「中小の業務システム向けDB」Oracle、SQL Server以外の選択肢データベース選定の常識を変える

Oracle DBやSQL Serverは優れた製品だが、中小規模の業務システムにはオーバースペックな面もあり、何より高価だ。中堅・中小企業の製品選びでは、性能や信頼性はもちろんのこと経済性も大切な要素だ。

2014年04月07日 00時00分 公開
[ITmedia]

オーバースペックのDB製品が中小企業のIT投資を圧迫

 「業務システムで使うデータベース製品」といえば、真っ先にどんなものが思い浮かぶだろうか。多くの方がまずは、「Oracle Database」や「Microsoft SQL Server」(以下、SQL Server)といった、オープン系でシェアの高いデータベースパッケージ製品のことを思い浮かべるのではないだろうか。中には、「IBM DB2」(以下、DB2)や日立製作所の「HiRDB」といった、大規模なミッションクリティカルシステムで実績のある製品のことを連想する方もいるかもしれない。

 しかし、これにもし「中堅・中小企業向け」という条件が付いた場合、上記以外の選択肢を思い付く人が、果たしてどれだけいるだろうか? DB2やHiRDBは除外されるにしても、やはり規模が小さなシステムであっても、業務システムの構築ではおなじみのOracle DatabaseかSQL Serverが真っ先に挙がることだろう。

 確かにこれらのデータベース製品は、企業規模やシステム規模を問わず幅広い実績を残しているだけあり、中堅・中小企業向けの業務システムにおいても十分な信頼性やパフォーマンスを発揮できることだろう。しかし中堅・中小企業がシステムを構築・運用をする際には、大企業では見られない独自の要件があることも確かだ。そして、その最たるものが「経済性」である。

 大企業においても、近年でこそ業務システムの費用対効果が厳しく問われるようになったとはいえ、中堅・中小企業に比べればはるかにIT投資に振り分ける予算を潤沢に確保できる。それに対して中堅・中小企業では、システム投資に充てられる資源は、大企業に比べはるかに制限されるのが一般的だ。自ずと、IT製品を選択する際にも、経済性やコストパフォーマンスが極めて重要視される。事実、製品やベンダーを選定する際には、まずは価格が最優先されるケースが珍しくない。

 にもかかわらず、データベース製品だけに限っていえば、「業務システムといえばOracle Database」「小規模システムといえばSQL Server」といった通念がこれまで何の疑いも差し挟まれることなく信じられてきた。そのため、実際には中小規模システムにとっては明らかにオーバースペックであるにもかかわらず、これらの製品が採用されてきたのが実情だ。

組み込みDBの雄「PSQL」が価格改定で業務システム用DB市場に進出

 とはいえ、これまでは中小規模システムの構築にちょうど見合うスペックや価格のデータベース製品が存在しなかったことも事実だ。そんな中、データベース製品「PSQL」を擁するエージーテックが、このたび大胆な施策を発表した。PSQLの価格を、大幅に値下げしたのだ。

 PSQLといえば、パッケージソフトウェア製品に組み込まれるデータベースエンジンとして名高い製品だ。旧製品名「Btrieve」の時代から数えると、27年間にわたって組み込みデータベース製品のベストセラーとして知られてきた。長きにわたって広い実績を誇ってきた製品だけあり、その信頼性やパフォーマンスには定評があり、またサポートサービスや開発ライセンスが無償で提供されるなど、コストパフォーマンスが極めて高いことでも知られる(詳しくは、「Oracle DBやSQL Serverを使い続けるのは本当に正しい選択なのか?」に記されているため、こちらを参照されたい)。

 ただし、これだけの実績を持つ製品でありながら、不思議なことにこれまでは、業務システムの構築で採用されるケースはあまりなかった。PSQL自身は、特に組み込み用途に限定されたデータベース製品というわけではなく、一般的なオープン系RDBMS製品と同様にSQL言語で操作でき、かつ中小規模の業務システムのトランザクション量であれば、全く問題なくさばけるだけの性能と可用性を備えている。

 そこで提供元のエージーテックは、中小企業向けシステム開発におけるPSQLの存在感を強化すべく、ライセンス価格の大幅改定に踏み切った。これまで、システム開発での利用を想定したライセンスには、同時接続ユーザー数が「100ユーザー」「250ユーザー」「500ユーザー」「無制限」があり、それぞれ132万円、198万円、265万円、280万円の価格が付けられていた。それが2014年4月1日からは、100ユーザーライセンスが104万円に値下げされ、さらに250ユーザー以上は全てユーザー数無制限のライセンスにまとめられ、その価格は何と132万円まで値下げされた。旧来のユーザー数無制限ライセンスの価格と比較すると、実に3分の1近くまで価格が下がっている。

表1 PSQL v11 SVの価格改定(※価格は全て税別)

