オールフラッシュストレージへの移行が活発化している。大企業の地方拠点や中堅・中小企業では、VDIなどを使ったテレワークや仮想化基盤の効率化などを進める中で、「速くて、手頃で、使いやすい」製品が強く求められている。
「オールフラッシュ」がストレージのメインストリームに躍り出て久しい。メモリセルの高集積化や重複排除、圧縮技術の進展を受けて、今やギガバイト(GB)当たりの単価はHDDと遜色ない。フラッシュの性能を生かしてデータベースなどの高トランザクションを特徴とするワークロードを走らせることはもちろん、仮想サーバ統合によるインフラコストの最適化、仮想デスクトップ環境(VDI)と合わせたテレワークへの対応、さらには事業継続に向けたアーカイブ基盤や統合バックアップ基盤などにも積極的に採用されるようになり、中堅・中小企業や地方拠点への導入もかなりの数に上っている。
とはいえ、「HDDとSSDのハイブリッドの方がコスト効率は良いのでは?」「書き換え寿命の問題がある以上、ミッションクリティカルなデータの格納先としては不安なのでは?」といった声があるのも事実だ。しかし、これらは大きな誤解だ。コストや書き換え寿命などの問題は解消されており、「オールフラッシュを選ばない理由はもはやない」と言えるほどになっている。
オールフラッシュ製品を2013年に導入したある国内企業は7年間にわたって「Oracle Database」を稼働させ続けているが、この間にフラッシュの寿命に達して交換したドライブは1本もなかったという。また、ある国内企業はラック5本で構成していたストレージ基盤をオールフラッシュ製品に切り替え、ラックスペースを11Uサイズにまで縮小できた。消費電力や運用コスト、故障時の対応コストなど、圧倒的なTCO(総所有コスト)削減を果たしたという。
ただし言うまでもなく、“オールフラッシュストレージであれば”どのような製品でも以上のような利点を享受できるわけではない。ではコスト効率、運用効率などの面で最大限の効果を得るためには製品のどこに注目すべきなのか。オールフラッシュの技術動向、企業動向に詳しい4人のプロフェッショナルにポイントを聞いた。
オールフラッシュストレージ市場には、現在でこそ複数のベンダー製品がひしめき合っている。だが、パイオニア企業として市場を長くリードしているのは、2009年に米国で設立されたPure Storageであることをご存じだろうか。
2012年に発表されたオールフラッシュアレイ製品「FlashArray」を皮切りに、無償、無停止でコントローラーを交換できるプログラム「Evergreen」を提供している。コントローラー交換によってソフトウェアとハードウェアをアップグレードして、システムを長期利用できることが特徴だ。さらにAI(人工知能)を活用したクラウドベースの管理システム「Pure1」、非構造化データ向けのスケーラブルストレージ「FlashBlade」など、企業ニーズの変化に応じて新たな製品、サービスを次々と投入して急成長してきた。顧客は現在、世界27カ国7000社に達し、日本国内でも1000台を超えるシステムが稼働している。ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏は現在のビジネス状況についてこう話す。
「2013年に日本法人を設立してから、データの高速性と信頼性が強く求められるミッションクリティカル領域――具体的には、官公庁や医療、教育、金融、製造といったさまざまな分野から採用が進んできました。現在、掲げているミッションは『モダン・データ・エクスペリエンス』の提供です。企業において、より戦略的にデータを活用することが課題になっている中、旧式のインフラがデータ活用を阻んでいる問題があります。モダン・データ・エクスペリエンスとは、企業におけるインフラ管理の複雑さとコストを低減し、データから最大の価値を引き出すことに集中していただくという概念なのです」(田中氏)
ミッションクリティカル領域での豊富な実績に加え、どのようなワークロードでも高い性能(1ミリ秒未満の低レイテンシ)を発揮できること、重複排除率や圧縮率の高さ、シンプルな運用管理といった特徴が評価されているという。現在はビッグデータ分析やAI領域、非構造化データの管理、事業継続や災害対策、クラウドと連携したデータ管理などさまざまな領域で活用されるようになった。冒頭で触れた2つの事例も、多数の導入実績のほんの一例というわけだ。
