セキュリティや生産管理の高度化には多数の監視カメラによる映像データの収集が必要だ。一方で監視カメラをはじめとしたIoTデバイスの稼働監視やメンテナンスは簡単ではなく、担当者を悩ませる。どうすればいいのか。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術が急速に進化する中で、存在感が増しつつあるのが監視カメラだ。
顔認識技術を応用したセキュリティサービス、街中に多数のカメラを設置して防犯や市民サービスを提供するスマートシティー、工場に設置したカメラで品質管理や設備管理を実現するスマートファクトリー――。さまざまな場所に設置した監視カメラの映像データを蓄積・分析して得た知見は、安全性や利便性の向上に欠かせない。監視カメラの安定稼働はその大前提となるものだ。
ここに落とし穴がある。監視カメラは長期間運用されることを想定して耐久性を高める工夫が凝らされているものの、長く使われる中ではどうしてもトラブルに見舞われることがあるからだ。街中に設置されている監視カメラが実は停止しているというケースはそれほど珍しいことではない。
監視カメラが動いていなければ映像データを取得できない。データがなければIoTもAI技術も始まらない。シンプルだが根が深いこの課題をどうすれば解決できるのだろうか。
広い地域に数百台、数千台、場合によっては数万台もの監視カメラを展開している企業や自治体、公共機関にとって、デバイスの安定稼働やメンテナンスは大きな悩みの種だ。
監視カメラはさまざまな精密部品によって構成されている。そのため、ノイズや電圧変動などの影響を受けると意外とあっさり動作を止めてしまう。予期せず停止してしまった監視カメラは再起動の操作やメンテナンスを施す必要がある。しかし監視カメラの台数が数千台、数万台ともなると手作業では人手がいくらあっても足りない。
こうした課題を解決するのが、2020年10月にアムニモが発売したエッジゲートウェイ「amnimo GシリーズAG10」だ。アムニモは、2018年5月に計測機器メーカーの横河電機が100%子会社として創立した会社で、IoT分野に特化したさまざまな製品・サービスを提供している。
エッジゲートウェイの事業を統括するアムニモの小嶋 修氏(IoTエッジビジネス事業部 事業部長)は、もともと自身が創業したベンチャー企業で監視カメラを遠隔監視・再起動できる監視カメラ用ゲートウェイ製品を開発・販売していた。小嶋氏がアムニモの事業に参加することになり、小嶋氏を介してIoT業界の精鋭技術者たちも集結してアムニモのIoTエッジビジネスが発足した。通信機器や通信網、ソフトウェアの開発、各種ベンダーとの契約など各分野に精通するスタッフが製品開発に当たっている。
アムニモの強みはルーターやゲートウェイをはじめとした製品の設計と製造を自社内で完結させている点にある。「ソフトウェアもハードウェアも自社で完全にコントロールできます。エッジゲートウェイ製品市場においてこうした体制を実現している企業は、国内ではほとんど例がありません」と小嶋氏は強調する。
amnimo GシリーズAG10は、監視カメラなどのIoTデバイスをWAN回線と接続する役割を担う。イーサネットでデータ通信と電力供給をするプロトコル「Power over Ethernet」(PoE)準拠のイーサネットポートを4つ備えており、このポートに監視カメラを接続して制御できる。amnimo GシリーズAG10は基本的な通信機能にさまざまな機能を組み合わせている。
「本来であれば複数の装置を組み合わせて実現する機能を、amnimo GシリーズAG10はコンパクトな1台の筐体にまとめてリーズナブルな価格で提供しています」。こう語るのは、アムニモのエッジゲートウェイ事業の企画責任者を務める和田篤士氏(IoTエッジビジネス事業部 企画責任者)だ。PoEによる監視カメラへの電力供給は、通常は独立したPoEスイッチが担う。amnimo GシリーズAG10は電力供給や監視カメラの制御機能、ネットワーク通信機能などを組み合わせることで、遠隔からの監視カメラの死活監視や再起動を可能にしている(図)。
具体的には、amnimo GシリーズAG10で下記のような監視カメラの運用ができる。
こうした特徴があるため、監視カメラのメンテナンス担当者は現地に赴かなくても稼働状況を監視できる。
