2019年01月17日 10時00分 公開
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画像認識はどこまで進んでいるのか人気セミナーで見えてきたAI、画像処理、ディープラーニングの「今とこれから」

かつては「未来の技術」として遠い存在だったAI関連技術。現在では身近なところにまで活用が進んでいる。本稿では人気セミナーの講演内容を紹介し、AI関連技術の今とこれからについて考える。

[TechTargetジャパン]

 2018年12月、主に製造業の企業を対象にしたセミナー「今、導入が進んでいる! これからの製造業を変革する、画像処理ディープラーニング実戦セミナー」(主催:SB C&S<2019年1月にソフトバンク コマース&サービスから社名変更>)が開催された。

  • 画像処理向けのディープラーニング関連製品/サービスや、具体的な活用事例に興味がある
  • ディープラーニング環境構築について、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど最適な選択に興味がある
  • ディープラーニングのPoC(概念実証)の進め方やプロセス、データ、プロジェクト化の具体的な事例に興味がある

といった企業向けに、具体的な事例や実践的な内容を紹介した。このセミナーは参加申し込み受け付けを開始するとすぐに満席になってしまうほどの人気を博しており、今後も追加開催が予定されている。本稿ではその講演内容について紹介しよう。

AI市場をけん引するNVIDIAの製造業での事例

 エヌビディアの大岡正憲氏(インダストリー事業部 ビジネスデベロップメントマネジャー)は「GPUディープラーニング」というテーマで講演した。

画像 エヌビディアの大岡正憲氏

 現在のAI(人工知能)関連技術の隆盛は、NVIDIAが開発したGPU(画像処理プロセッサ)を用いた「GPUコンピューティング」の発展により、非常に負荷の重い計算処理を要するディープラーニングの高速化に成功したことが大きな転換期になった、と大岡氏は語る。同社が提供するAI向けGPUプラットフォームを紹介し、具体例として製造業におけるディープラーニング活用の事例を挙げた。

 講演で大岡氏は具体的な事例を基に、従来は熟練した人間でないと難しいとされていた処理の自動化を実現した具体例を紹介した。自動車部品メーカーの武蔵精密工業は、製品の外観検査や検品、溶接部品のスパッタ(溶接で付着した金属片)検査の自動化を推進。ロボットに関するソフトウェアを開発するKinema Systemsは、デパレタイズ(荷物を下ろす作業)を自動化するシステムを開発している。

 今回紹介した事例はいずれもディープラーニングによる学習結果を基にカメラ画像を認識することで「インテリジェントな処理」をする例であり、このような画像認識のディープラーニングの活用は製造業で急速に広がっている。

インキュビットが明かすAIプロジェクトの立ち上げプロセス

 インキュビット代表取締役の北村尚紀氏は「ディープラーニングがもたらす画像認識のイノベーションとその活用方法」というテーマで講演した。

画像 インキュビットの北村尚紀氏

 同社は「最高のテクノロジーとデザインで、想像力を影響力に」というメッセージを掲げ、ユーザー企業に対しては「AI×データ時代」の共創パートナーとなることを目指している。特にITにあまりなじみのない企業を対象に支援を提供しているという。そのために同社は「新規事業の企画立案から開発まで、先端の技術を用いた事業開発やシステム構築を一括支援」している。「AI導入方針の策定」「PoC開発計画策定」「AIの精度検証」など、ITに精通しているわけではないユーザー企業がAIを活用する際に必要となるサービスを提供している。

 講演で北村氏は、インキュビットが手掛けたAI関連プロジェクトの事例を基に、画像認識技術でどのような成果が期待できるのかを紹介した。これまで多数のAI関連プロジェクトを手掛けた経験から同氏は「AI技術の主要なユースケースはほぼ2種類に整理できる」と語る。それは「操作と動作の自動化」と「診断および判断の自動化」だ。

 この2種類の自動化を同時に達成している例として、北村氏は講演で「AI×農業ロボット」の事例を紹介した。画像からトマトの実、枝、幹を個別に認識し、収穫ロボットに応用しているという。収穫の際に、実につながる枝を切るが、枝が重なり合っていることがある。このときに誤検知を起こし、枝ではなく幹を切ってしまうと株が台無しになってしまう。そこで、あらかじめ人間が幹と枝の区別を明示して学習させることで、誤検知率をゼロにした上で検知率9割を達成したという。

 「教師なし学習を用いた製品異常検知」では、製品の検品を自動化する例を紹介した。実は、製造現場では異常の発生頻度はさほど高くない。そのためAIエンジンに学習させるための十分な量の「異常例」を集めることが難しい。そこで教師なし学習によって正常な製品のパターンを覚えさせて、「正常な場合とは違う」画像を検出することで検品の自動化を実現したという。一口にAIといってもさまざまな技術があり、状況に応じて適切に使い分ける必要があることが分かる。

 「画像認識領域でのAIプロジェクト立ち上げプロセス」では具体的で実践的なノウハウを紹介した。

 AI活用には「複雑性と不確実性のマネジメント」が不可欠であると北村氏は強調する。同氏が推奨するのは「データ収集、AIエンジン開発、ゴール設計、システム設計を幾つも並行して小さなサイクルで回す」(同氏)方法だ。AIエンジン開発は「データ収集、ラベル付け、学習、評価」という4ステップからなるサイクルを繰り返し実行する必要があるという。そこで、このサイクルを2〜3カ月で2〜3周回すというPoCをすることになる。

