ディスプレイや太陽電池では、透明な電極が必要だ。現在はITO(酸化インジウムスズ)が広く利用されているが、ITOには材料として課題が残る。そこでITOを超える次世代透明電極の開発が盛んだ。米Displaybankによる次世代透明電極の特許出願分析を紹介する。
有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池など「光」を扱う部品に必要な技術がある。「透明電極」だ。ディスプレイであれば、LEDバックライトや有機ELが放出した光を遮らないことが重要であり、そのためには電極(の一部)が透明でなければならない。太陽電池では光の方向は逆になるものの、光を反射・吸収しない透明電極がやはり必要である。
例えば、太陽電池の構造(図1)を見れば、透明電極がなければ成り立たないことが分かる。
透明電極に必要な性質は複数ある。可視光に対する透明度が高いことはもちろん、電気抵抗が低いこと(導電率が高いこと)、材料コストを低くできること、製造コストが高くないことなどだ*1)。
*1) この他、製造プロセスに適合することも重要だ。透明電極はディスプレイの表面に形成する。このときの製造条件が厳しいと、コストアップ要因になるほか、ディスプレイの他の部分に悪影響を与えてしまう。
透明電極として広く使われているのはITO(酸化インジウムスズ)だ。In2O3(酸化インジウム)にSnO2(酸化スズ)をわずかに添加した物質である。可視光の透過率が90%にも及ぶことが特長。課題はコストと電気抵抗、材料のもろさだ。
コスト面ではInが比較的希少であることが影響している。亜鉛鉱石や鉛鉱石の副産物として得られるため、産出量をディスプレイ装置や太陽電池の生産拡大に合わせて増やしにくい。
電気抵抗が金属に比べて高いことは光透過率とのトレードオフで悪影響を生む。ITO電極の抵抗値を下げるためには厚膜化が有効だが、こうすると光透過率が下がるからだ。
材料のもろさは、膜厚を増やしたときに特に顕著になり、自由に曲げられるフレキシブルディスプレイを実用化しようとしたときに大きな障害になる。
次に米Displaybankによる次世代透明電極の特許に関する分析を見てみよう。
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