ザッカーバーグ氏の「素早く行動し破壊せよ」は顔認識には当てはまらない?顔認識技術の行く末【中編】

Facebookは、過去に複数の問題を引き起こしてきた顔認識機能の廃止を決定した。顔認識技術はさまざまなメリットだけでなくリスクももたらす。専門家が懸念する顔認識技術の問題点とは。

2021年12月16日 08時15分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

 Meta(旧Facebook)は2021年11月、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Facebook」の顔認識機能の廃止を発表した。この行動に踏み切ったことは、顔認識機能が原因で同社が過去に問題や批判に直面したことを考えれば、特に驚きではない。

 顔認識技術を使ったFacebookの自動タグ付け機能は、これまでさまざまな問題を起こしてきた。Meta(当時のFacebook)は「写真にタグ付けするための顔データなどの生体データを、ユーザーの同意なしで使用している」との民事訴訟を起こされた。この訴訟に対して2021年、米連邦判事は同社が6億5000万ドルを支払うことによる和解を承認した。2019年には米連邦取引委員会(FTC)が、Facebookに50億ドルの制裁金を科した。顔認識をいつ、どのように使用するのかの管理と設定が不明確だという理由からだ。

 こうした事件を受け、Metaの今回の決定について「同社は長年のプライバシー問題の一部を解消する狙いがある」という見方が生まれている。

ザッカーバーグ氏のモットー「素早く行動し破壊する」を否定する

 Metaは、顔認識技術の利用を縮小した初の大手IT企業ではない。Amazon.comやMicrosoft、IBMも、顔認識ソフトウェアの販売を中止したことがある。「顔認識技術を含むAI(人工知能)技術はさまざまなリスクをもたらす『もろ刃の剣』だ」。AI技術の法的および技術的リスクを専門とする法律事務所BNH.aiの主席サイエンティスト、パトリック・ホール氏はそう指摘する。

 AI技術がもたらすリスクの例には、データプライバシーに関するリスクや差別に関するリスクがある。「AI技術を利用する企業は、AI技術がもたらすリスクがメリットを上回ることを理解した上で導入している」とホール氏は推測する。同氏によると、写真に写る人を認識する機能のメリットは比較的小さい。そのためMetaをはじめとするSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)運営企業は、顔認識技術の利用を控え始めているという。「顔認識技術を採用する企業が文化を変え、使い方に細心の注意を払う。これを前提条件とすれば、企業は責任を伴って顔認識技術を使用できる」とホール氏は説明する。

 顔認識が人種差別や性差別につながった場合は、経営者が敏感に対処し、顔認識技術を利用する機能を無効にする必要がある。リスクを抑えて顔認識技術を導入するには、企業は「マーク・ザッカーバーグ氏(Metaの創業者)の有名なモットー『素早く行動し破壊せよ』による呪縛から脱却しなければならない」とホール氏は指摘。「素早く行動し破壊することは、人々に害を与えるだけだ」と語る。

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