2031年に60兆円規模へ
「AWSかAzureか」では済まない ”ネオクラウド”が迫るクラウド戦略の再設計
AIインフラ需要の急増を背景に、「ネオクラウド」と呼ばれる新たなクラウド市場が拡大している。ネオクラウドは、企業のクラウド戦略にどのような影響を与えるのか。
AI(人工知能)向けインフラ需要の急増により、クラウド市場の構造が大きく変わり始めている。調査会社Synergy Research Groupによると、「ネオクラウド」と呼ばれる新たなクラウド領域の売上高は2025年通年で250億ドル(約3.7兆円)を超え、2031年には4000億ドル(約60兆円)規模に達する見通しだ。年平均成長率は58%に及ぶ。ネオクラウドの登場は、「新しいクラウドの登場」にとどまらない。企業にどのような影響を及ぼすのか。
ネオクラウドでどうなる企業のクラウド戦略
併せて読みたいお薦め記事
クラウドバックアップの関連記事
ネオクラウドの成長の背景にあるのは、GPU(画像処理装置)を中心としたAI向け計算資源の不足だ。従来のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は汎用(はんよう)的な処理を前提に設計されているが、AIワークロードは並列処理や高密度な計算資源を必要とする。このギャップが、ネオクラウドという新たな選択肢を生み出した。
ネオクラウドは、GPU-as-a-Service(GPUaaS)や生成AI基盤を中心に、高性能かつ高密度な計算環境を提供する点に特徴がある。代表的なプレーヤーには、CoreWeaveやCrusoe、Lambdaなどがあり、急速に存在感を高めている。
従来のクラウドは「汎用的な弾力性(elasticity)」を前提として設計されてきた。CPUベースで、さまざまなアプリケーションを柔軟に処理することを目的としている。一方でAIワークロードは、並列処理、データの局所性、計算資源の集中といった制約を持つ。この違いにより、従来型クラウドでは効率や性能が頭打ちになるケースがある。
ネオクラウドは、この制約に最適化された「GPU中心アーキテクチャ」を前提に設計されている。結果として、処理密度の向上、デプロイの高速化、スケーリング効率の改善といったメリットを実現する。AIの本格運用が進むにつれ、こうした差異は無視できないものになる。
さらに注目すべきは、競争の軸が変わり始めている点だ。ネオクラウド事業者に加え、OpenAIやAnthropicのような「プラットフォーム型プレーヤー」も台頭している。これらはインフラそのものではなく、AIモデルや開発環境をクラウドのように提供する存在であり、インフラ層とプラットフォーム層の境界を曖昧にしている。
この構造変化は、企業の情報システム部門に新たな判断を迫る。従来のように「AWSかAzureか」といった選択では済まなくなる可能性がある。GPUリソースの確保、コスト最適化、AI基盤のロックイン回避といった論点が、より重要になる。
特に注意すべきは、「AIはどこで動かすべきか」という設計の前提だ。従来のクラウドにそのままAIを載せるのか、ネオクラウドを使うのか、それともプラットフォーム型AIに寄せるのか。この選択を誤れば、性能不足やコスト増大、さらには将来的な移行困難といったリスクを招く。
AI導入が検証フェーズから本番運用へと移行する中で、クラウドの選択は単なるインフラ選定ではなく、「アーキテクチャ戦略そのもの」になりつつある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[スパイスファクトリー株式会社] レガシーに消えるIT予算8割 「刷新か延命か」をAIと人で見極めるための手順 -
製品資料
[JetBrains s.r.o.] ソフトウェア開発は「コーディングエージェント」でどう変わるのか? -
事例
[テクバン株式会社] 太陽ホールディングスは国内外拠点の端末5000台をどう管理しているのか? -
事例
[株式会社キーエンス] PCが苦手でも自動化できる ポポラマーマなど4事例に学ぶ「ナビ搭載型RPA」活用 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
2
「GitLab」に最高深刻度の脆弱性 2014年以降の全版に影響を及ぼす恐れ
-
3
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
4
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
5
Copilotを使うほど請求が膨らむ? Microsoftが仕掛けるAIエージェント課金
-
6
テザリングにも「限界」がある モバイルルーターを選んだ方がよい基準は?
-
7
「Copilot」がIT予算を食いつぶす? 高額請求を招く課金体系と節約術
-
8
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
9
IDaaSの限界を超える一手 複雑な要件に応える「認証オーケストレーション」
-
10
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
3
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
4
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
5
顧客対応自動化の要点:RAGとデータ連携で“業務で使える生成AI”にする方法
-
6
マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身
-
7
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
8
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
9
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
10
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー