Google Cloudのアニー・ワン氏は、AIエージェントには「シングル」「シーケンシャル」「パラレル」があると話す。それぞれの特徴や、使うべき場面はどのようなものか、紹介する。
生成AIを活用したアプリケーション開発が広がる中で、「AIエージェントをどう設計すればよいのか」という課題に直面する企業が増えている。単一のAIエージェントで十分なケースもあれば、複数のエージェントを連携させた方が効率的なケースもある。
それでは、単一のAIエージェント、複数のAIエージェントはそれぞれどのような場面で使えばよいのか。Google Cloudでデベロッパーリレーションズエンジニアを務めるアニー・ワン氏は、「シングルエージェント」「シーケンシャルエージェント」「パラレルエージェント」の特徴や適用シーンを紹介している。
シングルエージェントは、1つのAIエージェントが必要なツールを利用しながら、タスク全体を完結させる。旅行計画を立てる場合、AIエージェントに「目的地の情報を調べ、旅程を作成して」と指示し、検索ツールなどを使って必要な情報を収集させる。
シングルエージェントは、実装が容易なことがその強みだ。複雑なワークフローを設計する必要がなく、比較的柔軟に様々なタスクに対応できる。
一方、利用するツールが増えたり、複数の条件を満たす必要がある複雑な業務になったりすると、制御は難しくなる。AIの推論は非決定論的で、出力や思考プロセスは予測できない。毎回同じ手順で指示を処理する保証がなく、複雑な業務では結果の再現性が低下する可能性がある。
例えば、「『遅くまで開いている寿司屋を探し、そこへの最速の移動手段を調べる』といった複合的な要求になると、指示通りのステップを踏めず失敗しやすくなる」とワン氏は説明する。
AIエージェントに、業務フローを確実に保持してほしい場合に有効なのが「シーケンシャルエージェント」だ。
複数のAIエージェントがあらかじめ決められた順番で実行するのがシーケンシャルエージェントだ。先に実行したAIエージェントの出力が次のAIエージェントの入力になるため、処理の流れを厳密に管理できる。
旅行計画で例えるなら、「飲食店検索エージェント」が候補を探し、その結果を受け取った「交通案内エージェント」が移動手段を提案する構成だ。
各AIエージェントは共有セッション状態(Shared Session State:複数のAIエージェントが同じセッション内で文脈やコンテキストなどを共有するための仕組み)を利用して情報を受け渡す。この仕組みはAIエージェントにおける短期記憶のような役割を果たす。
シーケンシャルエージェントの最大のメリットは、処理手順を明確に制御できることだ。「入力をチェックする」「承認する」「通知する」といった業務プロセスを確実に実行したい場合に適している。
一方で、手順が固定化されるため柔軟性は低い。状況に応じて処理内容を変える必要がある業務には向いていない。
複数の処理を同時に実行したい場合は、「パラレルエージェント」が有効だ。
旅行計画で例える場合、美術館、コンサート、レストランの候補を探す場合、それぞれを順番に処理すると時間がかかる。そこでそれぞれの分野を専門とするAIエージェントを並列実行し、結果を同時に取得する。
検索が完了したあとは、情報を集約するためのAIエージェントが各結果を統合し、最終的な提案を生成する。実際には「並列実行+結果集約」の組み合わせで利用されることが多いという。
パラレルエージェントのメリットは、応答速度の向上だ。独立したタスクを同時に実行できるため、待ち時間を大幅に短縮できる。
一方で、複数のAIエージェントを同時に動かすため、トークンの消費量や実行コストは増加する。結果を統合する仕組みも必要になるため、システム設計は複雑になる。
情シス部門が社内向けAIエージェントを構築する場合、まずはシングルエージェントでPoC(概念実証)を実施し、業務要件が明確になった段階でシーケンシャルエージェントやパラレルエージェントへ発展させる方法が現実的だろう。
AIエージェント開発では、モデル性能そのものよりも「どのような役割分担で設計するか」が成果を左右する。今後は、複数の特化型AIエージェントを統括、調整するAIエージェントが中心となる「オーケストレーター型AIエージェント」や、2台のAIエージェントの一方が出力し、もう一方が出力を批評、洗練させるフィードバックループを実現する「批評型AIエージェント」などの設計パターンも拡大する見込みだ。AIエージェントの構築は、ソフトウェア設計に近い発想が求められるようになる可能性がある。
本稿は、Google Cloud Techが2026年2月28日に公開した動画「AI agent design patterns」を基に作成しました。
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