amnimo GシリーズAG10は、LTEのSIMカードを4枚搭載可能なので、あるキャリアの通信が障害や災害などによって停止してしまっても、別のキャリアのSIMカードに切り替えることでダウンタイムを最小限に抑えて運用を継続できる。「通信モジュールを2個搭載して冗長化を図る方法もありますが、それではコストが高くつきます。amnimo GシリーズAG10は1個の通信モジュールに複数のSIMカードを搭載することでコストの上昇を抑えるとともに、わずか15秒ほどでのSIMカード切り替えを実現しています」(小嶋氏)
amnimo GシリーズAG10は監視カメラの録画データを内部に保存する機能もある。通常はエッジゲートウェイの他に専用の録画装置を利用するのが一般的だが、amnimo GシリーズAG10は録画データ保存用に最大2TBのSSDを内蔵していることに加え、録画機能を制御する「VMS」(ビデオマネジメントシステム)も備えている。「『PoEスイッチ』『LTE通信デバイス』『VMS用コンピュータ』『録画装置』の4機能全てを1台にまとめるとともに、それぞれの機能を連携させることでこれまでの製品では成し得なかったさまざまな機能を実現しています。PoEを介して監視カメラの電源のオン/オフを切り替える機能はその一例です」と和田氏は語る。
開発工程では温度試験をはじめとする各種の信頼性検査を入念に実施しているため、過酷な利用環境に耐え得る堅牢(けんろう)性を備えているという(写真)。
クラウドサービスや他のデバイスとamnimo GシリーズAG10の機能を組み合わせることでさまざまな利用方法を実現することも特徴の一つだ。例えば、監視カメラが撮影した録画データをクラウドにアップロードし、さまざまなロケーションの画像をマルチウィンドウで一望することもできる。警備会社が提供するセンサーとamnimo GシリーズAG10を接続し、センサーからアラートが上がってきたら前後数分間の映像を自動的に切り取ってクラウドに送信するといった使い方も可能だ。
ただし撮影した映像を全てクラウドに送信していては、あっという間にWAN回線が逼迫(ひっぱく)してしまう。クラウドからデバイスの録画データを参照しに行っても、やはり通信が発生する。小嶋氏は「amnimo GシリーズAG10のように、監視カメラやセンサーなどのIoTデバイスと各種ソフトウェアを組み合わせ、その場である程度映像を処理する“エッジコンピューティング”の仕組みが欠かせません」と語る。
amnimo GシリーズAG10はLinuxディストリビューションの一つである「Ubuntu」をOSに採用しており、カスタムアプリケーションの開発ができる。SDK(ソフトウェア開発キット)も用意されており、サードパーティーベンダーが独自開発したソフトウェアを容易に移植することが可能だ。
小嶋氏は「デバイス単体としての機能だけではなく、クラウドと組み合わせたシステム全体に価値がある」とamnimo GシリーズAG10の強みを話す。クラウドのデバイスマネジメントシステムとamnimo GシリーズAG10の録画機能を組み合わせたサービスは、2020年10月の販売開始時点ではまだ実装していないものの、「拡張VMSサービス」として、2021年春には提供を開始する計画だ。LTEを使って遠隔でデバイスを初期設定する機能や、監視カメラの死活監視、再起動などの機能も2021年春の提供開始を予定している。今後、屋外設置を前提とした専用筐体に収めた製品も市場投入するという。
将来の構想としてAI技術の活用も視野に入っているという。既に用途に応じてプログラム可能な集積回路FPGA(Field-Programmable Gate Array)をamnimo GシリーズAG10に搭載し、画像認識用のAIモデルを動かせる製品を開発中だ。「amnimo GシリーズAG10は監視カメラ以外のさまざまなIoTデバイスも接続できますから、画像以外の用途でもAI技術を応用可能です」と小嶋氏は期待を寄せる。
「amnimo GシリーズAG10単体でも非常に競争力の高い製品だと自負していますが、あくまでもシステム全体を構成する一つのパーツにすぎないと考えています」(小嶋氏)。“箱を売っておしまい”ではなく、クラウドと組み合わせてより高い価値を長期にわたって提供することをアムニモは目指している。今後もエッジゲートウェイの機能と品質のブラッシュアップを進め、将来は世界的に脚光を浴びるIoT製品へと成長させる構想だ。
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