情シスの顔を曇らせる「AIへの過度な期待」 有力IT担当ならどう言い返す?AI導入の代償は

AIの過熱と加速する技術変化のなか、米国のITリーダーたちは「AIの幻想」と「ビジネスの現実」のギャップを2027年の最大課題に挙げる。単なるIT管理から脱却し、予測不能なコストやAIによる高速な脅威、組織変革にどう立ち向かうべきか。7人のCxOが生存戦略を語る。

2026年05月14日 05時00分 公開
[Tim MurphyTechTarget]

 AIが企業を変革する中で、CIOには険しい道が待ち受けている。

 いまやAIはあらゆるビジネスの会話に登場する。しかし、ITリーダーにとって、それが実際に役立つのか、あるいは単なる熱狂(ハイプ)にすぎないのかを見極めるのは容易ではない。同時に、絶えず変化する環境下でセキュリティを維持し、チームの対応能力を超える速さで進化するツールに合わせて計画を調整することが、組織から求められている。

 CIOが直面している問題をより深く理解するため、TechTargetは7人のITリーダーに、「2027年、CIOが直面する最大の課題は何か」というシンプルな質問を投げかけた。彼らの回答は、あらゆるものに浸透するAIと、それがもたらす猛烈な変化のスピードという、二つの共通したプレッシャーを指し示している。

本記事のサマリ

2027年に向けてCIO(最高情報責任者)が直面する主要な課題には、以下のものが含まれる。

  • AIの熱狂と真のビジネス価値の切り分け
  • 変化のスピードへの追随
  • サイバーセキュリティとAIを悪用した脅威への対応
  • AI需要とガバナンス、コスト管理の両立
  • プラットフォームやアーキテクチャについての迅速な意思決定
  • AI主導の変化に向けた従業員の準備
  • IT運用からビジネスリーダーシップへの転換

AIの熱狂と現実のギャップ

 「最大の課題はAI分野にある。先日ある会議に出席したが、『AIエージェントが必要だ』『AIのこれが必要だ、あれが必要だ』とAIという言葉が飛び交う回数は信じ難いほどだった。AIは解決策の1つかもしれないが、全ての問題に対する万能薬ではない。

 重要なのは、どのような課題を解決しようとしているのかを理解することだ。人々がAIをどう捉え、どこに向かっていると考えているかという認識の浸透ぶりこそが、CIOが解決すべき難題になるだろう」――BDO USAのラス・アーラーズCIO

加速する変化への追随

 「変化とイノベーションのスピードについていくことだ。われわれが『いや、その技術ではまだ不可能です』と言ったわずか3カ月後に、それが実現可能になることがよくある。この変化のペースを常に把握し、解決できる課題を理解することが鍵となる。全員がAIのリリーススケジュールに精通した専門家である必要はないが、進行中の大きな進歩とそのスピードを認識しておくべきだ。

 次に、その変化のペースにビジネス部門の相手やステークホルダーを慣れさせる必要がある。『今日課題を解決するソリューションを導入するが、1年後にはそれを破棄して別のことをしなければならないかもしれない』という話を以前にしたが、これは過去にはなかったことだ。

 かつては『いかに投資し、それが問題を解決することを確認するか』が重要だった。もちろん今も重要だが、現在は『問題の一部は解決したが、より優れた技術が登場した。方針を転換し、どう適応するかを考えよう』というスタンスが求められている。IT部門とビジネス部門の両方にとって、この変化のスピードが最大の課題になる」――IMA Financial Groupのマット・ワトキンスCIO

攻撃者のスピードに立ち向かう

 「端的に言えば、スピードだ。現在は猛烈なペースで物事が動いているように感じるが、まだ始まったばかりだ。攻撃者が生成AIを使用して既存の技術を悪用する機会は恐ろしいほど増えており、その速度も速い。CIOは、攻撃者と同じ、あるいはそれ以上のスピードで動く方法を見つけ出さなければならない。市場がそのスピードに追い付いているかは疑問だ」――DeVry Universityのクリス・キャンベルCIO