 通常の企業のプロジェクト管理では、まず現状の課題把握をして、ゴールにすべき成果の目標を定めた上でプロジェクト実行の可否を判断する流れになる。だがAI関連のプロジェクトではまず検証してみないと、どの程度の精度が実現できるか分からない。成果の見積もりができない状態でプロジェクトをスタートせざるを得ないのが、AIプロジェクトの特徴だ。

 このため「投資対効果が分からなければプロジェクトを始められない」「実現性の分からないものに投資できない」という結果に陥ることを避ける必要がある。北村氏によると小さな単位でのPoCを繰り返すことで「データ収集方法、ラベル付け方法、学習方法」を決定するという流れが望ましいという。同時に「データがある範囲でしかAIエンジンは学習しない」ことから、対象範囲の計画が非常に重要になると同氏は説明する。

 最初から「想定される全てのパターン」を含んだデータを学習させようとすると、要するコストも時間も膨れ上がってしまう。最初は範囲を絞って成果を確認しながら段階的に規模を拡大する進め方が適しているという。

 具体的にどの程度の量のデータを学習させればいいか、という目安として北村氏は「初回のサイクルでは数百枚程度の画像から始め、2周目では数千枚程度、3周目では数万枚程度と段階的に増やしていく例が一般的だ」と説明する。インキュビットは「取りあえず作って(使って)精度を試す」ことを勧めている。

“群戦略”を掲げてAIに注力するソフトバンクグループ

 ソフトバンクの松田慎一氏は「SoftBankのIoT/AIの取り組み」というテーマで講演した。同氏はテクノロジーユニット モバイル技術統括 IoT事業推進本部の副本部長を担っている。同氏は講演で、ソフトバンクグループ全体でのIoT(モノのインターネット)/AIに対する考え方や具体的な事業内容を説明した。

画像 ソフトバンクの松田慎一氏

 ソフトバンクグループにはさまざまなテクノロジー企業やソフトウェア企業があり、そのシナジーを介してさまざまな「ソフトバンクにしかできない価値」を顧客に届けることを使命としている。持株会社としてのソフトバンクグループが、10兆円規模の運用資金額を誇る投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じてIT企業に出資している。持ち株会社としてのソフトバンクグループの戦略が「AI群戦略」だ。「出資を通じて世界中の主要なAI企業と連携し、緩やかな結合を持ってシナジーを実現し、その価値をお客さまに届けていく」という考え方だという。

 現在、IoTとディープラーニングの組み合わせは、あらゆる産業での活用が期待されている。ソフトバンクは、その中から「現時点で実現可能で、かつ社会に大きなインパクトがある」社会課題を中心に、サービス開発に取り組んでいる。ソフトバンクのインフラを通して、ネットワークの接続性やIoTデバイスとの接続をまず提供し、そこから上がってくるデータを蓄積、分析する仕組みを提供する。

 集まったデータを掛け合わせて得た洞察(インサイト)を、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して各業界事業者に届ける――。こうした形で、さまざまな産業で必要とされる機能やデータを提供し、市場全体の成長を促したいと松田氏は言う。

HPCからエッジコンピューティングまで、HPCシステムズが提供するAIソリューション

 HPCシステムズの若林伴典氏(HPC事業部 HPC営業グループ DLチーム DLシステムエンジニアリングスペシャリスト)は「HPCシステムズが提供するAIソリューション」というテーマで講演した。同社は「科学技術計算向け高性能計算機の開発、製造、販売」というHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)と、「制御用/画像処理用産業機器の開発、製造、販売」というCTO(注文仕様生産)に特化した2事業を柱としている。

画像 HPCシステムズの若林伴典氏

 HPCと産業用機器のナレッジを集約し、高度な処理を求められる「学習サーバ」やさまざまな環境で推論処理を実現する「産業用コンピュータ」などを組み合わせて提供可能だという。AI、機械学習分野のソフトウェアは日進月歩で変化しており、安定的に産業の現場で活用するには両方に精通した高度なシステムインテグレーション技術が求められる。ユーザー企業の要望をヒアリングしてプロジェクト化するといった支援もしており「学習から推論までワンストップサポート」という体制が同社の強みだ。

ディープラーニングと相性の良いIDCフロンティアのクラウド環境

 IDCフロンティアの藤城拓哉氏(クラウド事業本部 ビジネス開発部 ビジネス開発)は「クラウドで構築するディープラーニング環境」というテーマで講演した。

画像 IDCフロンティアの藤城拓哉氏

 同社はクラウド事業とデータセンター事業の2つのインフラ事業を展開しており、NVIDIAが「AIスーパーコンピュータ」と呼ぶ「NVIDIA DGX」シリーズの設置場所としても豊富な実績を誇るという。ディープラーニングの実行環境には膨大な演算リソースが必要となるが、同社のGPUクラウド環境を活用すればリソースの調整も簡単になると、藤城氏は説明する。同社はデータの収集や加工用に安価なクラウドストレージも用意している。規模が拡大してくると従量制課金モデルのクラウドではコストがかさんでくるが、この場合はオンプレミスにもリソースを配置したハイブリッド環境に移行することでコストを最適化する手法もあるという。これからディープラーニングを導入する企業にとって心強い味方となるだろう。

提供:SB C&S株式会社

提供:SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部