「VBAマクロ原則ブロック」一時撤回をMicrosoftに決断させた“真犯人”とは?謎の「VBAマクロ原則ブロック」一時撤回問題【前編】

Microsoftが「Microsoft Office」で進めていたVBAマクロ原則ブロック方針を一時的に撤回したことで、ユーザーやセキュリティ専門家の間に戸惑いが広がっている。一時撤回の背景にある“謎”を追う。

2022年08月05日 08時15分 公開
[Alex ScroxtonTechTarget]

 Microsoftはオフィススイート「Microsoft Office」で、エンドユーザーがインターネットで入手した「Visual Basic for Applications」(VBA)のマクロ(アプリケーション自動操作機能)の実行を初期設定でブロックする方針を一時的に撤回した。VBAはMicrosoft Officeファイル用のマクロを記述するためのプログラミング言語だ。

 2022年4月提供のMicrosoft Officeバージョン2203で、MicrosoftがこのVBAマクロブロック方針を導入したのは、セキュリティの強化のためだ。Microsoft OfficeのユーザーはVBAマクロの利用に際し、知らないうちにマルウェアをダウンロードする可能性があった。その対策として同社はVBAマクロを原則ブロックし、マルウェアのダウンロードのリスクを減らすことを図っていた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によるテレワークの普及を受けた取り組みだったとみられる。

 ところがMicrosoftは2022年7月に、このVBAマクロブロック方針を一時的に撤回した。それはなぜなのか。

Microsoftが「VBAマクロ原則ブロック」一時撤回を決断した“本当の理由”

 Microsoft Officeユーザーは、MicrosoftからVBAマクロのブロック方針一時撤回について、事前に情報が提供されなかったことに不満を表している。

 英国のビンス・ハードウィック氏はMicrosoft Officeを利用していた際、ある異変に気付いた。Microsoft OfficeがVBAマクロをブロックする通知ではなく、バージョン2203適用前と同様の、VBAマクロに対するセキュリティ警告を表示したのだ。このことを不審に思い、ハードウィック氏はMicrosoftの技術コミュニティーフォーラムでその理由を質問した。

 ハードウィック氏の質問に対し、Microsoftのアンジェラ・ロバートソン氏は「ユーザーから寄せられたフィードバックに基づき、VBAマクロのブロック方針の撤回を決めた」と説明した。ロバートソン氏は、サブスクリプションオフィススイート「Microsoft 365」のセキュリティ機能を担当する。同氏はユーザーに不便をかけることを謝るとともに、「撤回のアップデート」に取り組んでいると説明した。撤回のアップデートの詳細は不明だ。

 Microsoftがユーザーから受けたというフィードバックの具体的な内容は不明だ。VBAマクロのブロック方針一時撤回の判断が、本当にユーザーのフィードバックに基づいているとすれば、セキュリティ専門家からのフィードバックではない可能性が高い。セキュリティ専門家は「Microsoft Officeユーザーを簡単な手口で攻撃できる」道が絶たれるとみて、VBAマクロのブロックを歓迎していたからだ。


 後編は、VBAマクロのブロック方針一時撤回に関する、セキュリティ専門家の見解を紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news047.jpg

SASのCMOが語る マーケティング部門が社内の生成AI活用のけん引役に適している理由
データとアナリティクスの世界で半世紀近くにわたり知見を培ってきたSAS。同社のCMOに、...

news159.jpg

SALES ROBOTICSが「カスタマーサクセス支援サービス」を提供
SALES ROBOTICSは、カスタマーサクセスを実現する新サービスの提供を開始した。

news139.jpg

「Fortnite」を活用  朝日広告社がメタバース空間制作サービスとマーケティング支援を開始
朝日広告社は、人気ゲーム「Fortnite」に新たなゲームメタバース空間を公開した。また、...