散らばる顧客接点をAIでつなぐ新戦略
商談前に勝負は決まる? Zoomが挑む「バラバラな顧客データ」の統合
営業チームがツール過多に陥る一方で顧客像が見えない現状をZoomが打破する。AI企業Common Roomの買収により、散在するデータを統合し商談前の意思決定を支援。単なる会議ツールからの脱却が加速する。
Zoom Communications(以下、Zoom)は、AI収益プラットフォームに「バイヤーインテリジェンス」(購買者の洞察)を組み込むために、AIネイティブなGTM(市場参入)インテリジェンスプラットフォームのCommon Roomを買収することで最終合意した。
業務・通信プラットフォームを提供するZoomによれば、現在のレベニューチーム(営業・マーケティング・カスタマーサクセスなど収益創出に関わる部門)は「ツールに溺れている」一方で、状況の明確化を切望しているという。購買のシグナルが顧客関係管理(CRM)や製品の使用状況、マーケティングなどの各システムに散在しているためだ。
Zoomはこの課題について、従来のデータ拡充では供給元が断片的だと指摘する。レベニューチームが商談の途中でようやく欠落に気付くような状況だったという。
さらに、支援を目的とした既存のAIツールは不完全で古いデータに基づいており、出力が汎用(はんよう)的で信頼性に欠けると同社はみている。その結果、誤ったタイミングで誤ったアカウントに労力を費やし、手動の調査に時間を奪われるなどし、最終的にチームがAIの使用を諦めてしまうといった事態を招いている。
Common Room買収で何が変わるか?
「Zoomの動向」に関連する編集部お薦め記事
Common Roomは、断片的なシグナルを個人レベルのバイヤーインテリジェンスとして統合し、AIエージェントで活性化することで、この問題を解決しようとしている。レベニューチームがこれまで継ぎ接ぎしていたデータ拡充やワークフローツールを1つにまとめるものだ。
同システムは、CRMや製品、マーケティングにまたがる1stパーティデータと、現実の購買シグナルを統合する。これにより、レベニューチームはあらゆる購買者の最新状況を常に把握できる。AIエージェント「RoomieAI」は、アカウント調査やメッセージのパーソナライズ、見込み客の開拓を担う。
同製品は現在、AtlassianやAnthropic、Autodesk、Notion、Okta、Snowflakeといった企業のGTMチームで利用されている。
今回の買収は、営業活動の会話を分析し、コーチングや商談インテリジェンス、正確な予測を提供するZoomのプラットフォームにとって自然な拡張となる。
Zoomは、Common Roomが加わることで、同社の営業支援ツール「Revenue Accelerator」が強化されると確信している。営業担当者はセールスコールを行う前に、どのアカウントが市場に関心を持っており、誰が購買者であるかを把握できるようになる。
両社の統合により、単一のプラットフォームで収益プロセス全体のサイクルを完結できる。「Common Roomにより、Zoomの実行システムを上流工程まで拡張する。組織の関与という豊かな文脈と、購買者のリアルタイムな理解を組み合わせる」と、Zoomの最高戦略責任者(CSO)アビシュト・アローラ氏は述べる。
アローラ氏はこう続ける。「レベニューチームは単一の統合プラットフォームを利用できる。これにより、商談のあらゆる段階で適切なタイミングで適切な人物に適切なメッセージを届けられる。雑務を削減し、より優れた商業的成果を上げられるはずだ」
Common RoomのCEOリンダ・リアン氏は次のように語る。「当社は、全ての営業担当者が商談の相手を真に理解できるように同製品を構築した。Zoomへの参画により、当社のデータは商談が成立する場である日常の会話や、それに基づいて動作するAIと結び付く。Zoomの規模とリソースを活用し、ロードマップを加速させたい」
この買収は、Zoomがコアプラットフォームに一連のエージェンティックAI(自律型AI)機能を追加し、メモ作成システムをモバイルに拡張した直後のタイミングで発表された。同社は、会話と実行の間のギャップを埋めることを目指している。
会話はあらゆる場所で行われているが、従来の業務を支えてきた「記録システム」は、その変化に追い付いていない。今回の機能強化により、あらゆる会話の後に業務を完結させ、仕事の勢いを削がない環境の実現を目指すという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ -
製品資料
[ペンタセキュリティ株式会社] PCI DSS v4.0.1対応の負担を軽減 審査工数とコストを削減する実践的アプローチ -
製品資料
[ペンタセキュリティ株式会社] いま「次世代WAF」が必要とされる理由 -
市場調査・トレンド
[ServiceNow Japan合同会社] 通信事業を次の段階へ引き上げるには? 主要33社の調査に見る成長戦略の勘所 -
製品資料
[ServiceNow Japan合同会社] 運用のサイロ化で連携が進まない、サービスプロバイダーの成長をどう実現する?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
VMware離れの決め手は“機能”以外だった 情シス109人が選んだ新基準と死角は
-
5
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
6
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
7
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
なぜOSS投資は「評価不能」に陥るのか 事業価値を測る“4つの指標”
-
10
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
7
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
8
サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー