Mozillaのセキュリティ責任者が指摘
匿名ブラウザ「Tor Browser」で“身バレ”攻撃が発生、FBIが関与か
閲覧者のIPアドレスを隠匿する「Tor Browser」を狙った攻撃が明るみに出た。過去の捜査活動で取った手法との類似性から、FBIがこの攻撃に関与していたとの見方がある。
Mozilla FoundationとTor Projectは、Webブラウザ「Tor Browser」のエンドユーザーの匿名性を解除する攻撃に使われていた脆弱(ぜいじゃく)性を修正した。Tor Browserは、匿名通信システム「Tor」(The Onion Router)を組み込んだWebブラウザだ。
この脆弱性は、Tor BrowserのベースであるWebブラウザ「Firefox」に存在していたものの、それまで知られていなかった。TorはエンドユーザーのグローバルIPアドレスを秘匿する。だが今回の脆弱性を悪用すれば、攻撃者がJavaScriptとSVG(画像形式の一種)の悪質なソースコードを仕込んだWebページをエンドユーザーに読み込ませる手口によって、IPアドレスとMACアドレスを収集することが可能だった。
FBIの手法との類似性
Mozillaのセキュリティブログ「Mozilla Security」によれば、今回の匿名解除攻撃で利用されていた脆弱性悪用コードは、Windowsにしか通用しない。ただし脆弱性はAppleのクライアント端末「Mac」用OSとLinuxにも存在することから、全てのOSで稼働するFirefoxとTor Browserを速やかに更新する必要がある。
これに先立つ2015年には、米連邦捜査局(FBI)がポルノ捜査の一環として、「一般には知られていなかった脆弱性」を使って、1000人以上のTorユーザーの身元を突き止めたことが判明していた。これに関連した裁判で、米連邦裁判所のティモシー・L・ブルックス裁判官は、ポルノサイト「Playpen」とそのエンドユーザーに対する捜査に使われた手法の詳細を明らかにした。ブルックス氏の裁判書面によると、FBIはネットワーク捜査技術(NIT)を使ってエンドユーザーの「真のIPアドレス」を割り出し、そのエンドユーザーの身元と居場所を突き止めていた。
話を今回の脆弱性に戻そう。Mozillaが2016年11月30日に修正したこの脆弱性を悪用する手口は、FBIが2015年に使った攻撃コードと特徴が似ていた。Mozillaセキュリティ責任者のダニエル・ベディッツ氏は、パッチについて説明したブログの中でこう記している。「今回の悪用コードは本質的に、FBIがTorユーザーの匿名を解除するのに使った『ネットワーク捜査技術』と同様に機能する(FBIが宣誓供述書で述べている通り)。この類似性を考えると、今回の悪用コードもFBIあるいは別の捜査機関によって作成されたという推測に結び付く」
FBIがPlaypenの捜査に使った攻撃コードと、今回の悪用コードが同じだったという証拠はないとベディッツ氏は認める。だが仮にこの悪用コードが実際に政府機関が開発し、導入したものだったとすればどうか。「それが公開されてFirefoxユーザーを狙う攻撃に誰でも利用できる状態になったという事実は、政府機関による限定的なハッキングだったはずのものが、いかにWeb全体に対する脅威になり得るかを物語る」と同氏は指摘する。
米連邦政府機関はここ数年、Torユーザーの匿名性を解除する手段を探ってきた過去がある。2014年には米国防総省がCarnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)ソフトウェアエンジニア研究所の研究チームと契約してTorユーザーのIPアドレスを取得する手段を研究させていたことを、連邦裁判所の判事が確認した。
カーネギーメロン大学のこの研究成果が、2015年にFBIが使った攻撃コードと同じだったのかどうか、あるいはMozillaが2016年11月30日に修正したものと同じだったのかどうかは分からない。セキュリティ専門家の間では、TorユーザーのIPアドレスを暴くことが可能な、Torの脆弱性を突くコードが1~3種類存在するとの臆測もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
5
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
8
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
9
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
10
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー