「詐欺の被害に遭う可能性を下げるために、詐欺に対する理解を深める」ことを目的に、ラックの金融犯罪対策センターが昨今のデジタル詐欺のトレンドを紹介した。
サイバーセキュリティの世界ではランサムウェア(身代金要求型マルウェア)やゼロデイ攻撃、昨今では急速に進化した生成AIを悪用したフィッシングメールやディープフェイクなどが話題に上る。だが実のところ、社会全体を見渡した場合にはかつての“オレオレ詐欺”のような特殊詐欺など、必ずしもコンピュータ関連のテクノロジーを活用するわけでもなく、単に口先でだます手法も大きな被害を生んでいるのが実情だ。
こうした状況に対して、だまされた側の不注意や警戒心の欠如をあげつらっても被害の減少にはつながらないだろう。サイバーセキュリティ関連サービスを提供するラックでは、「安心・安全な金融サービス環境の実現」を目指して2021年5月に金融犯罪対策センター(FC3:Financial Crime Control Center)を設立。「金融犯罪被害をゼロにしたい」という思いを持って「信じられる社会」の実現に向けて取り組んでいる。2025年3月には一般向けの啓蒙書として「だます技術」(ISBN 978-4-297-14728-0)も出版されており、「犯罪者の具体的な手口を知り、被害者がだまされてしまう心理を理解することで詐欺の被害に遭う可能性を下げる」という考えに基づく情報発信も積極的に行っている。
金融犯罪対策センター長の木村将之氏は「詐欺でだまされないために重要なこと」として、「相手を知り、自分を知る」という言葉を挙げた。これらの理解が深まることで、同氏は「似た詐欺に気づける」「冷静に判断できる」「新しい手口に対応できる」といった形で被害者側のリテラシーが向上していくことが期待できるとした。
続いて、詐欺の手口の具体例として以下の5種類が紹介された。
なりすまし・投資詐欺は、TVなどに出演している著名な投資家になりすまして信用させる手口。本人であると信用させるために偽造した免許証の画像を送ってくることもあるという。その後、値上がりが見込め、自分も投資している銘柄への投資を勧められ、指定された口座に振り込みするよう求められるというもの。対策例として、「自分にとって都合が良さそうに見える表現に注意する」「SNSやニュースサイトなどの広告をクリックしない」「家族や友人、同僚など周りの信頼できる人に相談する」などが挙げられた。
サポート詐欺はサイトの閲覧中に広告などをクリックした際に、画面に「ウイルス感染」などの警告画面を表示し、「サポート問い合わせ先としてMicrosoftのロゴと電話番号が表示され、電話をかけると対応費用を振り込むよう指示されるというもの。正常なサイトに不正な広告を掲載するなどの手法で実現しており、さらに全画面表示でマウスポインタやウィンドウを閉じるためのボタンを隠すなどしてユーザーを慌てさせる。対策例としては、以下のような基本的な操作方法をあらかじめ把握しておくことが推奨されている。
こうした事例解説を踏まえ、犯罪者が駆使する手口として「本物と錯覚させる」「美味しい話でひきつける」「話術と仕掛けで信用させる」「考えられない状況に陥れる」という4点が紹介され、「被害者は『思い込み』『欲求』『安心』『冷静さを失う』という心理状態になり、だまされてしまう」と説明された。
金融犯罪対策センターを立ち上げて初代センター長を務め、現在は金融犯罪対策エバンジェリストとして活動する小森美武氏は、最近のトレンドについて「今、金融犯罪や特殊詐欺の被害が急増している」「被害の現場も、リアルからインターネットに移ってきている」「手口の巧妙化も進んできている」などと紹介。加えて、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)が公表したデータを踏まえ、「詐欺とインターネット犯罪が急増している」「2024年の犯罪被害総額は約4021億円で過去最多で、そのうち詐欺による被害額は約76%を占める」「財産犯の主流は窃盗から詐欺に劇的に変化」といったポイントを指摘した。
小森氏は新しい手口として証券口座への不正アクセスによる被害が急増していることも紹介しつつ、次々と新しい手口が出現するように見えても、整理すれば詐欺の手口は前述の4つにまとめられると指摘。基本的な知識をきちんと持っておくことの重要性を強調した。
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