テレワークの実現にも役立つ「シンクライアントデバイス」は、企業にさまざまなメリットをもたらす。一方で見落とせない課題も幾つかある。主要なメリットと課題を整理しよう。
Microsoftは同社OS「Windows」に、画面転送プロトコル「Remote Desktop Protocol」(RDP:リモートデスクトッププロトコル)を標準搭載し、RDP経由で遠隔からデスクトップにアクセスできるようにしている。テレワークに取り組んでいる企業にとって、MicrosoftのDaaS(Desktop as a Service)「Windows Virtual Desktop」(WVD)を導入することは一つの手だ。ただし選択肢はWVDだけではない。
有力な選択肢となり得るのが、RDPを利用可能なシンクライアントデバイスだ。各社のシンクライアントデバイスは、ネットワークを整え、キーボードやディスプレイといった周辺機器を用意すれば、簡単に使うことができる。
本稿はシンクライアントデバイスに焦点を当て、RDPを使ってリモートアクセスするために、シンクライアントデバイスを使うメリットを考える。シンクライアントデバイスのコスト面や管理面のメリットとして、下記の6点が挙げられる。
一般的な商用のOSやアプリケーションが搭載されていないことが、シンクライアントデバイスの特徴だ。そのためシンクライアントデバイスでは、こうしたソフトウェアのライセンスコストが基本的に発生しない。
シンクライアントデバイスは、稼働とリモートアクセスに必要な最小限のハードウェアやソフトウェアで構成されている。そのため一般的なノートPCやデスクトップPCと比べて本体価格が安めだ。
一般的なノートPCやデスクトップPCと比べて、シンクライアントデバイスでは電力を消費する部品は限られており、本体全体の消費電力は少ない傾向がある。
シンクライアントデバイスがRDPを通じてアクセスする先をサーバに一元化すれば、OSやアプリケーション、データをサーバに集約できる。そのため、これらが散在する一般的なノートPCやデスクトップPCと比べて、エンドユーザーに対するサポートがしやすくなる。
IT部門によるハードウェアの頻繁なメンテナンスが不要なことも、シンクライアントデバイスの利点だ。ほとんどのシンクライアントデバイスには、ユーザー企業が自前で修理可能な部品がない。故障すれば本体ごと入れ替えることになる。
シンクライアントデバイス内部のハードウェア構造は、物理的な駆動部分がないなど一般的なノートPCやデスクトップPCを比べて単純だ。そのためベンダーは稼働の安定性を高めやすい。
企業がシンクライアントデバイスを導入する上で、無視してはいけない重大な課題がある。主に以下の3点が考えられる。
シンクライアントデバイスはリモートアクセスでの利用を前提としており、オフラインでは基本的には動作しない。そのためネットワーク接続がなければエンドユーザーは作業ができない。
低速のネットワークに大量のシンクライアントデバイスが接続する場合、回線が過負荷になる可能性がある。そうするとユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)に支障が出る。
シンクライアントデバイスに障害が起きた場合、基本的には本体を交換する。そのためハードウェア調達のコストがかさむ可能性がある。
企業はシンクライアントデバイスのメリットと課題を理解し、自社に最適な活用方法を考えることが重要だ。後編は、企業がシンクライアントデバイスを選定する際、どのような注意点があるかを紹介する。
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