「GPT-4より強いAI」を開発しないで――マスク氏ら“異例のお願い”の中身とはAI規制の訴えと米政府の反応【前編】

「GPT-4」よりも強力なAIモデルの開発を中止すべし――。非営利団体が米政府に宛てた、AI技術規制に関する公開書簡には、イーロン・マスク氏などIT界の著名人も賛同した。同団体が求める規制の内容とは。

2023年05月16日 08時15分 公開
[Makenzie HollandTechTarget]

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 人工知能(AI)技術のリスク軽減を目指す非営利団体Future of Life Instituteは、AI技術に関する公開書簡を2023年3月に発表した。AIモデル開発の一時停止と、政府によるAI技術の規制強化が目的だ。書簡の具体的な内容とは。

書簡が求める「AI規制」の中身とは?

 公開書簡は、AIベンダーOpenAIの自然言語処理AIモデル「GPT-4」よりも強力なAIモデルの開発を、6カ月間中断することを呼び掛けている。SpaceX、Twitter、TeslaのCEOを兼務するイーロン・マスク氏と、Appleの共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏が、この書簡に署名した。本稿執筆時点までに署名した2000人の中には、学術研究者や政策専門家が目立ち、スタートアップ(創業間もない企業)のCEOはあまりいない。

 他にも公開書簡は、AI技術に関する規制の「劇的な加速」も政府に求めている。規制の例として、書簡は以下を挙げる。

  • AI技術に特化した規制機関の設置
  • 先進的なAI技術の監視
  • 実在のコンテンツと、AI技術で生成した合成コンテンツを見分けるための透かしシステムの導入

 規制の他に、AI技術の安全性確保には以下が必要だと公開書簡は主張する。

  • AI技術の監査と認証制度
  • AI技術によって生じた損害に対する賠償責任制度
  • AI技術の安全性、AI技術が引き起こし得る混乱を研究するための公的資金

 「この公開書簡の目的は、世界中の政府や規制当局に対して、AI技術の急速な進歩に関する警鐘を鳴らすことだ」。シンクタンクBrookings Institutionで、AIおよび新興技術研究部門のディレクターを務めるクリス・メセロール氏はそう述べる。一方で「複数の政府機関や規制当局の関係者は、既にAI技術に対する懸念を注視し、行動を始めている」とメセロール氏は語る。


 次回は、Future of Life Instituteの公開書簡に対する複数の意見を紹介する。

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