「ドラゴンクエストX オンライン」にGeminiの対話型AI導入 選定の決め手は?“会話する相棒”を実装

スクウェア・エニックスは、「ドラゴンクエストX オンライン」にGoogleの生成AI「Gemini」を活用した対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」を導入すると発表した。人間のプレイヤーにどう役立つのか?

2026年04月07日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

 スクウェア・エニックスは、サービス開始から14年目を迎えるオンラインRPG「ドラゴンクエストX オンライン」において、Googleの生成AIモデル「Gemini」を導入した対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」を発表した。2026年3月18日、Google Cloudとスクウェア・エニックスが会見で発表した。

なぜGeminiを選んだのか?

 スクウェア・エニックスは、日本を代表するロールプレイングゲーム(RPG)の「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズなどを持つゲームメーカーだ。同社は10年以上にわたりゲームにおけるAIの高度な実装や研究開発を続けており、社内には「AI&エンジン開発ディビジョン」という専門部署を有している。

 ドラゴンクエストX オンラインは、1986年から続く「ドラゴンクエスト」シリーズ初のオンライン専用RPGだ。2012年のサービス開始から2026年8月で14周年を迎え、月数十万規模のプレイヤーに親しまれている。開発当初から「ドラゴンクエスト好きが集まる遊園地」をコンセプトに掲げており、ゲーム運営が用意したコンテンツを遊べるだけでなく、SNSやイベントを通してプレイヤー間で交流できることが特徴となっている。

 おしゃべりスラミィ開発の背景には、ドラゴンクエストX オンラインの遊園地が拡大したことにともなう課題がある。14年にわたるアップデートにより、ゲーム内には膨大なコンテンツが構築されたが、新規のプレイヤーはどこから遊んでいいが分からなくなり、迷ってしまうケースが出ている。

 ドラゴンクエストシリーズの生みの親である堀井雄二氏は、クエスト等で会話するだけのNPC(住民や敵など、人間のプレイヤーではなくコンピューターが操作するキャラクター)にAIを組み込むのではなく、「一緒に冒険し、困ったときに教えてくれる友達や相棒としてAIを活用したい」と語っていた。これを受け、プレイヤーのこれまでの冒険を記憶し、状況に応じた会話ができるAIバディの構想が立ち上がった。

先進性・拡張性・マルチモーダル、Gemini選定の決め手

 スクウェア・エニックスがAIの相棒としてGoogle CloudのGeminiを選定した理由は、高い先進性と拡張性にある。スクウェア・エニックス AI&エンジン開発ディビジョンの荒牧岳志氏は、具体的な選定理由として以下の3点を挙げた。

スクウェア・エニックス AI&エンジン開発ディビジョン ジェネラル・マネージャー 荒牧 岳志氏 スクウェア・エニックス AI&エンジン開発ディビジョン ジェネラル・マネージャー 荒牧 岳志氏(提供:Case HUB.News)

 1つ目に、GeminiのLive API(GeminiとWebSocketを通じて低レイテンシで双方向のコミュニケーションを実現するリアルタイム音声・動画対話API。WebSocketは、WebブラウザとWebサーバ間で双方向通信をするための通信プロトコル)による、リアルタイムな応答性だ。AIとの会話においては、遅延は没入感を削ぐ大きな要因となる。Live APIは低遅延でマルチモーダルな対話を可能にする。荒牧氏は、この機能を活用することで、プレイヤーの問いかけに対し遅延なく自然に応答できるユーザー体験を提供できると説明する。

 2点目の理由は、世界観に合わせた高度なカスタマイズ性だ。単にAIモデルをそのまま利用するのではなく、世界観や設定の調整や出力チェックを実施することで、“ドラゴンクエストらしさ”を保ち、ゲームの世界観を損なわない応答生成を実現している。固有のキャラクターに合わせたボイスを同時に生成し、テキストと音声の両方で「生きている」感覚を創出する。

 3点目は、マルチモーダル機能の活用だ。AIはゲーム画面の画像や文字情報を認識しており、プレイヤーの現在の行動や服装の変化を察知して自発的に話しかけられる。これにより、単なる検索エンジン的な応答にとどまらない、双方向のコミュニケーションが可能となった。

開発中の対話型AIバディおしゃべりスラミィ 開発中の対話型AIバディおしゃべりスラミィ(提供:Case HUB.News)

AIは「アイアンマンのスーツ」、開発者の負荷軽減で進化するゲーム体験

 今回の取り組みは、プレイヤー体験の向上だけでなく、ゲーム開発手法の変革も提示している。Google Cloud ゲーム インダストリー グローバル ディレクターのジャック・ビューザー氏は、AIによる開発の効率化を「アイアンマンのスーツ」に例え、開発者がよりクリエイティブな領域に集中できる環境をもたらすと強調した。

Google Cloud ゲーム インダストリー グローバル ディレクター ジャック・ビューザー氏 Google Cloud ゲーム インダストリー グローバル ディレクター ジャック・ビューザー氏(提供:Case HUB.News)

 この発言に関連して、スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストX オンライン」ショーランナー 安西 崇氏は、同社ではすでに開発工程でAIを活用していることを明らかにした。例えば、プランナーが服装などのイメージを伝える際、画像生成AIを用いて視覚化することで、デザイナーとの情報共有を効率化している。

スクウェア・エニックス 「ドラゴンクエストX オンライン」ショーランナー 安西 崇氏 スクウェア・エニックス 「ドラゴンクエストX オンライン」ショーランナー 安西 崇氏(提供:Case HUB.News)

 今後の展開について、安西氏は「オンラインゲームで遊ぶとき、目の前のキャラクターの中に誰が入っているかは重要ではない。AIがそこに入ってきても、さらに自然に遊べる新しい未来が来るのではないか」と語る。

 スクウェア・エニックスは、2026年3月21日から3月30日まで「おしゃべりスラミィ」のクローズドベータテスト参加者の募集を実施した。実際のプレイヤーに対応できるか負荷などを検証し、正式サービスに向けた準備を進めていく。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「スクウェア・エニックス、ドラゴンクエストX オンラインにGoogle Gemini導入」(2026年4月2日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。

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