2006年04月25日 09時27分 公開
特集/連載

ベンダーがオープンソースモデルに移行している本当の理由Column

オープンソースビジネスモデルを採用するベンダーが増えている。コラムニストのポール・ギリン氏が、ユーザーがこの新たなベンダー動向を利用するにあたっての注意点をアドバイスする。

[TechTarget]

 今日では、ベンダーがオープンソースを採用する動きがいたるところで見られる。IBM、CA、ヒューレットパッカード(HP)、サンマイクロシステムズなど、多くの大手IT企業が膨大なコードをオープンソースコミュニティーに公開している。オラクルもこの数カ月にオープンソースソフト会社を2社買収した。マイクロソフトまでもがJBossおよびシュガーCRMと提携し、各社の製品とWindowsとの相互運用性の向上に取り組んでいる。さらに、ここ数年で何十社もの小規模企業が自社製品をオープンソース化している。

 こうした動きは確かに心強いが、皮肉な見方をすれば要注意だ。一見利他的に見えるこれらの取り組みには、自社利益の追求という面も感じられる。成功しているソフト会社がオープンソースビジネスモデルをわざわざ進んで採用するとは考えにくい。

 本当にオープンソースの精神に目覚めたベンダーもいるのは確かだが、ベンダーはここで紹介するような別の理由からオープンソースに取り組んでいるのかもしれない。

 今日では、ベンダーがオープンソースを採用する動きがいたるところで見られる。IBM、CA、ヒューレットパッカード(HP)、サンマイクロシステムズなど、多くの大手IT企業が膨大なコードをオープンソースコミュニティーに公開している。オラクルもこの数カ月にオープンソースソフト会社を2社買収した。マイクロソフトまでもがJBossおよびシュガーCRMと提携し、各社の製品とWindowsとの相互運用性の向上に取り組んでいる。さらに、ここ数年で何十社もの小規模企業が自社製品をオープンソース化している。

 こうした動きは確かに心強いが、皮肉な見方をすれば要注意だ。一見利他的に見えるこれらの取り組みには、自社利益の追求という面も感じられる。成功しているソフト会社がオープンソースビジネスモデルをわざわざ進んで採用するとは考えにくい。

 とはいえ、ユーザーはこのせっかくのチャンスをしっかり生かすべきだ。オープンソースソフトは、ベンダーと価格交渉をする上で格好の材料になる。また、オープンソースに傾倒しているベンダーと付き合うという手もある。彼らの一部はビジネスを見直し、オープンソース市場のユーザー本位のあり方に対応しようと全力を挙げているからだ。

 今、オープンソース分野でちょっとしたゴールドラッシュが起こっているのは間違いない。プライスウォーターハウスクーパースの調査によると、昨年ベンチャーキャピタルがオープンソースソフト会社につぎ込んだ資金は1億5000万ドル以上に上った。ソフト会社がライセンスと囲い込みではなく、サポートとアドインの提供をベースに利益を上げる新しいビジネスモデルも登場している。こうしたモデルをうまく機能させている企業もある。

 しかし、オープンソースソフト会社のビジネスは、プロプライエタリソフト会社とは非常に異なっている。利益率が低く、間接費も少ないのが特徴で、顧客に協力し貢献することがすべての前提になる。高い利益率や大規模な営業部隊、製品のライフサイクルを通じた保守収入が当たり前になっているソフトベンダーにとって、そうしたビジネスに移行するのは非常に困難だ。多くのベンダーは自ら進んでそうしているわけではないのではないか。

 本当にオープンソースの精神に目覚めたベンダーもいるのは確かだが、以下のように、ベンダーはほかの理由からオープンソースに取り組んでいるのかもしれない。

製品の競争力がない

 ソフトの保守には高いコストが掛かり、ベンダーにとって、顧客が買わないソフトをサポートすることは赤字につながる。以前は、IT企業は売れない製品の多大な保守コストをカバーしなければならなかった。今では、彼らはそうする代わりにそれらの製品をオープンソース化している。これは必ずしも悪いことではない。失敗製品がオープンソースになることで見事に生まれ変わることもあり得るからだ。ただし、コミュニティーから関心を持ってもらえないオープンソースプロジェクトが多いことも忘れてはならない。そうなればその製品のユーザーは、ベンダーが製品を管理する場合よりも困った事態に直面してしまう。

経営不振に陥っている

 クローズドなソフトのビジネスをオープンなものに転換するのは容易なことではない。そのためには社内体制の大々的な改革や、レイオフ、顧客サポートスタッフの新規採用、そしてマーケティングと製品開発の手法の全面的な変更が必要になる。利幅が薄くなり、自社の事業分野の参入障壁が低くなることも覚悟しなければならない。また、こうしたオープンソースビジネスはまだ発展途上にあり、未知の要素が多い。あるベンダーがオープンソース企業になると突然宣言したら、そのベンダーは積極的な選択として新展開を目指しているのか、それとも従来のビジネスでは立ち行かなくなっているのかを見極めなければならない。

ライバルをつぶそうとしている

 もしオラクルのような強力な会社がMySQLのような有望な新興企業を買収しようとしたら、少々懐疑的に見ざるを得ない。成功している大手のソフト会社がオープンソースに傾倒する場合もあると考えられるが、膨大な資金を持っていれば、競合製品を買収し、事業の中で低い位置づけにとどめておくのも彼らにとって魅力的な選択肢だ。利用製品の提供ベンダーがより大手の競合ベンダーに買収されたユーザーに、彼らが買収後にどれだけ大事にされているかを聞いてみるといいだろう。オラクルがMySQLを買収するつもりだとしたら、既にスケーラブルなMySQLパッケージをさらにスケーラブルなものにする気があるのか聞いてみたいところだ。

アンチマイクロソフト

 今やオープンソースはマイクロソフトの主要な脅威となっているように見えるため、アンチマイクロソフト派のベンダーはオープンな製品をひたすら推進している。この流れに失敗製品を紛れ込ませているベンダーもある。消極的な動機から優れたビジネスが生まれることはまずないため、ライバルの足を引っ張ることに主眼を置いている企業と取引するのは要注意だ。

 明るい材料としては、顧客が、オープンソースモデルを採用するベンダーの増加の恩恵を受けていることが挙げられる。オープンソース企業はほんの数年前には新規参入の機会が閉ざされているように見えていた市場で、業界の利益率を押し下げ、イノベーションを起こしている。市場がよりオープンになり、その結果として価格競争が激しくなっているなら、どのような背景があるかは問題ではないだろう。ただ、プレスリリースに書いてあることをうのみにしないようにだけは気をつけよう。

本稿筆者のポール・ギリン氏は独立マーケティングコンサルタントで、TechTargetの創刊編集人。同氏のWebサイトは、www.gillin.com。

(この記事は「CIO Dicisions」4月号に掲載されたものを翻訳しました。)

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