生成AIの利用が急速に広がっていることを受けて、AI技術に関する政策や規制の整備が世界各国で進んでいる。欧米をはじめとする主要各国のAI技術に対する向き合い方とは。
画像やテキストを生成する人工知能(AI)技術「生成AI」の急速な発展に伴い、さまざまなリスクが生じている。これを受けて各国政府は、AI技術の利用に規制を設けて市民の安全を守ることと、AI技術の発展とのバランスを取ることを模索している最中だ。
企業はAI規制がビジネスに与える影響を理解し、規制順守に向けて準備を進める必要がある。本稿は、米国や欧州をはじめとする主要国のAI政策や規制の動向をまとめて紹介する。
連邦政府はAIリスクの評価を重視している。特に米国の議員は、アルゴリズムの作成や、回答を出力する過程(プロセス)に関心を寄せている。AIシステムがブラックボックス化すると、プロセスを可視化したり、AIによる市民への影響を文書化したりすることが難しくなる。
ブラックボックス化の対策として、「アルゴリズム説明責任法」(Algorithmic Accountability Act)が議会で審議されている。この法案が成立すれば、医療や教育、雇用など市民の生活に関わる重要な決定に生成AIを使用する場合、その影響を使用前後で評価することが義務付けられる。他にも連邦政府は、以下のような法案について審議している。
米国連邦政府が見せる動きの中で特に注視すべきは、2023年10月にバイデン政権が発表した、「安全で信頼できるAIの開発と使用に関する大統領令」(Executive Order on the Safe,Secure,and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence)だ。この大統領令は「責任あるAI」(AI技術の利用や開発において公平性や透明性、安全性の確保を考慮すること)促進を目的としたもので、以下の8つの目標を定めている。
連邦政府だけでなく、州や市も同様にイノベーションを奨励しつつ、AIリスクから市民を守る取り組みを進めている。コロラド州は、生命保険会社がAIアルゴリズムを使用する際に、厳しい規制を課す法律「アルゴリズムと予測モデルのガバナンス規制」(Algorithm and Predictive Model Governance Regulation)を提案している。
地方自治体も独自のAI条例を推進しており、例えばニューヨーク市は2023年7月、地方法144号を執行開始している。この法律は、採用活動におけるAIツールの利用を規制するものだ。今後、他の米国都市もこの動きに追従する可能性がある。
欧州におけるAIガバナンスの主要な枠組みとして、欧州連合(EU)が2024年5月に採択した「AI法案」(Artificial Intelligence Act)が挙げられる。その主な目的は、AIリスクに応じてシステムを規制するもので、AI規制の世界標準としての立ち位置を目指している。
AI法案は2026年中に適用を開始する計画で、EUに加盟する27カ国全てに適用される見込みだ。注視したいのは、AI法案が「ブリュッセル効果」を生み出す可能性があることだ。ブリュッセル効果とはEUの規制がEU域外の国や企業に影響を与え、それらの国や企業がEUの規制を自主的に順守する現象を指す。
国家インターネット情報弁公室(CAC)は2023年7月、生成AIを対象とした規制「生成人工知能サービス管理暫行弁法」を公布している。生成AIを重要な産業分野として認識すると同時に、その発展を規律あるものにすることが動弁法の目的だ。
カナダ議会は「AI・データ法案」(Artificial Intelligence and Data Act)を審議している。この法案は、AIシステムの設計や開発、使用において、カナダ全土に適用できる共通の要件を定めるものだ。特にAIリスクの軽減と透明性確保に重点を置いている。
南北アメリカとアジアなどの国々でも、AIリスク管理を目的とした独自規制の取り組みが出てきている。
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