ピュア・ストレージ・ジャパン プリンシパル・システムズ・エンジニアの岩本知博氏は、国内での代表的なユースケースは「仮想サーバ統合」「VDI」「データベース基盤」の3つだとし、こう説明する。
「仮想サーバ統合では、オールフラッシュの特徴を基にラックスペースや消費電力、オペレーションなど、大幅なTCO削減ができることが利点です。消費電力を10分の1に、TCOを65%削減した事例もあります」(岩本氏)
VDIでの利用においてもPure Storage製品の特徴が生かせる。特に大きな効果が見込めるのは「Windows Update」だ。「1000台同時にWindows Updateを適用しても遅くなることはない」という。「従来は適用先を分散させて数週間かけて実施していたものが、一斉に適用して数時間で済んだ事例」もあるそうだ。
さらに、データベース基盤で利用する利点として「システムのチューニングが不要になること、故障率を劇的に下げられること、性能を担保しながら下位エディションを選択することで大幅にライセンスコストを下げられる可能性があること」などが、多数の導入企業から実績として報告されているという。
このように、国内でもかなりの数の導入実績を持ち、優れた効果を提供しているPure Storage製品だが、田中氏は「モダン・データ・エクスペリエンスを推進するという観点ではまだ十分ではないと考えています」と話す。
「仮想サーバ統合やVDI、データベース基盤での利用は、企業の規模や業種などにかかわらず求められています。しかし、価格の高さや寿命といったフラッシュに対する誤解や、『Pure Storage製品は大規模環境やミッションクリティカル環境向け』といったイメージや先入観があるせいか、中堅企業や地方拠点での採用はまだ十分には進んでいないのです。現在ニーズが高まっているビッグデータ分析やAI、IoT(モノのインターネット)、クラウドネイティブ環境でのデータ活用といった、新しい領域への浸透もこれからだと考えています」(田中氏)
こうした中で、同社が新たな取り組みとして推進しているのが、SB C&Sとのパートナーシップだ。SB C&SがPure Storage製品のディストリビューターとなって日本全国に敷く販売網を生かし、これまでアプローチできていなかった中堅・中小企業や地方拠点に強いリセラーへの展開を強化するという。SB C&S 販売推進統括部 パートナー販売推進部 部長の羽尾和弘氏は、ピュア・ストレージ・ジャパンとのパートナーシップの狙いについてこう話す。
「中堅・中小企業や地方拠点では、働き方改革やテレワークのニーズを受けてサーバ仮想化やVDIを導入する機運が急速に高まっています。さらに『データから新しい価値を引き出そう』という取り組みが進んでいます。工場や販売店、研究開発拠点といった地方拠点におけるエッジでのデータ活用や、クラウドと連携させたデータ活用などです。これまで少なくない企業が大容量のデータを蓄積してきましたが、迅速かつ高速に処理するためにはHDDをベースにしたストレージ基盤では限界があります。そこで、高速で信頼性の高いオールフラッシュ製品への期待が高まっているのです。Pure Storage製品はそうしたニーズに最適だと考えています」(羽尾氏)
SB C&Sは、東京・汐留の本社の他、北海道、東北、静岡、名古屋、大阪、広島、福岡といった日本全国にオフィスを設置し、それぞれ特色を持つ多数のリセラーとパートナーシップを結んでいる。VMware製品を10年以上取り扱ってきた実績から、サーバ仮想化やVDIの他、データベースなどについても豊富な知見とノウハウがある。SB C&S 技術統括部 第1技術部 部長の堀田 哲氏はこう話す。
「SB C&Sの強みは、ただ単に製品を提供するのではなく、豊富な知見とノウハウを生かしてパートナーを支援し、各社の課題解決に最適な仮想化基盤やインフラを提案できることです。ストレージに関してもさまざまなベンダー製品を扱ってきたため、Pure Storage製品の特徴をうまく引き出した提案が可能だと考えています」(堀田氏)
Pure Storage製品が中堅・中小企業や地方拠点に向く理由は幾つかある。1つ目は、性能面でワークロードを選ばないアーキテクチャを備えていることだ。サーバ仮想化が良い例だが、中規模環境や地方拠点では、業務のワークロードをサーバに集約して管理する事例が少なくない。Pure Storage製品は、固定長ブロックではなく可変長ブロックでアクセスできるアーキテクチャであるため、ワークロードが混在した環境でも一貫したパフォーマンスを発揮できる。さまざまな業務システムを統合してもパフォーマンス劣化が見られないのだ。
