情シスに求められる導入後の運用設計
生成AIツールは「4種類以上」の利用でユーザーの不満が急増する
「ナレフルチャット」を展開するCLINKSは、「生成AI業務活用の満足度調査」の結果を公表した。その結果、「手元にあるツールの数」と「ユーザーの満足度・不満度」に特徴があることが分かった。
生成AIチャットサービス「ナレフルチャット」を展開するCLINKSは2026年5月27日、「生成AI業務活用の満足度調査」の結果を公開した。同調査結果は、日々社内のITインフラやツール展開に頭を悩ませている情報システム部門(情シス)にとって、「自社の生成AI戦略に対する答え合わせ」とも言える内容だ。
業務で生成AIを活用している会社員216人を対象とした調査によると、AIツールは1種類だけ利用している人よりも、2~3種類を使い分けている人の方が、満足度が高いことが分かった。一方で、利用するツールが4種類以上になると不満足率が上昇するという結果が明らかになった。
4種類以上になると不満が高まる理由
調査では、利用しているAIツールの個数と満足度の関係を分析した。
その結果、1種類のみ利用している人の満足率は56.5%だった。一方、2種類利用している人は73.8%、3種類利用している人は75.6%となり、満足度は大幅に上昇した。
不満足率も同様の傾向を示した。1種類利用では6.5%だったが、2種類では4.8%、3種類では2.2%まで低下している。一方、4種類利用では「あまり満足していない」が33.3%となる。
なぜ2~3個までなら満足度が高くなるのか
複数のツールを利用している理由として最も多かったのは、「AIツールごとに得意な業務が異なるため」(46.3%)だった。
例えば、文章作成やアイデア出しはChatGPT、Microsoft 365との連携はCopilot、情報検索や要約はGeminiといった形で、用途に応じて使い分ける利用者は少なくない。
実際の業務では、1つのAIツールですべての作業を処理するよりも、それぞれの強みを活用した方が効率的なケースが多い。
しかし、AIツールは多ければ多いほど良いわけではない。調査では、4種類以上のツールを利用している層になると、不満足率が上昇する傾向が確認された。
理由として考えられるのは、まず学習コストの増加だ。
AIツールごとに操作方法やプロンプトの書き方、ファイル連携の仕組みは異なる。ツールが増えるほど利用者はそれぞれの特徴を理解しなければならず、習得負荷が高まる。
さらに、「どの業務にどのツールを使うべきか」が分かりにくくなる問題もある。AIツールを増やした結果、かえって利用者が迷い、業務効率が低下する可能性もある。
企業側から見れば、ライセンス管理やガバナンス、データ管理の負荷も増加する。利用ツールが増え過ぎると、社内のナレッジや活用ノウハウも分散しやすくなる。
つまり、満足度を高めているのは「ツール数の多さ」ではなく、「必要なツールを適切に使い分けられている状態」だと考えられる。
満足している人はAIを特別扱いしていない
調査では、生成AI活用に満足している理由についても尋ねている。
最も多かった回答は「日常業務の中で自然に使えるようになっている」(56.0%)だった。続いて「業務効率が明確に向上している」(49.6%)が挙がった。
一方、不満足の理由としては、「期待していたほど業務効率が向上していない」(50.0%)、「プロンプト入力が難しく期待する回答が得られない」(42.9%)が上位だった。
この結果から見えてくるのは、AI活用の成否を決めているのがツールの性能だけではないという事実だ。
満足している利用者は、AIを特別なツールとして扱うのではなく、メール作成や資料作成、情報収集といった日常業務の一部として自然に活用している。一方、不満を感じている利用者は、そもそも活用方法を十分に習得できていない可能性がある。
情シスが向き合うべきは「導入後」の課題
調査では、ツール選定時に「ベンダーのサポート・契約条件」や「AI初心者向けのリテラシー向上支援」を重視した利用者ほど満足度が高い傾向も確認された。
これは、多くの企業が現在直面している課題と重なる。
生成AI導入のフェーズは既に終わりつつある。今後問われるのは、「どのAIを導入するか」ではなく、「どう定着させるか」だ。
プロンプトの共有、活用事例の蓄積、利用ガイドラインの整備、部門ごとの活用支援など、導入後の運用設計が成果を左右する。
今回の調査結果が示しているのは、AI活用において重要なのはツールを増やすことではないということだ。2~3種類のツールを適材適所で使い分けながら、従業員が日常業務の中で自然に活用できる環境を整えられるかどうか。その差が、企業のAI活用成果を大きく分けることになりそうだ。
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