英Federation Against Software Theftが下した会員企業の資格停止処分は、中古ユーザーライセンスの合法性に関するユーザーの混乱に拍車を掛けている。
中古音楽の輸出に関する米国での判決が下る数カ月前、米Microsoftは中古ソフトウェア販売業者の英Discount-Licensingに対する訴訟手続きを開始した。そして2013年4月11日、Microsoftは裁判に持ち込むことを警告した後、米国(欧州経済圏以外)で入手した中古ソフトウェアライセンスに対する著作権侵害で、Discount-Licensingを訴えた。
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Discount-Licensingは、自社のWebサイトへのリンクが機能しないことを英Federation Against Software Theft(FAST)に問い合わせたとき初めて、会員資格を停止されていることが分かった。Discount-Licensingによると、FASTはこの訴訟を受けて会員資格を停止したという。
違法ライセンスを販売した顧客のうちEEA地域(訳注)の顧客の割合は比較的少なく、その後この違法ライセンスは欧州ソフトウェアディレクティブ(EU Software Directive2009/24/EC)に従って、欧州で入手したライセンスに置き換えたとDiscount-Licensingは述べている。
訳注:European Economic Area(欧州経済領域)。
欧州ソフトウェアディレクティブには、ユーザーが中古ソフトウェアを購入する権利を保護する意図がある。しかし、このDiscount-Licensingの事例から、ソフトウェアプロバイダーは中古ソフトウェアの合法性に疑問を持ち始めていることが分かる。
「中古ソフトウェアを購入するユーザーは、取引が合法かどうかを意識することはほとんどない。これが違法となると、この結果を受けて法的責任を負う可能性があるのは購入するユーザーだ」と欧州Microsoft EMEAのデジタル犯罪部門の副顧問を務めるファン・ハルドイ氏は話す。
FASTは、Discount-Licensingの会員資格を停止しなければならず、このような措置を講じるのは初めてのことだと述べている。
「FASTは著作権保護の立場を取っている」と英FASTのCEOアレックス・ヒルトン氏は語る。「ソフトウェアライセンスを侵害した企業を会員にとどめておくことはできない。Discount-Licensingの行為を非難しようとしているわけではない。FASTは欧州ソフトウェアディレクティブの存在を認めている。これは現に存在し、欧州司法裁判所によって定められている」
FASTで相談役を務めるジュリアン・ヒースコート・ホビンス氏は次のように話している。「現実的な課題は、同じ問題に対する欧州司法裁判所と米司法裁判所との見解の相違によって生まれる不確実さにある。FASTは、現在の判例だけでは特定の中古ソフトウェア(SHS)の取引が合法かどうかを断定することはできないと考えている」
「議論すべき問題は広範囲に及ぶ。中でも特に重要なのが、エンドユーザーが求める法的な確実性と、英国の再販チャネルの信頼性に与えるダメージだ」
ソフトウェア業界は、欧州ディレクティブが制定したガイドラインがあるにもかかわらず、この事例を取り上げて中古ソフトウェアの合法性に疑問を投げかけていると、ソフトウェア資産管理分野の専門家は見ている。
FASTの会員資格停止処分を受けて、Discount-Licensing社長のノウェル・アンウィン氏は次のように述べた。「これはソフトウェアベンダーやその代理店をFUD(恐怖、不安、疑念)に陥れる典型的な事象で、中古ソフトウェアビジネスはこのFUDに対処しなければならない」
「FASTの最近の見解に反して、中古ソフトウェアの合法性はEU(欧州連合)内では既に決着がついている。FASTやソフトウェアベンダーの見解で欧州司法裁判所の判決が覆ることはない」
「FASTがDiscount-Licensingの会員資格停止に踏み切ったことは、2つの理由で自分の首を絞めてしまったと考える」と英1EのITAMサービス部長ローリー・カナバン氏は話す。「第一に、ソフトウェアライセンスに関わる担当者や企業へのサポートや教育に関して、間違ったメッセージを送ってしまった。第二にこれが前例になり、今後加入する全ての会員は、加入資格としてライセンス準拠を求められることになりはしないか」
ソフトウェア業界は、中古ソフトウェア販売業界をめぐって欧州の司法裁判所で争いを続けている。
2012年7月3日、欧州司法裁判所は、独usedSoftと米Oracleのとの訴訟で重大な判決を下した。
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