生成AIサービス「ChatGPT」と「Gemini」を“4つの視点”で徹底比較OpenAIとGoogleの生成AIを比較【第2回】

OpenAIの「ChatGPT」とGoogleの「Gemini」はよく似た生成AIサービスだが、明確な違いもある。4つの視点から、それぞれの特徴と違いを解説する。

2024年04月15日 08時15分 公開
[Dave RaffoTechTarget]

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 テキストや画像を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)の導入に向けて、企業は生成AIサービスの選定に乗り出している。

 代表的な生成AIサービスとして、2022年11月にOpenAIが発表したAIチャットbot「ChatGPT」や、2023年3月にGoogleが「Bard」として発表し、その後にリブランディングした汎用(はんよう)的なAIモデル「Gemini」がある。ChatGPTとGeminiは価格帯やユーザーインタフェース、想定される活用例などの点で類似している。

 一方でベースとなる大規模言語モデル(LLM)をはじめ、ChatGPTとGeminiには幾つかの明確な違いがある。両者を4つの観点から解説する。

「ChatGPT」と「Gemini」を“4つの視点”で徹底比較

1.LLM

 ChatGPTのベースとなるLLMは、無償版は「GPT-3.5」、有償版は「GPT-4」となっている。

 GeminiのLLMには、サイズに応じた3つのバージョンがある。

  • Gemini Pro
    • 幅広いタスクに適用可能。AIチャットbot「Gemini」で利用できる。
  • Gemini Ultra
    • Geminiの中で最もパフォーマンスが高く、複雑なタスクを処理できる。
  • Gemini Nano
    • モバイルデバイス向け。Googleのスマートフォン「Pixel 8 Pro」で利用できる。

 Googleが2024年2月に発表した生成AIサービス「Gemini Advanced」は、LLMに「Gemini Ultra 1.0」を採用。Gemini Proと比べて、回答速度や推論性能などにおいて優れているという。

2.学習データ

 GPT-3.5は2021年9月までの情報を、GPT-4は2023年4月までの情報をトレーニングに使用している。対するGeminiは、事前学習データに加えて、インターネットからリアルタイムで取得したデータを組み合わせて使用する。

 ChatGPTのLLMのGPT-4は、およそ1兆5000億のパラメーターと13兆のトークン(テキストデータを処理する際の基本的な単位で、一般的には4文字程度)からなる学習データセットを持つ。Gemini Ultraは、1兆6000億のパラメーターと1兆5600億語の学習データセットを備える。

 一般的には、パラメーター数が多いほど学習能力や理解能力が高くなると考えられているが、パラメーター数の増減は性能の差には必ずしも直結しない。

3.ユーザーエクスペリエンス(UX)

 ChatGPTのユーザーは、任意のメールアドレスでChatGPTのアカウントを作成できる。チャット履歴は左側のサイドバーに一覧表示される。GPT-3.5はマルチモーダルではないため、プロンプトや回答に画像や動画、URLなどを含めることができない。インターネット検索機能もない。

 OpenAIは開発者向けにChatGPTのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を公開している。これにより、独自のアプリケーションからChatGPTを利用可能だ。同社はMicrosoftと緊密なパートナーシップを結んでおり、Microsoftのオフィススイート「Microsoft 365」からChatGPTを利用することもできる。

 Geminiはバージョンに関わらず、利用にはGoogleアカウントが必要だ。ユーザーインタフェースとしては、ユーザーが回答を気に入ったかそうでないかをボタンで評価できる機能があるのが特徴的だ。「共有とエクスポート」ボタンを押せば、文書作成ツール「Google ドキュメント」やメールサービス「Gmail」へのエクスポートが可能だ。「回答案を表示」で別の回答案を表示できる他、「回答を再確認」ボタンを押せば事実確認をしてくれる。プロンプト(情報生成のための質問や指示)で画像を扱えるが、画像の生成機能は2024年3月時点では使用できない。

 2024年3月時点で、Gemini Ultra 1.0にはAPIが存在しない。Googleは今後、オンラインストレージサービス「Google One AI Premium Plan」の一部として、GeminiをGoogle ドキュメントやGmailなど各アプリケーションと統合する計画だ。

4.データのプライバシー

 ChatGPTは入力されたプロンプトを全てアーカイブする。履歴は削除できるが、OpenAIがAIモデルの学習やサービス改善を目的に使用する可能性がある。そのため、プロンプトに個人情報や機密情報が含まれる場合、情報漏えいやプライバシーの懸念が生じる。チャット履歴を学習データとして使われたくない場合は、サイドバー下のアカウントボタンから「Settings」をクリックし、「Data controls」の「Chat history & training」をオフにする。

 OpenAIのプライバシーポリシーによると、同社はアカウント作成時に入力した個人情報を収集する。具体的には氏名、連絡先、クレジットカード、取引履歴などが含まれる。これらの個人情報は、ベンダーやサービスプロバイダーの他、法執行機関に開示される可能性がある。他にも同社は、ユーザーの位置情報や、ネットワーク行動履歴、メールアドレスや電話番号などの連絡先情報、デバイス情報を収集すると明らかにしている。

 一方のGoogleも、Geminiとのチャット、ユーザーの位置情報、フィードバック、利用情報を収集し、同社のサービス改善や技術開発に使用すると明らかにしている。ユーザーの同意があれば第三者と情報を共有する他、必要であれば法執行機関に情報を提供するという。

 Geminiは、ユーザーのGoogleアカウントに18カ月間分の履歴を保存する。保存期間は3カ月もしくは36カ月に変更することも可能だ。履歴を削除したい場合は「Google マイ アクティビティ」から削除するか、Geminiの「Gemini Apps activity」から「Turn off and delete activity」を選択する。もしくは、Googleアカウント自体を削除することで情報を削除できる。


 次回は、専門家によるChatGPTとGeminiそれぞれの評価を比較する。

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