2014 FIFAワールドカップ対策に追われるオンラインブックメーカー「コスト削減だけをIT戦略にしてはならない」

ワールドカップ、チャンピオンズリーグ、ウィンブルドンなどの大イベントに対応するためITインフラを整備し続けるオンラインブックメーカー。そのCIOが語る、ITとビジネス、他部門とのあるべき関係とは?

2014年08月08日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 オンラインブックメーカーの英Betfairは、最高潮に達した2014 FIFAワールドカップ(第20回)によって忙しい日々を送っている(訳注)。とはいえ、同社CIOのマイケル・ビスコフ氏は、同社のITインフラによるベッティングサービスの改良や過去最高のユーザー数確保に自信を見せている。

訳注:本記事原文はワールドカップ本大会が始まった6月12日に公開された。

Computer Weekly日本語版 8月6日号:RAIDはもういらない

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 「当社は長い時間をかけてITアーキテクチャを設計してきた」と同氏は話す。

 ワールドカップも重要だが、ウィンブルドン、UEFAチャンピオンズリーグ、FAプレミアリーグも同じく重要だ。そのためITチームは休みなく働き、ユーザーがスムースに使えるサービスを提供している。ビスコフ氏によると、Betfairはさまざまな試合に向けての準備は終えているとのことだ。現在ITチームが力を注いでいるのは、WebサイトのバックエンドITをスムースなカスタマーエクスペリエンスに変える方法だという。

ソーシャルメディアとの連携

 「ソーシャルメディアが普及してから初めて開催される今回のワールドカップは、これまで以上に特別なものになる」とビスコフ氏は語る。

 「Twitterは、スポーツファンが試合中に使用する標準のコミュニケーションメディアになっている。Twitterによって利用者同士の対話方法が変わり、利用者がスポーツやベッティングエクスチェンジにかかわる方法が変化している」

 「当社は、かなり早い段階からソーシャルメディアが大きく拡大すると考え、賭けへの参加にソーシャルメディアを使えるようにするインフラを設計した」

 その中の1つがBetfairの「清算」ツールだ。利用者が手作業で取引することなく、ボタンをタッチするだけで利益を確定し、損失を減らすことができる。

 Betfairのインフラは、プライベートクラウド、パブリッククラウド、SaaS(Software as a Service)、ソフトウェア定義の機能、自動化機能など、最新インフラの全ての要素を網羅しており、モバイルにも対応している。

 「ITチームが目指しているのは、社内外のユーザーが希望する機能を実現することだ。この目標を可能な限り最善の方法で達成できるように、チームはあらゆるテクノロジーを駆使している。クラウドは全て同じように作られているわけではない。従って、ニーズに適したサービスを使用すべきだと考えている」とビスコフ氏は話す。

 その結果、BetfairはハイブリッドIT環境を所有することになった。自動化とオーケストレーションに米VMwareの「VMware vCloud Suite」を使用して、アプリ開発用のインフラ層を抽象化した。

 「vCloud Suiteにより、自動化したインフラ上で開発チームがアプリを構築できるようにした」

 また、米Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Redshift」データウェアハウスサービスを使用して、ユーザーから得たデータや有用な情報にアクセスできるようにし、収益を生み出す機会を見つけている。

 「Redshiftそのものにも、そのデータ分析機能にもかなり満足している」とビスコフ氏は言う。

 ITに関するチームの優先事項は明確だという。「ネットワークとストレージの仮想化なども重要な側面ではあるが、現状での最重要課題ではない。現時点で重要なのは、開発者の希望を実現すること、開発者がアプリを作成しやすいインタフェースをインフラに組み込むこと、そしてチームを統合することだ」

DevOps戦略の導入

 Betfairは、開発と運用を融合する(DevOps)ソフトウェア戦略を採用している。「DevOpsにより、ビジネスのアイデアが浮かんでからそれを稼働させるまでの流れがシンプルかつシームレスになると考えている」とビスコフ氏は話す。

 これまでのITチームの成り立ちはこうだ。アプリ開発チームがビジネスニーズをくみ取り、ソフトウェアを作成する。作成したプログラムをテストチームに渡し、テストチームが独自にテストする。テストに合格したら、ユーザーに公開するために開発チームから運用チームに渡す。

 だが、このような縦割り型の作業では、それぞれのチームの制限事項や問題点が分からない。結果、不満が生まれ、作業効率が低下する。DevOpsを導入すると、アプリ開発チームとシステム運用チームの作業に境い目がなくなる。

 「当社のDevOpsはまだ模索段階だ」と同氏は語る。「ビジョンがあれば良いというものではない。重要なのは、社員やプロセス、さらには企業文化が変化することだ」

 ソフトウェアとインフラとの境界線がどんどん不明瞭になっている。それが未来の姿だ、と同氏は話す。「データセンターはソフトウェアに侵食されつつある。今後は、全てにおいて自動化が重要になるだろう」

ビジネスとITの整合性

 ビスコフ氏によれば、コスト削減やサービスの迅速なプロビジョニングだけをIT戦略にしてはいけないという。

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