IBMが2014年1月に発表したx86サーバの次世代アーキテクチャ「X6」。特に、データ処理向けの新技術を搭載したという。その概要について、日本IBMのエバンジェリストに話を聞いた。
企業の基幹業務を支えるx86サーバの中でも、高信頼・高性能な製品の代表格ともいえる日本アイ・ビー・エム(IBM)の「IBM System x」(以下、System x)。2014年は、これまで数多くの企業の基幹システムを支えてきたSystem xにとって大きな節目となる年になりそうだ。
その理由の第一は、2014年1月に発表されたSystem xの新たなアーキテクチャ「X6」だ。日本IBMでSystem xのエバンジェリストを務め、VMwareの「vExpert 2014」受賞者でもある東根作 成英氏は、X6アーキテクチャの特徴や先進性について、次のように述べる。
「2001年から13年にわたって進化を続けてきたSystem xのエンタープライズX-アーキテクチャ。前世代のeX5では、仮想化の集約率を高めるための先進的なメモリ技術を搭載するアーキテクチャの採用が注目を集めた。第6世代に当たるX6でも引き続き、仮想化環境での利用を前提に設計している。さらに今回は、企業の『データ処理』の性能やキャパシティー向上に主眼を置いている。そのため、他社に先駆けてデータ処理に特化したさまざまな先進技術を投入した」
もう1つの転換点が、やはり2014年1月に発表されたx86サーバ事業におけるLenovoとの戦略的提携だ。IT業界で大きな驚きを持って受け止められたこのニュース、東根作氏によれば誤解を抱いている人も多いという。
「製品の継続について不安や誤解を抱く方もいるようだが、これまでIBMでx86サーバの開発・製造・販売など、x86サーバビジネスに携わってきた人員と体制が全てそのままLenovoに移管され、今後も変わらずに研究開発と先進的な製品の提供を続けていく。企業ユーザーにとって重要な保守サポートについては、引き続きIBMがLenovoから委託を受けて実施することになる。また、Lenovoに移管されることで、製品に対しての投資の優先度が高くなり、顧客企業が利用できるソリューションの幅は大きく広がる」
では、X6が搭載するデータ処理、特にアナリティクス用途におけるパフォーマンスを劇的に向上させるという新たな技術とは、一体どんなものなのだろうか? 東根作氏によれば、大きく分けて「FAST(高速性)」「AGILE(俊敏性)」「RESILIENT(自己回復力)」の3点でユニークな特長を備えているという。
X6アーキテクチャを採用した製品群に採用されたCPUは、インテルの最新鋭プロセッサ「インテル Xeon プロセッサー E7 v2」製品群。1CPU当たり15コアが搭載可能となり、旧世代のプロセッサに比べ、飛躍的な性能向上を果たした。X6アーキテクチャでは、この新プロセッサの高い処理能力の恩恵を存分に受け、各種のベンチマークテストにおいてeX5の約2倍の性能向上を果たしている。
しかし、それ以上に特長的なのが、新たに採用されたX6独自のフラッシュストレージ技術「eXFlash メモリ・チャネル・ストレージ」だ。サーバ内蔵型のフラッシュストレージというと、少し前からPCIeスロットを介して搭載する方式が主流となりつつある。X6では、PCIeスロットに搭載するフラッシュストレージに加え、さらにメモリスロットに最大12.8T(テラ)バイト分のNANDフラッシュデバイスを搭載できるようになった。PCIeスロットよりもプロセッサに近い位置にあるメモリスロットに実装することで、これまでにない低レイテンシでの高速フラッシュストレージアクセスが実現されている。
ここで言う「俊敏性」とは、柔軟な拡張性と言い換えてもいいかもしれない。データ処理/分析基盤を構築する場合、初期投資を抑えたスモールスタートとともに、将来的にキャパシティーや性能を拡張する際には最新技術の恩恵をなるべく受けたいと考えるだろう。X6アーキテクチャにはデータ処理基盤の拡張性のニーズに柔軟に応えられるよう、ユニークな設計が施されている。
X6アーキテクチャを採用したサーバ製品には、大きく分けて2つの系統がある。1つが、ラック型の「IBM System x3550 X6」と「IBM System x3950 X6」。もう1つが、ブレード型サーバ製品「IBM Flex System X6 ポートフォリオ」だ。前者は、スケールアップ型の拡張ニーズに応えるための製品。CPUとメモリを搭載した「コンピュートブック」と呼ばれる部品の数を徐々に増やしていくことで、段階的なスケールアップが容易にできるようになっている。また後者は、独立したブレードサーバを追加していくスケールアウトはもちろん、独自の機構によって各ブレードのCPUを直結し、スケールアップさせることも可能だ。
自己回復力とは、万が一の障害発生時やメンテナンスなどによる計画停止などの際、いかに迅速にシステムを自己復旧できるかということだ。この点についても先ほど挙げた「FAST」と同様、インテルの最新プロセッサが実装する「Intel RunSureテクノロジー」が提供する各種の可用性機能をフル活用することで、未然にシステムエラーを防ぐことができる。
これに加えて、IBMは独自の可用性機能をX6で新たに採用している。ハードウェアレベルにおいては「自動プロセッサフェイルオーバー」や「メモリページの自動リタイア」「管理ファームウェアの自動バックアップ」など、各種のハードウェアRAS機能を独自に実装している。これに加え、ソフトウェアレイヤーにおいても「IBM Upward Integration Module」という独自のソフトウェア技術を応用することで、「VMware vSphere」仮想化環境においてハードウェア障害を事前に検知して仮想マシンを自動的に退避させたり、あるいは仮想サーバをvMotionで自動的に退避させながら各物理サーバのファームウェアを順々に自動アップデートする「ローリングアップデート」を実現している。
このように、他メーカーのx86製品には見られない、数々の特徴的な技術を満載するX6アーキテクチャ製品群。上記3つの特長それぞれにつき、あらためて別記事で詳しく解説する予定だ。本稿を読み興味を持たれた方は、ぜひご参照いただきたい。
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