の部品を「オブジェクト」として認識し、操作を記録する。そのため、Webブラウザが変わったり、画面サイズが変わったりしても、テストスクリプトを作り直す必要がない。例えばWebアプリケーションをテストする「Web UI Tester」は、1つのテストスクリプトを「IE(Internet Explorer)」、Google Chrome、Firefoxという3つのブラウザで複合的に実行できる。
異なるOSやWebブラウザでの挙動を確認したい場合も、テスト用の端末は別途必要だが、テストスクリプトは1つで済む。「ログインした後でアイテムを表示し、カートに追加」といった複合的なテストシナリオであっても、容易に自動化して繰り返すことができる。自動のため夜間や休日でもテストできるし、担当者のミスや裁量で「いつの間にか本来実施したいテストと別の内容でテストしていた」ということも防止できる。ログインを切り替えてのテストもできるため、例えばユーザーごとに画面遷移が異なるようなWebアプリケーションでも、それぞれのユーザーでログインしてテストできる。
次項ではエビデンス作成支援などを含めたRTWによる具体的な工数削減効果を紹介する。
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