巨大カジノの大量バックアップを救った仮想化技術Case Study

ホテル予約システムやスロットマシン監視システムがフル稼働する巨大娯楽施設フォックスウッズでは、毎晩2.5Tバイトものデータをバックアップしている。チーフエンジニアのグリロ氏は、バックアップ/リストア時間の短縮とメディアとドライブの障害回避に乗り出した。

2006年03月22日 09時19分 公開
[TechTarget]

 コネティカット州にある総合娯楽施設フォックスウッズ・リゾートカジノでは、顧客が楽しんでいる間、ホテル予約システム、財務管理システム、スロットマシン監視システムなどがフル稼働している。中でも、フォックスウッズ自慢の最新鋭システムが、プレイヤーとその格付けを管理するためのカジノ管理アプリケーションである。

 同カジノのMIS(経営情報システム)エンタープライズシステム部門のチーフエンジニアを務めるグリロ氏は、「最も不安だったのは、バックアップ環境で使っている複数のメディアに障害が起きないかということだった」と話す。

 グリロ氏が掲げた課題は、バックアップ/リストア時間を短縮すること、メディアとドライブの障害をなくすこと、そして同カジノの2台のテープライブラリと10台のテープドライブのハードウェアメンテナンスコストを削減することであった。また、ディザスタリカバリサイトを構築する必要もあった。

 グリロ氏は当初、ディスクシステムを採用する方針だったが、コストが掛かりすぎることが分かったという。同氏が次に検討したのは、EMC、ストレージテックおよびセパトンの仮想テープライブラリである……。

 マイク・グリロ氏が1990年代に、コネティカット州マシャンタケットにある総合娯楽施設フォックスウッズ・リゾートカジノに入社した当時、コンピュータ室として使われていたのは6フィート(約1.8メートル)四方の物置部屋だった。それから10年後、同カジノのITシステムは複数のコンピュータ室に移動し、スタッフたちは毎晩、2.5Tバイトのデータをサーバからテープにバックアップしていた。

 しかし拡大を続けるフォックスウッズでは、データの保護に関しては一か八かの賭けをしているような状態だった。

 世界最大のカジノリゾートと銘打たれたフォックスウッズには6つのカジノがあり、数百台のゲームテーブルと7400台のスロットマシンが用意されている。施設内には3棟の高層ホテルが営業している。毎日4万人の顧客がこのカジノを訪れ、1万3000人の従業員がそこで働いている。

 顧客が楽しんでいる間、各種のコンピュータシステムはフル稼働している。これらは、ホテル予約システム、財務管理システム、スロットマシン監視システムなどである。中でも、フォックスウッズ自慢の最新鋭システムが、プレイヤーとその格付けを管理するためのカジノ管理アプリケーションである。

 この複合型カジノ施設を所有しているのはネイティブアメリカンのマシャンタケット・ピーコット族であり、同社のITスタッフは、24時間体制のE911(緊急番号911への発信元の位置特定)をはじめとする重要なサービスを同コミュニティーに提供している。

 同カジノのMIS(経営情報システム)エンタープライズシステム部門のチーフエンジニアを務めるグリロ氏は、「最も不安だったのは、バックアップ環境で使っている複数のメディアに障害が起きないかということだった」と話す。

 「復旧にも時間がかかった。これはテープドライブの速度的な限界のせいだ。復旧に26時間もかかったこともあった」(同氏)

 同カジノでは、データのバックアップ/リストア用にIBMの「TotalStorage 3494 Tape Library」(「IBM TotalStorage Enterprise Tape System 3590」テープドライブを10台使用)および「IBM Tivoli Storage Manager」ソフトウェアを利用していた。

 問題は、テープがずっとライブラリと同じ場所に置かれていたことだ。サーバのデータが、同じ部屋の中でバックアップされていたのだ。コンピュータ室で災害が発生すれば、全社的な機能停止に陥ってしまう恐れがあった。「これは問題だった」とグリロ氏は話す。しかし同氏がこの問題に対処するために、約50万ドルの予算が承認されたのは、2004年の末になってからのことだった。

タスクとソリューション

 グリロ氏が掲げた課題は、バックアップ/リストア時間を短縮すること、メディアとドライブの障害をなくすこと、そして同カジノの2台のテープライブラリと10台のテープドライブのハードウェアメンテナンスコストを削減することであった。また、ディザスタリカバリサイトを構築する必要もあった。

 グリロ氏は当初、ディスクシステムを採用する方針だったが、コストが掛かりすぎることが分かったという。同氏が次に検討したのは、EMC、ストレージテックおよびセパトンの仮想テープライブラリである。中でもとりわけ注目したのが「Sepaton S2100-ES2」仮想テープライブラリだった。「セパトンは対応が非常に良かった。彼らがテスト用の装置を実際に動かしてくれたので、われわれはすぐにオンサイトテストを実施できた」とグリロ氏は話す。同社のスピーディな対応が採用の決め手となったわけではないが、結局、ものを言ったのはスピードだった。セパトンの製品は、リストア速度でEMCの製品を上回っていたのだ。「リストア時間の短縮が最大の目標だった」(グリロ氏)

 グリロ氏は、フォックスウッズのAPCサーバラックをセパトンに送った。「すべてのラックが同じように見える」ように形式を統一するためだ。次に、セパトンの装置が現場に据え付けられた。このシステムはハードウェアと仮想テープライブラリソフトウェアで構成され、データ保存容量は非圧縮時で57Tバイトである。「システムの統合作業にかかった時間は全部で35分だった」(グリロ氏)

 IT部門のスタッフは、ライブラリの仮想ドライブとテープのコンフィギュレーションを設定し、同ライブラリを「Tivoli Storage Manager」(TSM)サーバに接続した上で、新しいライブラリとテープを認識するようTSMを設定した。

 このシステム変更のおかげで、データリストア速度が200%改善され、メディアやテープドライブの障害に悩まされることもなくなったという。「データテープが損傷する心配をしなくて済むようになった」と同氏は話す。ハードウェアのメンテナンスコストも10%減少した。ITスタッフが管理しなければならない物理的なテープの数も、1500本から数百本に減り、これらは現在、オフサイトのライブラリに置かれている。「以前はディザスタリカバリソリューションとして、1カ所に配備された2台のテープライブラリで1500本のテープを使っていたが、現在では、仮想テープライブラリをプライマリストレージとして使用し、そこから9マイル離れたディザスタリカバリサイトに配備した新しいテープライブラリで120本ほどのテープを使っている」(グリロ氏)

 「電子メールは当社にとって生命線のようなものだ。どのような理由であれ、電子メールが利用できなくなれば一巻の終わりだ」とグリロ氏は話す。

 かつては、障害が起きると、復旧するのに24時間かかることもあったという。ドライブを業務システムから切り離せるようになるまで待たなければならなかったからだ。

 「今では、データを移行できるようになるまで待つ必要はない。最近のシステムダウンのときは、復旧作業に2時間もかからなかった。これはすごい進歩だ」(同氏)

(この記事は2006年2月10日に掲載されたものを翻訳しました。)

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