容量最適化からクラウドデータ監視まで、いま知るべきストレージ技術の最前線ストレージベンダーが「一から作り上げた」

オンプレミス、クラウド、ハイブリッドとシステムが複雑化する中、効率的かつ素早くデータを管理/活用することは、競争力を強化する上で不可欠になりつつある。そこでいま知っておきたい、ストレージの最新技術について解説する。

2020年03月24日 10時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 企業を取り巻く環境は変化しており、取り扱うデータ量は増加の一途をたどる。単にデータを保持するだけではなく、データ分析をすることで得られるインサイトの活用やAI(人工知能)にデータを学習させることによる業務効率化、新しいビジネスの創出など、期待される役割は多い。

 だが、オンプレミス、クラウド、そしてハイブリッドと、システムを取り巻く環境は複雑化しておりIT担当者が全てのデータを把握するのは困難になっている。こうした中で重要になるのは「いかに効率的に素早くデータを管理、活用するか」というデータマネジメントの視点だ。的確なデータマネジメントには、ストレージに関するノウハウが必要だ。

 本稿は、SB C&Sとピュア・ストレージ・ジャパン共催の企業向けクローズドセミナー(2020年初め)で開催された講演を基に、企業が今取り組むべきデータマネジメントとそれに適したストレージの技術解説をする。

Pure Storageの主力製品「FlashArray」

 SB C&Sの小川正一氏はディストリビューターの立場から、著名なストレージベンダーであるPure Storageのストレージ製品の特徴を解説した。

画像 SB C&Sの小川正一氏

 Pure Storageは、2009年に米カリフォルニア州で設立され、オールフラッシュ分野で急成長した企業だ。2020年2月現在、世界で7500社以上に2万システム以上を提供するという。

 同社の主力製品であるSANストレージ「FlashArray」シリーズには、パフォーマンス(レイテンシ)を最適化した「FlashArray//X」(以下、//X)と、容量を最適化した「FlashArray//C」(以下、//C)がある。

 高い処理能力が求められる環境には//X、バックアップや災害復旧(DR)など大容量でそれほど性能を求めない環境では//Cを用いるといった使い分けや、//Xと//Cを組み合わせる活用方法があると小川氏は説明する。

 「//Xと//Cを組み合わせたユースケースとしては、仮想マシン(VM)のパフォーマンスを判定し、格納するストレージを振り分ける自動階層化、オンプレミス環境とDRサイトとのレプリケーション(複製)、開発やテストにおけるワークロードの統合、スナップショット統合とクラウド連携などがある」

 FlashArrayは、3Uのシャシー(ベースシャシー)にデータ格納用の「フラッシュモジュール」と書き込みデータや構成情報を保護する「NVRAMモジュール」を複数搭載して構成する。フラッシュモジュールは、SSDやNVMeに対応した「Direct Flash Module」を1台のベースシャシーに20本まで搭載できる。ベースシャシーは全てのモデルで統一されており、コントローラーは「アクティブ−スタンバイ構成」で冗長性を確保する。さらに「Direct Memory Module」も利用できる。これは、キャッシュ領域を増やすことでI/Oを高速化できるモジュールだ。

 「これまでキャッシュメモリを増やすためにはコントローラーをアップグレードしなければならなかった。ストレージクラスメモリ(SCM)を採用したDirect Memory Moduleを利用すれば、これまでと比べ、安価でキャッシュ領域を増やせる。このような仕組みにより、小規模構成でスタートし、性能や容量を最適化しながら、コントローラーを交換して簡単に上位モデルにアップグレードできる。アップグレードのために買い替える必要はない」(小川氏)

 容量の拡張方法は大きく分けて2つ。ベースシャシー内にフラッシュモジュールを追加する方法と「拡張シェルフ」を増設する方法だ。拡張シェルフの種類によって異なるが、フラッシュモジュールの追加は10本〜14本をひとまとまりにした「データパック」単位で実施する。データパック単位で「RAID-3D」という独自のRAIDシステムが稼働するため、これまでのストレージのように別途RAIDを設計する必要はない。「無駄な工数の大幅な削減につながる」と小川氏は言う。

圧縮処理と重複排除を支えるストレージOS

 Pure Storageが提供するストレージの特徴に「重複排除」と「圧縮処理」がある。

 「NVRAM(不揮発性メモリ)からフラッシュモジュールに書き込む際に発生するインラインデータとRAID-3Dに格納されたポストプロセスデータの両方に対して重複排除と圧縮処理を実施している。重複排除は、可変長ブロックサイズで実施するため削減率が高い。ゼロデータ削減、パターンデータ削減といった効率的なデータ削減処理も併用している」(小川氏)

画像 重複排除と圧縮処理を使ったデータ削減

 重複排除と圧縮処理の制御で重要な役割を果たしているのが、ストレージOS「Purity OS」だ。「Direct Flash ModuleやDirect Memory Moduleといった新しい技術を活用し、フラッシュデバイスの性能を最大限に引き出すことができるのもPurity OSの優れた管理機能のためだ」と小川氏は言う。

RAID-3DやActive Clusterによる強力なデータ保護も

 データ保護機能には代表的なものに「RAID-3D」「スナップショット」「Active Cluster」がある。

RAID-3D

 RAID-3Dは小川氏いわく「フラッシュに最適なデータ保護方式」だ。同時にモジュールが2つ故障してしまう「同時2本障害」やビットエラーに対応する保護方法が他のストレージと異なるという。小川氏は「従来のRAID方式はビットエラーであってもパリティーの再計算が必要で、データを戻すためにはRAIDを構成する全てのドライブにアクセスしなければならない。これがストレージのパフォーマンス低下につながっている。それに対しRAID-3Dは書き込まれたページごとにチェックサムを設け、特定データのみを修復できる。そのためドライブ全体へのアクセスは必要なく、パフォーマンスの低下を防げる」と説明する。

