サーバやPCだけじゃない、HCIにも到来したBTOの波数年後のスタンダードとなるか

HCIは容易に導入できる利点で注目されているが、それでもまだクラウドのように「今すぐ使いたい」というニーズには応えきれていない。要望があればすぐに出荷できるHCIがあれば、HCI市場はさらに活性化する可能性がある。

2019年02月07日 10時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 サーバとストレージ、ネットワークを一体化した形で容易に導入できる「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)を採用するケースが増えてきた。オンプレミス環境でもクラウドと同様の感覚で迅速に導入できる特徴や、運用管理が効率化できるメリットが関心を集め、次世代IT基盤としての存在感が高まっている。

 だが、HCIにしたからといって調達や導入の煩雑さが思ったほど改善されるわけではないことも分かってきた。従来のサーバ、ストレージなどを別々に構築する方法に比べれば、導入にかかる手間と時間は格段に削減されているが、サイジングや設定といった作業が全て不要になるわけではない。

 デジタルトランスフォーメーションを見据え、日々変化するビジネスの要求に応えるために「もっとスピーディーに、もっと簡単にHCIを提供できないものか」という販売パートナーの声を耳にするケースも珍しくない。こうした要望に応える一つの解が「BTO」(標準構成・流通在庫)モデルだ。大手ベンダーが提供するHCIのBTOモデルについて紹介する。

サーバ、ストレージ、バックアップを一体化する新たな手法

 本来HCIは、クラウドと同等の、つまり使いたい時いつでもすぐ利用できるようなIT基盤として期待されていたはずだ。サーバ、ストレージといったコンポーネントを別々に調達し、要件に合わせて組み上げる必要のある従来の方法に比べれば、HCIでは時間と手間が格段に削減できる。しかしそれでも導入までに数週間はかかるため、エンドユーザーからより簡単な、迅速な方法を求める声が上がるのも当然のことだ。

 そうしたエンドユーザーの声にどう応えるか悩む販売パートナーにとって、有意義な打開策がある。あらかじめコンポーネントを組み合わせておき、在庫に必要なセットアップを施すだけですぐ出荷できる状態にしておくHCIのBTOモデルが登場したのだ。

 法人向けPCやサーバの世界では、CPUやメモリ、ディスクなどのスペックを幾つかの組み合わせの中から選択するBTOモデルが当たり前となっている。BTOモデルが選ばれるのには理由がある。数ある選択肢の中からあれこれ悩み、製品の選択に時間をかけるよりも、ある程度絞られたメニューの中から必要十分なものを選ぶ方が販売パートナーにとってはアドバンテージになる。オーダーから導入までの時間を短縮できる上、コストメリットも出しやすいため、個々の要望に応じてカスタマイズする「CTO」(注文仕様生産)モデルよりもBTOモデルが好まれる場合がある。

 ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が2018年11月に発表した「HPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデル」は、BTOモデルをHCIという新しい領域に適用したものだ。HCIの調達から納入までのスケジュールは、BTOモデルを採用することでさらに短縮される。

画像 SB C&Sの羽尾和弘氏

 HCIはコンポーネント調達の手間を省き、クラウドサービスのように迅速に導入可能で、さらに拡張性にも優れている。こうした点が評価され、この数年でHCI導入の動きが急速に広がってきた。「HPE SimpliVity」シリーズは、HCI製品の中でも注目しておくべき製品の一つだ。独立系ベンダーとして展開してきたSimpliVityが買収によってHPEの傘下となり、SimpliVityのHCI製品がHPEの製品ラインアップに加わった。HPE SimpliVityシリーズは、HPEのIAサーバ「ProLiant」にSimpliVity専用ハードウェアアクセラレーターカードを組み合わせたHCI製品だ。HPEのProLiantシリーズが持つ確固たる実績に裏打ちされた、高い性能と信頼性がその特徴だ。

 「HCIとしての性能、特に重複排除や圧縮といったストレージ関連の機能が充実しており、大量のデータを扱う企業やフルクローンでVDIを構築しようとしている企業に適している」とSB C&S(旧:ソフトバンク コマース&サービス)の羽尾和弘氏(ICT事業本部MD本部ICTソリューション販売推進統括部HCI&Storage販売推進部 部長)は述べる。バックアップソフトウェアや災害対策ソリューションが標準で実装されている。そのため「サーバとストレージの基盤、バックアップやDR(災害対策)も含め、全てを一つの製品で完結できることもメリット」だという。

シンプルなモデルから選ぶだけで、迅速に導入可能

 HPE SimpliVityは国内外で採用が進んでいる。HPE SimpliVityフォーカスパートナーであるSB C&Sによれば、同社が提供しているさまざまなHCIソリューションの中でもHPE SimpliVityのビジネスは堅調で、同社の2018年度のSimpliVity出荷実績は2017年度実績の2倍を超える勢いだという。

