米Domino’s Pizzaの低リスクなクラウド導入戦略CIOインタビュー

米Domino's PizzaでIT戦略を担当するコリン・リース氏。新技術に対する同氏のアプローチは用心深く計算されている。同氏は、クラウドやBYOD、モバイルアプリの導入をいかに進めたのか?

2013年07月18日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 「私は、流行のための流行には乗らないたちだ」と米Domino's PizzaのITディレクター、コリン・リース氏は言う。

 この言葉は、Webの達人であるリース氏のIT戦略を如実に示している。新しいテクノロジーのトレンドを押さえつつ、実際の導入に際しては、会社にとって最適なオプションを見極めた上で時間をかけて移行するというのがリース氏の戦略だ。

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 「早めに学習を始めて、早めに知識を積み上げることが重要だ。そうすることで、社内の誰もが新しいテクノロジーに順応しやすくなる。これが、Domino'sではITに対して人の問題やカルチャーの問題がない理由だ」

 リース氏の用心深く計算されたITへのアプローチは、Domino's Pizzaにおけるクラウドコンピューティングサービスの導入にも反映されている。

「石橋をたたいて渡る」クラウド導入

 「クラウド」という語がまだ生まれて間もない2011年の時点で、リース氏は「Domino's Pizzaではクラウドを1つの選択肢として検討している」と発言している。ただしその当時は、パブリッククラウドでは同社に必要なサービスレベルを実現できるとは思えなかった。

 しかしクラウドが成熟し、そのメリットがより明らかになってきたことで、リース氏はクラウド導入を前向きに考え始めた。「クラウドコンピューティングは重要なテクノロジーだ。弊社ではクラウドの導入に向けて取り組み始めたが、リスクの少ない形で経験を積み、クラウドの知識を蓄積したいと考えている」

 そこで、アプリケーションのテストと開発にIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)を使用することにした。クラウドでテストおよび開発をするアプリケーションは顧客向けではないため、クラウドの評価中に機能停止しても、Domino's Pizzaの通常のデジタル受注サービスには影響しない。

ビジネスクリティカルなアプリケーションのクラウドへの移行

 1年ほどこの方法でクラウドサービスを使用した結果、リース氏とITチームは、Webサービスなどのクリティカルなアプリケーションをクラウドに移行することを検討している。

 目的は、ピーク営業時のスケーラビリティとアジリティ(俊敏性)のメリットを得ることだ。

 Domino's Pizzaでは、週末の夕食時と、好評な特別サービス“Two for Tuesday”(訳注)がある火曜日に注文のピークが発生する。リース氏によると、「2、3時間で1日の大半の売り上げがある」そうだ。

訳注:火曜日は、1枚ピザを注文するともう1枚無料で付いてくるというキャンペーンが行われている。

 夜間と週末の数時間のピーク需要に対応するため、たとえシステムが使われない時間帯があっても、常にピーク時のワークロードに合わせてシステムを準備する必要がある。これが、インフラの無駄と高い経費を生んでいる。従って、この部分にクラウドを利用すれば、大幅なコスト削減を実現できる可能性がある。

 「ピーク状態の開発環境でクラウドを使用してみて、実際に幾つかのメリットを確認できた。現在は、Webサービスも含めて、クリティカルなワークロードをどのようにクラウドに移行するか検討を始めた」

 Domino's Pizzaでは、米Rackspaceのクラウドインフラを採用した。特定のベンダーに縛られるよりも、オープンソースのクラウドを利用した方が、ワークロードを移行しやすいことが理由だ。また、既にRackspaceのデータセンター管理サービスを利用していたことも影響した。

 「クラウドと社内の企業インフラとでベンダーを分けたくなかった」とリース氏は言う。

顧客エンゲージメントを支えるイノベーション

 現在のテクノロジー革命の中では、Domino's Pizzaのような小売業者が最も影響を受けている。端末の種類や時間を問わず注文できることが当然だと顧客が考えるからだ。

 「簡単なことではないが、われわれは革新的であることに貪欲だ。弊社には、顧客により良いサービスを提供するためのデジタルソリューションを考案する専任のチームがある」

 他のビジョナリーなCIOと同様に、リース氏の最終的な目的は、顧客にとって簡単で直感的なエクスペリエンスを提供できるように、会社のITおよびデジタル資産を整備することだ。「フランチャイズと顧客に素晴らしいサービスを提供できるITインフラにしたい。また、Domino's Pizzaの従業員にとっても、効率的なサービスを提供できるようにしたい」とリース氏は語る。

データセンターのスケーラビリティとセキュリティ

 リース氏にとってクラウドの最大のメリットは、素晴らしいスケーラビリティが得られるが、利用者はそれを気にする必要がないことだ。「現在Domino's Pizzaには2つのデータセンターがあるが、クラウドなら瞬時にして20のデータセンターを用意できる」

 リース氏は「現実とうわさを分けることも、課題の一部だ」と話し、クラウドコンピューティングの恐怖とセキュリティリスクにも動じない。

 「現実は、内部のデータセンターでさえ、管理が悪ければセキュリティリスクは高くなる。実は、クラウドシステムを使った場合、信頼性が大幅に向上し、ダウンタイムが減っている。時と共に、クラウドと非クラウドの違いは薄れていくだろう」

続きはComputer Weekly日本語版 2013年7月10日号にて

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