IFRSにかかわる組織から毎月、公表される各種文書。ムービングターゲットと言われ、変化を続けているIFRSの姿を捉えるにはこれらの文書から最新情報を得る必要がある。今月はIFRS移行方法の1つとして米国で検討されているコンドースメント・アプローチについての意見などを紹介する。
2011年は、MoUによる多くの検討項目が基準化される年であるとともに、アメリカにおけるIFRS導入に関する決定の行方が注目されている年でもある。IFRS Watch第5回は、7月中に公表されたIFRS関連情報より注目すべきものをピックアップしている。今回は、6月に紹介したIFRS移行方法の1つとして米国で検討されているコンドースメント・アプローチに対する公開討論会での意見などの最新情報をお届けする。
【これまでの記事】
ASBJ:企業会計基準委員会
FASB:米国財務会計基準審議会
IASB:国際会計基準審議会
IFRS:国際財務報告基準
MoU:IFRSと米国の会計基準との間の差異に関するコンバージェンス合意
SEC:米国証券取引委員会
SECはアメリカの財務報告システムにIFRSを導入する際の障害やメリットについて討議するための公開討論会を2011年7月7日にワシントンにあるSEC本部にて開催した。
SECは既に2011年5月に、今後米国においてIFRSへの移行が決断された場合の移行方法の1つとして、いわゆるコンドースメント・アプローチを詳細に検討したスタッフ・ペーパーを公表している。今回の公開討論会は、このスタッフ・ペーパーの内容を踏まえたうえで、投資家、中小公開企業、および規制当局からそれぞれの代表者をパネリストとして招待し、各立場からIFRSに対する理解や、導入方法に対する意見を表明し、討論する内容となった。
討論会に参加したパネリストの多くは、コンドースメント・アプローチに対して賛成の意見を表明した。また、SEC委員からコンドースメント・アプローチにおいて期限を設定した方が良いか否かとの問いに対しては、多くのパネリストが期限設定の必要性を訴えた。
SECはIFRS導入についての意思決定を2011年中に行うとしており、今回の公開討論会において参加者から提供された意見は、今後のSECの意思決定に大きな影響を与えるものと思われる。
IASBとFASBはリースに関する公開草案を再公表することで合意した。IASBでは2010年8月にリースに関する公開草案を公表していたが、その後FASBとの議論を重ね、さらなる抜本的な改正が必要と判断し、第2公開草案を公表することを明らかにした。第2公開草案は2011年の第4四半期(10-12月)に公開予定としている。
IASBとFASBは収益認識プロジェクトについての発効日について議論した。委員会は、収益基準の発効日が、当事業年度に加えて2年の比較期間の表示が必要な企業の最初の比較年度の期首が、基準が発行された後の数カ月とすることを暫定的に決定した。その結果、委員会は、現在のプロジェクトのタイムテーブルによれば、収益認識基準の発効日は2015年1月1日以後開始事業年度となると指摘した。
IASBは、IFRS第9号(金融商品)の強制的な発効日を、当初の2013年1月1日以後開始事業年度から変更すべきであるかどうかについて議論し、以下のように暫定的に決定した。
IASBでは、それぞれの主要なテーマごとにプロジェクトチームを組成し、基準の作成・更改を行っている。その他に、主要プロジェクトとして取り上げられていないものの、修正が必要な箇所を更新する年次改善プロジェクトが組成されており、各基準の改善を進めている。年次改善プロジェクトに係るIFRSの修正案自体は、2011年6月に英語で公開草案が公表されていたが、今般日本語でも見られるようになっている。該当する基準は以下の通り。
IASBは、影響度の大きい論点について公開草案の再公表または見直しが増えている状況を反映して、今後のプロジェクトの進行スケジュールであるタイムテーブルを5月13日、6月30日、そして7月26日と頻繁に更新している。5月13日以降の更新内容は以下の通りである。
5月13日現在 2011年第4四半期に基準化予定
7月26日現在 2012年内に基準化予定
5月13日現在 2011年第3四半期に基準化予定
7月26日現在 2011年第4四半期までに公開草案の再公表または見直し予定
(基準化の期限についての記載なし)
5月13日現在 2011年第4四半期に基準化予定
7月26日現在 2012年内に公開草案の再公表または見直し予定
(基準化の期限についての記載なし)
このように、これらのIASBとFASBのMoU項目または共同プロジェクトについては、それぞれの基準案の内容について異論が強いこともあり、その進捗が大幅に遅延している。従って今後もその内容の変更も含めて注視が必要であると思われる。
2010年6月に公表された「顧客との契約から生じる収益」の公開草案では、当初IFRS第1号(国際財務報告基準の初度適用)についての関連する影響を考慮し、IASBはIFRS第1号において、IFRSの初度適用企業について基準案への例外や免除を認めるべきではないとしていた。しかし、IASBは、以下の3つの救済措置のいずれかを初度適用企業が適用することを認めるために、IFRS第1号に免除規定を追加することを暫定的に決定した。
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。部分執筆書に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
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