2016年11月09日 08時00分 UPDATE
特集/連載

Computer Weekly製品ガイド3Dプリンティングの潜在的可能性を解き放つ

3Dプリンティングの始まりについて解説し、現在のイノベーションにスポットを当て、同技術が次にどこへ向かうかを予測する。

[Bernt Ostergaard,Computer Weekly]
Computer Weekly

 部品や製品そのものをオンデマンドで「印刷」するという概念は、製品の開発、製造、配送、メンテナンスの在り方を変革するかもしれない。従来の製造業をかき乱し得る、全く新しい業界が生まれるのは確実だ。

Computer Weekly日本語版 11月1日号無料ダウンロード

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。

ボタンボタン

 大量生産の概念は1980年代のPCの登場で崩壊を始め、ソフトウェア定義プロセスの台頭に伴って衰えることなく続いてきた。追加的印刷(現在では一般的に3Dプリンティングと呼ばれる)に関する初の特許はこれと同じ年代に出願された。

 以来、ソフトウェアが製造ラインを再定義し、製造工程の全ての手順を制御する仮想ベルトコンベヤーへと転換させている。さらには幅広い個別化の選択肢を取り込むようになり、結果として「大量」の概念を「1つ」へと集約させている。例えば今では補聴器の99%が3Dで印刷されるようになり、標準的な電子プラットフォームと3Dプリンティングでカスタマイズした耳への挿入部分を組み合わせて製造されている。

 だが、人工知能(AI)の概念と同様に、3Dプリンティングの概念も何十年にもわたって誇大宣伝にさらされてきた。第三の産業社会の到来を予言する未来学者や、コーヒーメーカーほどの大きさの3Dプリンタを普及させて、あらゆる部品を家庭で印刷できるようにすると説くMaker Movement運動などが出現した。

 だが3Dプリンティングの現実にそれほどの華々しさはなく、この分野で黒字を出している企業はまだほとんどない。しかしあと5年ほどでその状況は変わる見通しだ。現在、この技術は投資家の多大な関心を集めて盛んに開発が進められている。

 売上高で見ると、3Dプリンティング業界はStratasys、3D Systems、Materialiseの3社が主導する。この3社は1980年代に設立され、今も業界で独占状態にある基本的な特許を開発してきた。

 Stratasysは熱溶解積層法(FDM)印刷の開発元で、この分野で初の10億ドル企業となり、規模も群を抜いて大きい。業務内容はCADソフトウェア、幅広いニーズに対応するプリンタや技術、コンサルティング、直接的な3D製造を網羅する。

 やはり米国を拠点とする3D Systemsは光造形(SLA)印刷の開発元で、事業は製品、材料、サービスの3分野を手掛ける。

 ベルギーのMaterialiseはバインダージェット技術を主導する企業で、事業内容は3Dプリンティングソフトウェア、医療、産業製造システムの3分野に分かれる。

 従来のプリンタメーカーも参入し、HP Inc.(以下HP)やリコーが3Dプリンタを投入している。

幅広い需要への対応

 3Dプリンティングは、依然としてコンシューマーを失望させる製品だ。ユーザーは分厚いマニュアルを熟読しなければならず、材料に関する実際的な知識も必要とされる。単純な好奇心だけで3Dプリンタを使えば、ノズルの詰まりやフィラメントの破損、台座への造形品の付着といったトラブルに見舞われ、粘着性の高い樹脂の清掃や、ゆがんだサポート材の取り外しなども必要になる。

 産業界の3Dプリンティングはニッチな工程、特に製造、生物医学、宝飾、さらには食品分野の製品開発で弾みがついた。自動車業界は、プロトタイプの手早い制作やF1カーの車体部品製造といったカスタマイズ機能を急速に拡張させることでこの展開を主導している。参入障壁が低いことから、JetCubedやEngineer3Dのような、小規模な専門企業が何百社も参入しており、適切なノウハウがあれば相当有利に競争を展開できる。

 これまでには重要な節目が2つあった。1つは十分なパワーを発揮できるCADソフトウェア。もう1つはモデリングやプロトタイプ制作、鋳型作成のために低コストのFDMとバインダージェット印刷を使って大量生産を促進させる手頃なプラスチック印刷ハードウェアだった。

 だが今も、ユーザーにとっての優しさと、ユーザーによる組み合わせの自由度を高めるための標準レベルの引き上げという2つの課題が残る。樹脂の改良やユーザーに優しいフィラメントが求められ、グラフェンのような材料ではプラスチックよりも大幅に強度を高めるためにやるべきことがある。HPは最近、マルチジェットフュージョン技術を使って重さ250グラムの鎖を30分で印刷した。この鎖は4.5トンまでの重量を持ち上げることができる。

 特に医療や生物学の分野では、革新に押されて3Dプリンティングのための新しい構成材料が登場している。3DバイオプリンタではOrganovoのバイオプリンタ「NovoGen MMX」のような製品を使って、手術や移植に適した皮膚の組織や心臓の組織、血管を印刷できる。他にもLazarus 3DやSahas Softech LLPなどは、手術前の臓器のミニチュアモデル作成、脳や腎臓組織を含む臓器の単純な複製を手掛け、科学者が調査研究に利用できるようにしている。

3Dプリンティング技術

FDM(熱溶解積層法)

 コンシューマー市場では数百社のメーカーがFDMプリンタを提供している。FDMは熱可塑性物質の層を重ねて3Dプリントを形成する。FDMプリンタは通常、安価なプラスチックフィラメントを利用するが、ノズルやフィラメントが詰まったり基盤に付着したりしやすく、サポート材がなければゆがむこともある。

 高価格なプリンタでは、ナイロンや多様なプラスチックの組み合わせ(木材、セラミック、金属、炭素繊維などの混合)を使うことができる。フィラメントにはさまざまな色がある。FDMは現時点で「Ultimaker 2+」「MakerBot Replicator 2X Experimental」「3D Systems Cube 3」「Zortrax Inventure」「LeapFrog Creatr X1」などのプリンタに採用されている。

SLA(光造形)技術

注目テーマ

ITmedia マーケティング新着記事

news131.jpg

「SAS Customer Intelligence 360」が刷新
SAS Institute Japanは9、新しい「SAS Customer Intelligence 360」を発表した。

news018.jpg

イマドキ女子のスマホプライムタイムは「22時」――インテージ調べ
インテージは、15〜24歳“イマドキ”女子のスマートフォンの利用実態を調査しました。

news135.jpg

カタリナ マーケティング ジャパンとデジタルインテリジェンスが提携
カタリナ マーケティング ジャパンとデジタルインテリジェンスは提携し、テレビCMとデジ...