2つ目は、“圧倒的な”データ削減によってGB単価とスペースを最適化できることだ。重複排除と圧縮を実行するのはデータを書き込む前(インライン方式)であり、ディスク容量を無駄にしない。インライン方式は今でこそ他ベンダーの製品も採用しているが、技術の蓄積があるPure Storage製品では、重複排除と圧縮によるデータ削減率が約10倍に達することもある。“圧倒的”とは決して誇張ではなく、実際に「HDDと変わらないコストで運用できる」という。
3つ目は、運用管理がシンプルなことだ。容量を拡張したい場合は、筐体を追加してケーブルをつなぐだけでいい。システムを止めずにオンラインで拡張することができる。コントローラーを入れ替えるだけで性能の拡張も可能だ。こちらもオンラインで実施できる。
「FlashArrayのラインアップには現在、『//X10』『//X20』『//X50』『//X70』『//X90』という5つのモデルがあります。特徴は全てのモデルで同じハードウェアを採用していることです。エントリーモデルも最上位モデルも同じ品質のハードウェアで、コントローラーを変えるだけで上位モデルにアップグレードできる仕組みです。つまり、ハイエンドと同じ品質のストレージを使いながらスモールスタートできるのです。これはコストやパフォーマンスの点からも大きな利点です」(岩本氏)
全国展開に当たっては、SB C&Sがパートナー向けにさまざまな販売支援策を打ち出していく。営業や技術者向けのトレーニングはもちろん、イベントやセミナーの実施、案件の構築支援、見積もり支援ツールの提供などだ。
Webセミナー形式で『Pure Storage × SB C&Sスタートアップセミナー』(SB C&S主催)の実施を企画しています。Pure Storage製品の取り扱い開始を検討しているパートナー向けにPure Storage製品の優位性を『衝撃的なデモ』を交えてお伝えする予定です。また、SB C&Sは『FlashArray//X10R3スタートアップキャンペーン』を期間限定で開始しました。適用条件は2020年10月末までにSB C&S経由での案件登録承認が完了したもので、同年12月31日までの発注が前提となります。詳細はSB C&S担当営業にお気軽にお問い合わせください。近々、パートナー各社がWebサイトで自由に見積もりを作成できるツールのリリースを予定しています。Webブラウザで必要な情報を入力すれば、数分で見積もりをアウトプットできる仕組みで、提案スピードを各段に改善できます」(羽尾氏)
「FlashArrayの実機を使ったハンズオンや検証機の貸し出し、導入手順の紹介なども積極的に進めていきます。弊社のエンジニアが執筆している技術ブログ『C&S ENGINEER VOICE』でも、技術情報を発信していきます」(堀田氏)
こうしたパートナー支援策が、ユーザー企業にとっても大きな利点になることは言うまでもない。全国どの拠点に相談しても、見積もりからハンズオン、実機検証、実導入まで、均一かつ高度なサービスレベルとホスピタリティーをもって提供されるというわけだ。
今後の大きなトピックとしては、ファイルストレージへの対応が挙げられる。主力製品であるFlashArrayはブロックストレージであり、ファイルサーバやNAS(ネットワーク接続ストレージ)についてはネイティブではサポートしてこなかった。だが、2019年2月にファイルベースのソフトウェアソリューション開発大手のCompuverde(本社スウェーデン)の買収を発表し、ファイルストレージ対応を進めているという。今後は、これまで述べたPure Storage製品の特徴を享受しながら、1つのプラットフォームの中でブロックストレージとファイルストレージが利用できるようになる予定だ。
「ピュア・ストレージ・ジャパンが提供するオールフラッシュは、価格面、技術面の両面で多くの方の手が届くプラットフォームになっています。モダン・データ・エクスペリエンスのコンセプトを基に、高速性、高可用性、信頼性を1つのプラットフォームで実現できます。『Evergreen』の利点を全国のより多くのお客さまに体験していただきたいと考えています。まずは見積もりを取られてみてはいかがでしょうか」(田中氏)
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