ROIに基づいた優先順位付けとデータ保護

 「AIに対する期待を現実的なものに保ち、AI活用についてのあらゆるアイデアや要求に応え続けることが課題になる。投資対効果(ROI)とビジネスへの影響に基づいて、それらのアイデアに優先順位を付けなければならない。各プロジェクトの重要性やビジネスとの関連性について、経営陣からの指針が必要になるだろう。

 そして結局のところ、全てはデータセキュリティに行き着く。全てのデータはセキュリティの保護範囲内に置かれなければならない。あらゆるものを厳格に管理、封鎖し、適切かつ安全な状態に保つ必要がある」――Sikichのスコット・サンダースCIO

コスト管理と制御の規律

 「2027年のCIOにとっての最大の課題は、新技術の採用そのものではない。むしろ、現実的な制約下でそれらの技術がどう機能するかにある。これまでの『使い放題』の利用モデルから、トークンベースの経済モデルへと移行しつつある。推論やコード生成のような高負荷なワークロードによって、コンピューティングの真のコストが浮き彫りになるだろう。この変化だけで、ワークロードの配置をより慎重に検討せざるを得なくなり、場合によってはオンプレミスや厳格に管理された環境への回帰が起こるだろう。

 より困難なのは制御の問題だ。AI自体に依存しないAIガードレールを実装するには、事前に失敗のパターンを予測し、予測可能で境界が明確な、ストレス下でも防御可能なゼロトラストシステムを設計する必要がある。これはモデルにアウトソーシングできるものではない。エンジニアリングの規律と、どこで問題が発生するかという明確な理解が求められる」――Phison USのセバスチャン・ジャンCTO

プラットフォームの集約と組織の再設計

 「テクノロジーの進化が続く中で、プラットフォームの選定はさらに難しくなる。無秩序に広がるクラウド環境や、増え続けるポイントソリューションに機能を展開し続けることは不可能だ。CIOは、たとえ全てのステークホルダーの意見が完全に一致しなくても、より決断力を持って行動する必要がある。長期的な技術負債とシステム統合の負債を削減するためには、タイムリーに「80点の決断」を下し、走りながら軌道修正していくことが重要になる。

 また、自律型AI(エージェンティックAI)による意思決定や推奨を促進するには、データの重要性が極めて高い。データの正確性を維持し、リアルタイムの情報にアクセスできるかどうかがAIレースの勝敗を分ける。モデル層に柔軟性を持たせつつ、開発チームの負担を軽減するために、再利用可能なデータをやりとりするサービスを開発することが重要だ。

 さらに、AIは従業員の業務内容を変える。CIOは人事部門やビジネスリーダーに、それが人員数や再教育、職務再設計に何を意味するのかを正直に伝えるパートナーであるべきだ。こうした会話を避けたり、運用モデルや人員配置の見直しを遅らせたりすることは、実質的なリスクを生む。これらは困難な議論だが、組織が競争力を維持するためには必要だ」

――Sedgwickのグローバルプラットフォームデジタルソリューション担当CIO、ショーン・サフィエ氏

IT運用からビジネス成果への転換

 「2027年のCIOにとって最大の課題は、『ITの所有』から『ビジネス成果の責任(オーナーシップ)』への転換だ。多くのITリーダーはいまだにシステムの提供や稼働時間で評価されているが、期待されているのは測定可能なビジネスインパクトへと完全に移行している。このギャップこそが、多くのCIOが苦戦する場所になるだろう。

 CIOは、これまで以上に速くテクノロジーを明確なビジネス価値に翻訳する必要がある。実行するだけでは不十分だ。複雑な意思決定を簡素化し、非技術系の役員が迅速に行動に移せるようにトレードオフを伝える能力が、他者との差別化要因になる。

 また、『ヒーローモード』からの脱却も重要かつ困難な課題だ。あまりに多くのIT組織がいまだに全ての決定をCIOに集中させており、それがボトルネックを生んでいる。影響力を拡大するには、CIO個人に依存せず、独立して機能するシステム、決定権、チームを構築しなければならない。全てを上位にエスカレーションするのではなく、現場で完結させる体制が必要だ」――West Monroeのケビン・ルーニーCIO

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