NFTや仮想通貨を盗む「ソーシャルエンジニアリング」はWeb 3.0でも“最恐”か「Web 3.0」を狙う“古い手口”【前編】

Cisco Systemsのセキュリティ研究機関によると、次世代Web「Web 3.0」の構成技術を狙った攻撃の手口は驚くほど古い。だからこそ油断は禁物だ。Web 3.0を狙った攻撃に企業はどう備えるべきか。

2022年03月23日 05時00分 公開
[Shaun NicholsTechTarget]

 「Web 3.0」(「Web3」とも)は、ブロックチェーン技術を中心に使った分散型の次世代WWW(ワールドワイドウェブ、以下Web)だ。巨大IT企業への依存度が高い従来型Webからの脱却を目指し、Web 3.0の構成技術の採用に取り組んでいる企業がある。しかし専門家は、Web 3.0でも企業を狙うサイバー攻撃の脅威は従来型Webと変わらないと指摘している。

 Cisco Systemsのセキュリティ研究機関であるCisco Talosの報告書によると、暗号資産(仮想通貨)や分散型アプリケーションといったWeb 3.0を代表する技術を採用している企業が直面する主な脅威は「ソーシャルエンジニアリング」だ。ソーシャルエンジニアリングは、人間の心理を巧みに利用して、機密情報を入手する行為を指す。

Web 3.0でも変わらない「ソーシャルエンジニアリング」“最恐”説

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 この報告書によると、Web 3.0の構成要素である「NFT」(Non Fungible Token:非代替性トークン)では、その保有者が最大のセキュリティリスクになる。NFTとは、デジタル資産の所有権を証明する手段として、ブロックチェーンに保存する特殊なデータだ。攻撃者はソーシャルエンジニアリングによってNFTの保有者から認証情報を手に入れ、NFTを悪用する恐れがある。

 Cisco Talosの研究者、ジェイソン・シュルツ氏は「ユーザーが新しい技術を使うとき、最大のリスクは『人間の脆弱(ぜいじゃく)性』だ」と述べる。使いこなせていない技術はユーザーの誤った判断を招きやすい。「だから今、Web 3.0のユーザーが狙われやすい」とシュルツ氏は言う。

 ソーシャルエンジニアリングの中で注意すべき手法としてCisco Talosは、

  • ユーザーのURLの入力ミスを悪用して、不正なWebサイトに誘導する「タイポスクワッティング」
  • ブロックチェーンシステム「Ethereum」(イーサリアム)のドメイン名を人間が読める名前に変換する「Ethereum Name Service」(ENS)ドメインのなりすまし

を挙げる。攻撃者がENSのドメインを購入し、例えば金融機関のドメインに見せかけてユーザーから機密情報を入手する可能性がある。

 攻撃者は「シードフレーズ」も狙っている。シードフレーズは暗号鍵の生成に使うランダムな文字列だ。攻撃者はこれがあれば、ユーザーのウォレット(暗号資産の仮想財布)にアクセスし、暗号資産を別のウォレットに移転させることができる。シュルツ氏によれば、NFTや暗号資産を標的にした攻撃の大半は、ユーザーがだまされてシードフレーズを渡してしまうことから発生している。


 後編は、Web 3.0の構成要素を悪用した攻撃者が、ソーシャルエンジニアリングの被害者になった例を紹介する。

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