定型的な問い合わせの激増は、少人数のサポート体制を疲弊させる。AIチャットbotで解決しようにも、セキュリティ基準が壁になる場合がある。厳しい要件を突破し、サポート体制を拡張させたLINEヤフーの手法とは。
企業が新しいITツールやシステムを導入した際、大半のIT部門が直面するのが、「どう使うのか」というエンドユーザーからの初歩的な問い合わせの激増だ。
LINEヤフーが提供するデータ分析サービス「DS.INSIGHT」の運営現場でも、同じ問題が起きていた。少人数での顧客対応が限界に達し、定型的な質問への応対負荷と属人化が深刻な課題になっていたのだ。ユーザー企業でも、社内の窓口担当者に質問が集中する一方、ベンダーであるLINEヤフーの公式問い合わせフォームは心理的ハードルが高く、「気軽に不明点を解消できる場」が不足していたという。
AIチャットbotで一次対応を自動化することは有効な手段だ。しかし実際の運用においては「社内のFAQリストやユーザー向けマニュアルとチャットbot用の回答データを別々に管理する二度手間」や、「厳格な社内セキュリティ基準への準拠」といったハードルが存在する。
そこでLINEヤフーは、これらの運用課題を克服できるAIツールを採用した。非エンジニアの事業部門担当者だけでもチャットbotのシナリオ設計や回答改善を回せる体制を構築し、厳しい社内セキュリティ要件もクリア。結果として、問い合わせフォームに届く基本的な質問をほぼゼロに削減しつつ、同一体制のままエンドユーザーからの相談件数を約6倍に拡大させた。同社はいかにして自社のセキュリティ基準を満たしながら、マニュアルとチャットbotの回答情報を自動で同期させ、エンドユーザーを適切なページに誘導する仕組みを構築したのか。
LINEヤフーは、デスクリサーチツールDS.INSIGHTのサービスサイトおよびツール内に、miiboの会話型AI構築サービス「miibo」を導入した。2026年5月13日、miibo社が発表した。少人数体制を維持したまま、エンドユーザーからの相談件数を約6倍に拡大させた。
LINEヤフーが提供するDS.INSIGHTは、Yahoo! JAPANの検索・人流データを統計化し、企業や自治体の担当者が消費者分析を実施できるサービスだ。同サービスでは、少人数体制での顧客対応が限界に近づいており、定型的な問い合わせへの対応負荷と属人化が課題となっていた。ユーザー企業でも窓口担当者に質問が集中する一方、公式の問い合わせフォームは心理的ハードルが高く、気軽に不明点を解消できる場が不足していた。
こうした背景から、LINEヤフーはエンジニア以外のメンバーでも設定、運用が可能で、厳格な社内セキュリティ要件をクリアできるmiiboの採用を決めた。導入に当たっては、サービスサイトとツール内の2軸でAIチャットbotを展開。AIチャットbotが応対を担うことで、チームの工数を増やさずにエンドユーザーとの接点を広げる体制を整えた。
運用の工夫として、Google Apps Script(GAS)を活用し、FAQリストやコミュニティーサイトの情報を毎週自動でAIチャットbotのナレッジデータストアに入稿する仕組みを構築した。これによって、常に最新の情報に基づいた回答を可能にしている。miiboの「Function Calling」機能を活用し、会話の内容に応じて該当するデータページへのURLをリアルタイムで生成。エンドユーザーをアクションに直接誘導するシームレスな体験を実現した。
導入の効果として、問い合わせフォームに届く基本的な操作に関する質問はほぼゼロになった。AIチャットbotの正答率は8〜9割に達しており、回答が困難な場合のみ有人窓口に誘導する設計によって、ユーザー企業の信頼を確保しながらセルフオンボーディングを支援している。会話ログから得られるエンドユーザーのつまずきポイントは、マニュアルの改善や新機能の検討に活用されている。
今後は、ナレッジの継続的なアップデートによってユーザー企業の支援体制をさらに強化するとともに、アイデアを素早く形にできるツールとして社内外への展開を推進する。LINEヤフー データソリューション企画開発ユニットの待場由羽氏は、「AI相手だからこそ、エンドユーザーが気兼ねなく心の内を明かしてくれる側面もある。今後もエンドユーザーの活用を後押しできる体制を構築したい」と述べている。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「LINEヤフー、AIチャット活用で相談件数6倍 少人数でユーザー支援を高度化」(2026年5月14日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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