AIで空き駐車場を収益源に 不動産会社が開発した需要予測システムとは全社利益を15%アップ

不動産運用投資会社が、自社が運営する駐車場の需要予測を通じて利用を最適化し、全体利益を15%向上させた。需要予測システムをどのように構築したのか。

2025年05月16日 06時00分 公開
[Eileen YuTechTarget]

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 不動産グループCapitaLand Group傘下の不動産投資運用会社CapitaLand Investmentは、自社が管理する駐車場の需要予測システムを活用してスペースの最適化を図り、全社利益を15%増加させた。

 この需要予測システムを、CapitaLand Investmentは3カ月で構築し、同社が所有するビジネスパーク(複数のオフィスビルが集約した地区)と商業ビルの駐車場約20カ所に展開した。その開発工程と、システムの中核となる技術を紹介する。

需要予測システム開発から実稼働までの道のりとは

 CapitaLand Investmentは、定期利用駐車場の利用者数が少ない時間帯に駐車場を一般利用者向けに開放することで、利用者の満足度を高めることを目指していた。駐車場の利用パターンを正確に予測し、効果的な駐車スペースの活用による収益の向上も見据えていた。

 需要予測システムの開発には、以下の機械学習アルゴリズムやツールを活用している。

  • 機械学習アルゴリズム
    • ロジスティック回帰
    • ラッソ回帰
    • ランダムフォレスト
  • 機械学習フレームワーク
    • 検索エンジン運営企業Yandexが提供するオープンソースライブラリ「CatBoost」
    • Microsoftが提供する機械学習フレームワーク「LightGBM」(Light Gradient Boosting Machine)

 これらのアルゴリズムやツールは、大規模なデータセットやラベル付きデータを扱う能力を持ち、駐車場の空き状況や利用率といった具体的な予測に適することから、CapitaLand Investmentの機械学習モデルの学習に採用された。

 最新のデータパターンに基づいて需要予測の精度を高められるように、CapitaLand Investmentは全ての機械学習モデルを週単位で稼働させ、翌週の予測を生成している。その中で最も性能が高いモデルを週ごとに選択して、翌週の駐車スペースの割り当てに使う。この評価プロセスを通じて、同社は需要予測システムの精度と効率性を継続的に改善できると考えている。

 需要予測システムは、季節ごとの混み具合の傾向やイベント開催による需要の変動も考慮する。その結果、駐車場の需要が高い時期には、定期利用駐車スペースを一時利用者に開放できるようになった。駐車場を最大限に活用しつつ、利用者体験を向上させることにも成功した。

 需要予測システムの実装段階では、懸念事項への対応やプロジェクトの進捗(しんちょく)を定期的にステークホルダーと共有し、関係の構築に尽力した。特定の駐車場でパイロット試験を実施し、システムの本格導入前に潜在的な問題を発見し解決につなげた。駐車場の利用者からフィードバックを収集し、システムに必要な微調整を加えた。

プロジェクトから得た学びは?

 このプロジェクトを通じてCapitaLand Investmentは、拡張性があるシステムやAIモデルの構築が成功の鍵であり、大規模なデータセットを処理する能力の重要性を学んだ。基盤となるインフラは、駐車場数や利用者数が変化してもパフォーマンスを損なうことなく運用できる拡張性が求められることも理解したという。

 需要予測システムはリアルタイムデータや日々変動する駐車場の利用パターンに適応する必要がある。この点についてCapitaLand Investmentは、さまざまな機械学習モデルを使用したことが功を奏したと説明する。それぞれの機械学習モデルが独自の強みを持ち、予測タスクに対してそれぞれの強みと能力を発揮したと評価する。

 CapitaLand Investment子会社で宿泊事業部門のThe Ascottは、以下から取得するリアルタイムデータを活用してAIチャットbotを運用し、おすすめの観光スポットなど、旅行に関するさまざまな情報を提供している。

  • Microsoftの検索エンジン「Bing」
  • Azure Mapsの「Get Search Nearby」
    • ある場所の周辺にあるPOI(Point of Interest、特定の目標物)を検索するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)。
  • 気象予測データを取得するAzure Mapsの「Weather Service」
  • The AscottのWebサイト「DiscoverASR.com」

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