2007年注目の10大データセンター技術Column

ガートナーが2007年に注目すべきデータセンターの10大技術について説明した。それによると、2007年には仮想化やグリッド、液体冷却などの技術が、データセンターの運用方法に最も顕著な影響を与える見通しだ。

2006年12月19日 07時00分 公開
[Matt Stansberry,TechTarget]

 調査会社ガートナーのリサーチ担当副社長カール・クローンチ氏は、11月下旬に同社が開催したデータセンターに関する年次カンファレンスで講演し、2007年に注目すべき10大技術について説明した。同氏によると、2007年には仮想化やグリッド、液体冷却などの技術が、データセンターの運用方法に最も顕著な影響を与える見通しだ。

サーバ仮想化の3つの形態

 クローンチ氏は、データセンター担当者は来年、仮想化を3つの形態で利用するだろうと述べた。1つは現在主流の「分割」という形態だ。これは1台のハードウェアを複数の仮想マシンに分割し、その上で複数のOSイメージを利用することで、サーバの使用率を高めるというものだ。

 もう1つの形態はクローンチ氏が言うところの「テレポーテーション」(瞬間移動)で、これは仮想イメージをそのコードの実行中に別の物理マシンに移動するものだ。講演中に行われた聴衆への質問調査では、聴衆の23%が、稼働中の仮想マシンインスタンスを物理マシン間で移動するために、実運用環境でヴイエムウェアのVMotionを使っており、20%がこの技術を試していることが分かった。

 また、データセンターでは、仮想化が「結合」という形態でも利用される可能性があるという。これは、複数の物理マシンを結合し、仮想的な1台のSMPマシンとしてOSの1つのコピーを稼働させる形態だ。

 聴衆からは、仮想化は今後の大きな流れになるかもしれないが、この技術には、まだ解決すべき問題が残っているという声が多く聞かれた。「実運用環境への仮想化の導入で厄介なトラブルに直面している」とカナダ公衆衛生局(PHAC)のインフォマティクスサービス責任者ボブ・コナロー氏は話した。「ノベル製品とヴイエムウェア製品は相性が良くない。また、特定のOracleデータベースを仮想化しようとすると、SAN上のドライバが連携しない」

グリッドコンピューティングとユーティリティコンピューティング

 2007年に多くの企業が導入を検討するとガートナーが予測するもう1つの技術は、グリッドコンピューティングだ。クローンチ氏は、グリッドコンピューティングは設計や研究といった用途で広く使われていると述べた。だが同氏の見方では、グリッドを大規模なビジネスインテリジェンスアプリケーションの構築と運用に利用するという最も興味深い応用は、まだ進んでいないという。

 だが、こうした応用に注目するのはまだ早いのかもしれない。質問調査によると、聴衆の22%がグリッドを利用しており、9%がこの技術を来年採用する計画だ。だが、自社にはこの技術の使い道がないと答えた聴衆が69%にも上っている。

 コナロー氏は、22%のグリッドユーザーの1人だ。グリッドコンピューティングを利用したデータセンターにより、PHACの研究者は、「DNAの解析と探索を行っている」と同氏。

 だがコナロー氏は、ガートナーが10大技術に挙げたもう1つの技術であるユーティリティコンピューティングについては、あまり前向きな姿勢を示さなかった。ユーティリティコンピューティングは、ITサービスプロバイダーから提供されるコンピューティング能力を必要に応じて利用し、利用した分だけ料金を支払うというものだ。ユーティリティコンピューティングは一部の企業には有用かもしれないが、セキュリティとデータプライバシーに関する懸念から、PHACは、ユーティリティコンピューティングに関しては慎重なアプローチを取るだろう、とコナロー氏は語った。

液体冷却の本格導入

 「これからのデータセンターでは、水が重要な役割を果たす」とクローンチ氏は述べた。会場はざわめき、明らかに聴衆はこの指摘を歓迎していなかった。

 「ラックの高密度化に伴い、十分な空気の流れが確保できなくなっている」と同氏。「水冷方式に移行したがらない人が多いのは確かだ。移行するとなると、配管や凝結、漏水の恐れといった問題を考慮しなければならない。面倒なことになる場合もある。だが、データセンターを新規に作り直す場合は、迷わず配管設備を取り入れるべきだ」

 クローンチ氏は、液体を蒸発させてチップの上部を冷却するISRのSprayCoolに言及したほか、背面に冷却プレートを備えるラックを提供している企業もあると話した。

 ガートナーが液体冷却の受け入れ状況について聴衆に対して質問調査を行ったところ、次のような回答結果となった。

  • データセンターには導入しない:10%
  • やむをえず導入する:28%
  • 戦術的な理由で導入する:32%
  • 既に自社施設に導入している:12%
  • 主要な冷却方法として液体冷却を採用する予定:8%
  • 「タオルが欲しい」(この回答の意味は不明):10%

 「水冷は効果的だが、漏水が起きないようにきちんと管理する必要がある」とコナロー氏。「われわれのラックは機器が密集しているため、新しいデータセンターを構築するときは水冷を検討しないといけない」

 ガートナーは10大技術として、これらのほかに以下を挙げ、それぞれの動向を概説した。

オープンソースソフトウェア(OSS)

 Linux以外にも有力なOSSが数多くある。現在、最も成熟したOSS技術は開発ツールだが、ほかの技術も近いうちにデータセンターに進出する見込みだ。

情報アクセス

 デスクトップユーザーの情報探索の対象は、IT担当者が想定していなかった領域にまで広がっている。強力なデスクトップ検索ツールがバックエンドITデータベースとリンクし始めるだろう。

ユビキタスコンピューティング

 ユビキタスコンピューティング環境では、コンピュータがさまざまなモノに組み込まれて至るところに存在し、これらのモノが相互に連携して機能する。このメッシュネットワーキングでは、これらのモノは自律的に、必要な相手を探して情報をやりとりし、協調処理を行う。

ネットワーク統合

 クローンチ氏は、ネットワークのIP化が進んでいると述べた。「IT環境の統合を目指す場合、サーバやストレージだけでなく、ネットワークを統合する機会にも目を向けるべきだ」

Web 2.0

 ガートナーによると、Web 2.0には3つの側面がある。AjaxのようなWeb技術、MySpaceのようなWebコミュニティー、Amazon.comのようなWebビジネスだ。

マルチコアプロセッサ

 ガートナーは、プロセッサのコア数が2015年まで、約18カ月ごとに倍増すると予測している。だが、ソフトウェア側の対応が進まなければ、あまり効果は得られない。

 「ソフトウェアがシステムのボトルネックになる恐れがある」とクローンチ氏。「処理するワークロードが大きいアプリケーションは、並列処理に対応するように再設計する必要がある。アプリケーションをマルチスレッド化するのは容易な作業ではない」

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