 羽尾氏は「これまでのHCIには『Build Your Own』(自分自身でつくる)の性質があった」と振り返る。SB C&Sは実績をさらに積みあげるため、HPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルによって、迅速に導入できる本来のHCIらしさをより強調して提案活動を進める。

画像 SB C&Sの後藤正幸氏

 通常HCIの調達期間は3〜4週間は見ておく必要がある。しかしHPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルは、SB C&Sの倉庫に用意された在庫を基に、顧客が選択したカスタマイズパーツをセットしてすぐに出荷できるため、納品までの期間を大幅に削減できる。SB C&Sの後藤正幸氏(ICT事業本部MD本部技術統括部第1技術部1課 課長)は「調達期間を考慮する必要が無いため、非常に短納期でHCI製品を提供できる」と評価する。

 HPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルには「SimpliVity380G10 S4110 1P8C 192G ExSmall」と「SimpliVity380G10 S4116 2P24C 384GB Small」という2つのモデルがある。「CTOモデルと比べてシンプルなラインアップであるBTOモデルでは導入に必要な要件を満たせないのではないか」と危惧する声もあるだろう。だがHPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルの仕様は、これまでのHPE SimpliVityシリーズの売れ筋モデルのスペックを参考に構成されている。そのためCTOモデルによる導入ケースのうち6割程度が、BTOモデルの仕様でカバーできるという。羽尾氏は「サイジング結果によってノード数の調整が必要だが、一般のエンタープライズユーザーが要求する構成の大部分がカバーできると考えていい」と語る。

設定・キッティングの代行や複合的なソリューションで提案を支援

画像 SB C&Sの中原佳澄氏

 SB C&Sはこれまで、VMwareをはじめとする仮想化製品など、幅広い製品と組み合わせてHCI製品を提供してきた。「SB C&SにはHCIやストレージ、ネットワーク、それに仮想化やセキュリティといった各カテゴリーの技術者がいるため、複合的に提案し、支援できる体制が強み」(羽尾氏)

 2019年1月に「SimpliVityスタートアップサービス」を開始し、販売パートナーの支援体制を強化した。SB C&Sの中原佳澄氏(ICT事業本部MD本部技術統括部第1技術部1課)は、「顧客から求められるのは、導入までの時間を短縮して迅速に実装すること。スピード感を持って製品を顧客のもとに届けるため、HPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルを在庫運用しつつシステムの設定や実装もSB C&Sが担う」と、SimpliVityスタートアップサービス開始の意図を説明する。

サービス概要 SB C&Sの「SimpliVityスタートアップサービス」《クリックで拡大》

 SimpliVityスタートアップサービスでは、顧客へのヒアリングに始まり、パラメーターや構成の確認、現地でのハードウェアラッキングとソフトウェアの初期設定、クラスタリング設定に至るまでをSB C&Sが実施する。「これまでに導入を支援した経験を生かし、つまずきそうなところを事前に精査し、解消しておくことで円滑な導入につなげる」(中原氏)。また将来的に拡張、増設が必要になった際の支援も予定している。

 SB C&Sがサービスを拡充しているのはこればかりではない。HCI関連のシステムエンジニアに対するトレーニングを支援するキャンペーンを実施する。HPEが開催しているHPE SimpliVityの導入、運用に関する有償トレーニングのバウチャーを販売パートナーに無償で提供するというものだ。

 さらに企業が導入の判断をしやすくするため、検証用の実機貸し出しプログラムをSB C&Sは用意している。羽尾氏は「HPE SimpliVityの重複機能やバックアップ機能は非常に優れている。ぜひ実際に触って、どれほどストレージ容量を節約できるか、どれほど早くバックアップが終わるかを体感してほしい」と語る。

 またHPEは「HPE SimpliVity はじめてのHCIキャンペーン」を実施しており、これを活用すれば55%以上の割引が適用される。

企業インフラ見直しの機会に検討する

 「Windows Server 2008」や「Windows 7」の延長サポート終了を背景にして、企業インフラを見直す動きが強まっている。「働き方改革」の必要性の高まりにも合わせ、テレワークやリモートワークを視野に入れ、仮想デスクトップの採用を検討する企業が増えている。しかし企業インフラの見直しを検討する際は、「気付けばインフラ更改のタイミングを逃してしまっていた」ということも少なくないだろう。こうした場合に迅速に納品可能なHPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルは特に有用になるだろう。また「いったんクラウド移行したものの、オンプレミスに戻す必要性が生じた」という場合にも適している。

 いまやサーバやPCの世界では当たり前になっているBTOモデル。HCI市場においても一部のワークロードを提供する環境にはBTOモデルで検討するのが当たり前になる時代が来るのではないだろうか。HPE SimpliVity 380 Gen10 BTOモデルは、その先駆けになるHCI製品だ。


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