 ちなみに、上記はクライアント/サーバ型での利用を前提とした「PSQL v11 SV」のライセンス価格だ。一方、Webアプリケーションでの利用に適した「PSQL Vx 11」の方も、今回同時に大幅にライセンス価格が引き下げられた。こちらのユーザー数は無制限で、「同時接続セッション数」と「同時に開くデータファイルの合計サイズ」によって「Small」「Medium」「Large」「Supersize」の4種類のライセンスが設けられている。旧来の価格体系では下記の表の通り、Mediumから99万円、239万円、429万円となっていたが、それが今回の価格改定によって80万円、132万円、171万6000円まで大胆に値下げされた。今回、価格改定の対象外ではあるが、ミニマムサイズの Smallなら、39万円から構築が可能だ。

表2 PSQL Vx 11の価格改定(※価格は全て税別)

業務システム向けDBの価格感を根底から覆す大胆な価格体系

 なお、PSQLのライセンスは全て、サーバのインスタンスごとに購入する形となる。言い方を変えれば、サーバに搭載されているCPUコア数によってライセンス価格が変わることはない。近年、サーバのマルチコア化が進んだことで一般的なデータベース製品がコアライセンスを採用する中、PSQLはマルチコアの恩恵を低コストで受けることができる効率的なライセンス体系を採用している。

 例えば、中小規模のシステムでよく採用されるデータベース製品と比べてみると、4コアを搭載するサーバにインストールするケースでは、ライセンス価格は約3分の1〜4分の1にまで安くなる。またPSQLは、サポートサービスを無償で受けることができる。オープンソース製品も含め、商用データベース製品のほとんどがサポートサービスに多額のコストを必要とするのに比べると、初期導入コストだけでなくランニングコストもかなり低く抑えることができる。

 さらには、PSQLを使ってシステム開発に当たる開発者向けには、開発用ライセンスが無償で提供される。エージーテックの開発パートナー企業向けプログラム「エージーテック・ビジネスパートナー(AGBP)」に参加すると、PSQLを最大400日間無償で利用できる開発用ライセンスや、各種開発ツールが提供される。また、実際の開発作業に当たって必要となる各種の技術情報も、同社から無償で提供される。

 このように、従来のエンタープライズ向けデータベース製品の価格感を根底から覆すような大胆な価格戦略を打ち出してきたPSQL。恐らくは、日本における中堅・中小企業向けITソリューションの世界に、極めて大きなインパクトを与えるはずだ。ユーザーはシステムの構築・導入コストとランニングコストの双方を大幅に軽減でき、一方ソリューションを提供する側のシステムインテグレーター(SIer)にとっても、開発コストの低減や仕入れコストの削減によって自社サービスの価格競争力を強化できるメリットがある。

 とはいえ、PSQLはどんなシステムにも適しているというわけではない。中小規模のシステムにおいては最適化となる一方で、金融系システムや社会インフラ系システムなど、大規模、ハイパフォーマンス、ミッションクリティカルなシステムを構築するためのデータベースエンジンとしては適さない。こうしたシステムのためのデータベースとしてはOracle DatabaseやSQL Server、さらには先に挙げたDB2やHiRDBといった製品でないとなかなか対応できない。

 しかし逆に言えば、これまで中小規模のシステムでオーバースペックなデータベース製品を選んできたシステム開発の現場においては、PSQLを採用することで余分な機能やコストを大胆に省いたスリムなデータベース基盤を構築し、コストを最適化することで、ユーザーとSIerがともにハッピーになれるというわけだ。

今後は開発者向けの教育コンテンツも無償で提供

 中には、価格が安いことで製品品質に関して不安を持つ方もいるかもしれない。しかし先に述べたように、PSQLはパッケージソフトウェアの組み込みデータベースの分野では既に27年間にもわたって世界中で無数の実績を積んできた製品であり、その中には比較的大規模システムで利用されるパッケージも含まれている。従って、品質や信頼性に関しては、ほぼ心配ないと見てよさそうだ。事実、エージーテックがPSQLのサポートサービスを無償で提供できているのも、PSQLの品質が極めて高く、ユーザーからのトラブル問い合わせがほとんどないからなのである。

 あるいは、これまでPSQLを一度も使ったことがない方の中には、うまく使いこなせるか不安に感じる方もいるかもしれない。その点についても、特に不安視する必要はないだろう。PSQLは独自APIを通じて操作を行うことができるが、同時に他の一般的なオープン系RDBMS製品と同様にSQL文を使ったデータ操作が可能になっている。従って、これまでそうしたデータベース製品を使って開発を行ってきた方なら、ほとんど違和感なく移行できるはずだ。

 またエージーテックでは、今回のPSQLライセンス価格改定に合わせ、新たにPSQLの教育プログラムの無償提供も開始する。具体的には、技術資料やeラーニングなど、PSQLを使って開発を進めるための各種トレーニング教材の提供を順次用意し、提供していくという。なおこれらのコンテンツは、AGBPに参加しているユーザーには全て無償で提供される予定だ。

 このように、これまでにない価格とサービスを打ち出してきたPSQLの参入によって、中堅・中小企業向けソリューションの市場では2014年、新たな潮流が生まれる予感すらする。既に紹介したように、開発者向けに最大400日間限定の無償ライセンスも提供されているため、本稿を読んでPSQLに少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度ダウンロードしてその実力のほどを試してみてはいかがだろうか。

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