Microsoftは2023年11月、データ管理やデータ分析など一連のツールを備える「Microsoft Fabric」を発表した。その具体的な機能と、企業にとってのメリットを紹介する。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)は、企業向けソフトウェア市場で急速に普及する過程にある。ITベンダー各社は、システムへの生成AI組み込みと、新ツールの市場投入を迅速に進めている。
2023年11月、Microsoftは同社のユーザーカンファレンス「Microsoft Ignite 2023」で、AI技術を活用する機能追加や新製品を発表した。その中でも、同社の会長兼CEOサティア・ナデラ氏が「1989年に発表したリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)『Microsoft SQL Server』以来で最も重要なデータ関連製品だ」と説明したのが、AI技術を活用したデータ分析ツール「Microsoft Fabric」だ。
Microsoft Fabricは、データのモデル化や分析を支援する一連の機能を備えた「SaaS」(Software as a Service)だ。Microsoft Fabricには、Microsoftの以下3つのツールが含まれる構成となっている。
Microsoft Fabricにはこれら3つのツールの他、Microsoft Fabric内のデータワークロードに自動で接続するデータレイク「OneLake」が含まれている。OneLakeはデータレイクサービス「Azure Data Lake Storage Gen2」やAmazon Web Services(AWS)のクラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)といったデータソースへのショートカット機能を備える。
MicrosoftはMicrosoft Fabricのメリットとして、「従来別々だったツールを1つにまとめ、データ管理や分析のプロセスを簡素化できる」点を挙げる。組織が扱うデータは日々増大し、複雑化している。そのため組織がデータ管理ツールを選定する際、シンプルさが重要な検討事項となる。
一般的に、組織はベンダー複数社のデータ関連ツールを組み合わせて使用する。例えば、データの取得と統合にはあるベンダーのツールを使い、ストレージや管理ツールは別のベンダー、さらにデータの分析と意思決定には他のベンダー製品を選ぶといった具合だ。このアプローチでは、企業が特定のベンダーに依存する「ベンダーロックイン」を回避できるといったメリットがある。
一方でベンダーニュートラルなアプローチには、コスト面や、開発と運用の複雑化といった問題が付き物だ。ベンダー複数社のツールを使用する場合、ベンダー1社から購入するよりコストは高くつく傾向にある。さらに開発時には、元々連携が想定されていないツールを自社でつなげる必要も生じる。
データの統合から管理、分析まで一連の機能を提供するMicrosoft Fabricを使うことで、開発や運用の負荷軽減につなげることができる。Microsoft Fabricではアプリケーション横断型のデータ共有が可能なため、冗長データや余分なデータパイプライン(さまざまなデータソースからデータを取り込むシステム)削減の他、データガバナンスやデータ同期に関する問題の軽減が期待できる。
Microsoft Fabricには、クラウドストレージAmazon S3に接続する機能があり、Microsoftがマルチベンダー構成を想定していることが分かる。調査会社Ventana Researchのアナリストであるデビッド・メニンガー氏は、「Microsoftは引き続き、同社のツールと他社ベンダーツールとの連携を強めるべきだ」と話し、サードパーティー製のデータソースをどこまで受け入れるかにも注視していると続けた。
次回は、Microsoft Fabricに搭載する生成AIツール「Copilot」や、同社のツールがデータ専門家の業務に与える影響について紹介する。
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