スナップショット

 スナップショットは、パフォーマンスに影響を与えず瞬時に取得できるという。取得できるスナップショット数は一般的なストレージ製品が数百〜数千なのに対し、約5万と膨大だ。ソースボリュームのデータが変更されるまで容量(スペース)を消費せず、重複排除や圧縮処理も実施する。スナップショットをPure Storageの他ラインアップである「FlashBlade」や他社NFS(Network File System)ストレージ、パブリッククラウドのオブジェクトストレージやパブリッククラウド向け製品「Cloud Block Store」にレプリケーションもできる。

Active Cluster

 Active Clusterは、2台の筐体間でFlashArrayを「アクティブ−アクティブ構成」で冗長化して強固なデータ保護を実現する機能だ。2台の筐体をそれぞれ別の拠点に配置し、それぞれの拠点から書き込み可能な構成になっている。自動で同期するため「切り戻しの作業が一切不要で、復旧に時間はかからない」(小川氏)という。

クラウドのモニタリングサービス「Pure1」

 管理、監視機能は「『Pure1』が大きな差別化要因となっている」と小川氏は語る。Pure1は、クラウドのデータから稼働状況をモニタリングできるサービスだ。「レイテンシ(遅延)」「IOPS(単位時間当たりのI/Oアクセス数)」「帯域幅(Bandwidth)」などの品質や「消費量」「共有データ量」「データ削減効果」といった容量を最長1年前までさかのぼって確認できる。

 「『VM Analytics』という機能を使えば、各レイヤーの性能情報を見て『どのレイヤーで時間がかかっているか』『問題となるVMに関連するボリュームの状況はどうか』などを瞬時に把握できる」(小川氏)

画像 VM Analyticsのメリット

 小川氏は最後にまとめとしてパートナーに向けた支援サービスについて訴求した。

 「パートナー向けには各種資料を閲覧できる『Knowledge Base』や、Q&Aや技術情報のアップデートを確認できるパートナーフォーラムなどのリソースを提供する。『Pure Tech Demo』というデモ環境で実際にFlashArrayとFlashBladeの操作体験もできる。ブログや動画などの公開資料は豊富だ。ディストリビューターとしてさまざまな面からサポートする」

性能、容量が向上した新製品「//XR3」

 ピュア・ストレージ・ジャパンのセッションでは、同社の生駒俊佑氏(シニア・システム・エンジニア)がFlashArrayの新製品「FlashArray//X R3」 を紹介した。「FlashArray//X R2」の後継モデルで、大幅な性能・容量向上を果たしていることが特徴だという。現行モデルを引き継ぐ形で「//X10 R3」「//X20 R3」「//X50 R3」「//X70 R3」「//X90 R3」の5モデルを提供する。

画像 ピュア・ストレージ・ジャパンの生駒俊佑氏

 「全モデルがNVMeに対応しており、ローエンドモデルの//X10 R3は前モデルと比べて10〜25%性能が向上している。容量の拡張性も増しており、//X10 R3は22TBまで、上位モデルの//X70 R3は622TBまで拡張できるようになった」(生駒氏)

 前職で仮想化製品ベンダーのテクニカルサポートを担当していた生駒氏は「仮想マシンや仮想化基盤のトラブルの原因を探っていくと、ストレージのパフォーマンスに問題があるケースが多かった」と語る。そうした経験から見ると「高性能かつ大容量」(可変長ブロックアーキテクチャ)や、「オペレーションミスがあっても戻せる」(24時間以内なら消去したボリュームを戻せる機能)、「手頃なコスト感」(3年ごとにその時点でリリースされている最新のコントローラーを無償提供するEvergreenプログラム)といった仕組みを持つPure Storage製品は「夢のようなストレージ」だという。

Pure StorageディストリビューターNo.1を目指すSB C&S

 さまざまなITソリューションやITサービスを展開するSB C&Sによると、ここ1〜2年でデータマネジメントに対するニーズが急速に高まっているという。

 「SB C&Sのストレージ事業は昨対比で約3倍伸びていて、多くの企業がデータマネジメントへの取り組みを強化していると感じる。中でもPure Storageに対しては、2019年に取り扱いを開始してからパートナーからの引き合いが急増している」とSB C&Sの羽尾和弘氏(ICT事業本部 部長)は話す。

画像 SB C&Sの羽尾和弘氏

 SB C&Sは、ストレージ専任チームを組織し、パートナー向けの支援メニューの強化に取り組んでいるという。具体的には、Pure Storage製品のトレーニングの支援、プロモーション活動/検証機材の貸し出し、同行を含む案件の技術支援、インストレーションサービスの提供といったものだ。

 技術情報についても、情報サイト「C&S ENGINEER VOICE」などを活用して、Pure Storageを含めたストレージやデータマネジメント領域の情報を積極的に提供している。例えば、本セミナーの前にもスタートアップセミナー(注)としてクローズドセミナーを実施している。

※注:参考記事「技術だけではない──ピュア・ストレージのオールフラッシュはなぜ選ばれるのか」(@IT)

 羽尾氏は「これからもデータマネジメント領域で積極的にパートナーを支援する。企業向けにクローズドな説明も継続的に行うので問い合わせしてほしい」と強調した。

写真:くろださくらこ


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