データ保存の日常業務と訴訟に備えた証拠保全は、IT部門と法務部門の連携が鍵を握る。訴訟資料裏付けの一助となり得るデータの多くはIT部門が管理しているからだ。
1930年代以降、米国の司法手続きには中心的な概念がある。係争当事者は、判事や陪審に案件を提示する前に、事実関係を徹底調査する権利があるという概念だ(これが法廷外の和解につながることもある)。
法廷での「驚き」はテレビドラマでは絵になるが、米国の判事は司法的要素としての驚きを好まない。従って訴訟の事実確認の段階では、法廷で双方の主張や弁護を裏付けるのに役立ちそうなあらゆる証人、文書、場所、「物事」への自由な接触が義務付けられている。
ITと法務の関係強化の話に入ろう。企業における電子情報の重要性を考えると、訴訟資料裏付けの一助となり得る証拠の多くは、ITおよび情報セキュリティ部門が管理している。論理上、この情報は利用できるものと弁護士は考えている。ITと情報セキュリティ部門は、法務部門とどのように連携したらいいのだろう。
確認しておくべき基本的な問題が2つある。法務はIT部門に対し、「何のデータを保存しておくべきなのか」を確認する。IT部門は回答の根拠として、自社のシステムおよび情報のビジネスニーズ(法令上、契約上の規定を含めて)を説明する。IT部門は法務に対し、「何を保存しておく必要があるのか」と問い掛け、法務は情報の保全が必要な係争中あるいは将来の裁判について説明する。
IT部門はさらに、次の2つの質問をすることになる。1つは「保全命令の現状は?」という質問だ。その結果、事実確認規定に基づいてIT部門が通常の情報ライフサイクル業務を続けてもいいと認められていることが判明する。これは、通常のビジネスプロセスの一環としてデータが破棄されることを、裁判所が想定しているということだ(明文化されていることが前提となる)。組織にはこの行為について免責が認められている。言い換えれば、通常通りの業務を行っていれば裁判所との間でトラブルが起きることはない。しかし、もし訴訟が進行中あるいは訴訟になることが予想される場合、「法的保全」の一環として関係する情報を保全する必要がある。従って、IT部門は顧問弁護士と継続的に連絡を取り、どのようなデータを保全しなければならないのかを把握する必要がある。
IT部門にとって最善の策は、法務が何をしているのか常に情報を得ておくことだ。そこで、2つ目の質問が出てくる。「新規あるいは予想される訴訟について現在どのような手続きを進めているのか」。IT部門にとって好ましくないのは、法務から「A社が来週わが社を提訴するらしい。あのプロジェクトについてのデータはどうしたっけ?」といったあいまいな問い合わせが来ることだ。差し迫った訴訟については継続的な、先を見越した会話がはるかに望ましい。
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