どうするワイヤレスAIパラドックス
無線LAN予算は5年で激増、でも98%の企業が悩む”複雑化の罠”
Cisco Systemsは、企業の無線通信活用を分析した調査レポートを発表した。6000人以上への調査から、無線LAN投資による業務効率や収益への効果が明らかになった。一方、様々な課題が浮き彫りになった。
Cisco Systemsは2026年4月2日(米国時間)、調査レポート「Cisco State of Wireless Report」を発表した。企業における無線通信技術への投資やその導入・活用状況をまとめたものだ。調査結果からは、Wi-Fi(無線LAN)が単なるネットワーク用のインフラにとどまらず、企業の成長を促すエンジンへと進化していることがうかがえる。
同レポートは、世界の30の市場や業種の企業(従業員250人以上)に所属する無線通信に関する意思決定者や技術専門家6000人以上に対するインタビュー調査結果に基づいている。
無線LAN投資は拡大、だが課題も
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)ワークロード、4K/8Kストリーミングといった高帯域アプリケーション、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)の台頭を背景に、企業は無線インフラのモダナイゼーションに向けて、以下のように無線支出や予算を大幅に増やしている。
- 過去5年間で無線LAN支出を増やした企業の割合:80%
- 過去5年間で無線LAN予算を50%以上増やした企業の割合:29%
- 今後4~5年間、無線LAN予算を継続的に増やす予定の企業の割合:82%
- 今後4~5年間、無線LAN予算を50%以上増やす予定の企業の割合:35%
次世代規格への移行も加速しており、企業の6割近くが2027年に、「Wi-Fi 6E」もしくは「Wi-Fi 7」を導入する計画だ。
無線LAN投資がもたらすマルチプライヤー効果
無線LANインフラのモダナイゼーションを進めている企業は、以下の複合的な効果を享受している。
- 業務効率が向上した(78%)
- 従業員の生産性が向上した(75%)
- 顧客エンゲージメントが改善した(75%)
- 収益にプラスの影響があった(68%)
この結果からは、無線LANへの投資が、測定可能なビジネス価値の創造に貢献していることが分かる。
無線LANとAIのパラドックス
無線LANの運用にAIを使えば、ネットワークの運用自動化、最適化、障害の検知、復旧を効率化することができる。その一方、AIを活用すればするほどネットワーク環境は複雑化し、運用や監視の難易度は上がる。セキュリティリスクは増大し、運用を担う人材の確保が困難になる恐れがある。
この「ワイヤレスAIパラドックス」についてCisco Systemsは、この課題を克服すれば、企業が無線LANでのROI(投資対効果)を達成する可能性は4倍以上高まると述べる。
では、企業はワイヤレスAIパラドックスにどのように対応しているのか。調査レポートは、具体的な課題と企業の現状を示す調査結果を以下の通り紹介している。
運用の複雑化
98%の企業が、「無線LANネットワークが複雑化した」と答えた。IT部門は障害対応などのチケット処理に追われ、戦略的な業務に時間を割きにくくなった。この問題を解決するに当たっては、AI駆動の自動化が有効な解決策となり得るとCisco Systemsは指摘する。同社によると、AI自動化を導入済みの企業の98%は大幅な効率改善を実感しており、IT部門の担当者1人当たり1日平均3時間20分、年間850時間以上の時間を節約できているという。
セキュリティリスクの増大
AIに起因するセキュリティインシデントが、無線LANのセキュリティリスクを増加させる要因だ。レポートによると、企業の過半数は無線LANにひも付くセキュリティインシデントで発生した金銭的損失を経験している。被害を受けた企業の半分は、損失額が年間100万ドルを超えていた。被害を受けた企業の3分の1以上は、IoTまたはOT(制御技術)デバイスの侵害を原因として挙げた。
人材不足
無線LANの運用を担当するリーダーの9割近くは、条件を満たす担当者の採用に苦労していると回答した。その原因は、AIやサイバーセキュリティ分野への人材流出だ。さらに、深刻な採用難に見舞われている企業は、それ以外の企業と比べて、年間のセキュリティインシデントコストが70%高くなる可能性があるとレポートは指摘している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発特有の課題も解消できる「AI活用」の秘訣とは? -
事例
[株式会社ビザスク] 「新規事業」事例集:大手企業はどのように想定顧客ヒアリングを行っているのか -
市場調査・トレンド
[株式会社ビザスク] 質の高い「仮説検証インタビュー」を実施するためのポイント -
事例
[株式会社ビザスク] 富士フイルムの新領域参入に学ぶ事業創出 「畑違い」でもビジネス化できる方法 -
事例
[株式会社ビザスク] 三菱電機 上席執行役員に学ぶ、未来を切り開く「新事業創出」の実践方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
-
6
長年の蓄積は利点にも弱点にもなる 「脱レガシー」実行前に解決すべき課題とは
-
7
AI時代のITインフラ戦略とは? 販売代理店が知っておきたい最新トレンド
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー