VPNは時代遅れ? 「Microsoft Entra」で描くこれからのID管理「Microsoft Entra」を解剖【後編】

MicrosoftのIDおよびアクセス管理サービス群「Microsoft Entra」は、クラウドサービスのID管理に活用できるさまざまな機能を提供する。外部パートナーとのID連携やネットワークセキュリティにどう役立つのか。

2024年11月05日 08時00分 公開
[Brien PoseyTechTarget]

 クラウドサービスの普及、顧客や取引先との連携といった要因を受けて、従来の境界型セキュリティが十分に機能しなくなりつつある。VPN(仮想プライベートネットワーク)に代表される従来型のネットワークセキュリティにも限界が見えてきた。Microsoftはこれらの課題に対処するために、IDおよびアクセス管理サービス群「Microsoft Entra」を提供している。Microsoft Entraは、現代に必要な新しいセキュリティ対策をどのように実現するのか。

「Microsoft Entra」で描くこれからのID管理とは?

Microsoft Entra External IDとは?

 「Microsoft Entra External ID」(旧「Azure Active Directory External Identities」)は、カスタマーIDおよびアクセス管理(CIAM)ツールだ。外部パートナーやゲストユーザーが、自社のIDを使用してMicrosoftアプリケーションにサインインする機能を提供する。ID開発者向けのセキュアなアプリケーション開発ツールや、「Googleアカウント」などの外部サービスIDを利用したサインイン機能も利用可能だ。

 CIAMツールとしてMicrosoftは「Azure Active Directory B2C」も提供しているが、Microsoft Entra External IDとは別個に存在し続けることを同社は説明している。

Global Secure Accessとは?

 「Global Secure Access」は、ネットワークセキュリティサービス「Microsoft Entra Private Access」「Microsoft Entra Internet Access」から構成されるSSE(セキュリティアクセスサービスエッジ)だ。SSEは、クラウドベースのネットワークセキュリティ機能を集約したサービスだ。Global Secure Accessでは、エンドユーザーやデバイスを信頼できないものとして扱う「ゼロトラストセキュリティ」の考えに基づき、アクセス要求のたびにIDを検証する。MicrosoftはGlobal Secure Accessについて、「セキュリティ侵害が発生すると機能が制限される、従来のVPNやファイアウォールに比べて改善された」と説明する。

 Microsoft Entra Private Accessは、ポリシーに基づいてアクセスを動的に許可するZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)であり、エンドユーザーの社内アプリケーションやシステムへのアクセスを保護する。ZTNAはVPNを代替し得るもので、細かいアクセス制御や動的なリスク評価が可能といったメリットがある。「macOS」「Linux」といったクライアントOS向けのVPNクライアントアプリケーションが利用できない企業では、Microsoft Entra Private Accessが役立つ可能性がある。

 Microsoft Entra Internet Accessは、悪意のあるトラフィックからシステムを保護するSWG(セキュアWebゲートウェイ)だ。サブスクリプション形式のオフィススイート「Microsoft 365」などのサービスやプライベートアプリケーションへのセキュアなアクセスを提供する。

ライセンス料金は?

 Microsoft Entraはツール群のスイート形式で、使用するツールごとにライセンス契約が必要だ。ツール群の基盤技術となるのが、クラウドサービスのID・アクセス管理システム「Microsoft Entra ID」だ。

 無償版ライセンス「Microsoft Entra ID Free」は、Microsoft 365やクラウドサービス群「Microsoft Azure」などMicrosoftのクラウドサービスのサブスクリプションに含まれる。有償版ライセンスの1ユーザー当たりの月額料金は、2024年10月時点で「Microsoft Entra ID P1」(旧「Azure Active Directory Premium P1」)が899円、「Microsoft Entra ID P2」(旧「Azure Active Directory P2」)が1349円だ。

 デジタルIDの管理と検証を実行するための「Microsoft Entra Verified ID」は、無償版を含む全てのサブスクリプションモデルで利用できる。「Microsoft Entra ID Governance」は、Microsoft Entra ID P1サブスクリプションライセンス契約者向けのアドオンとして、1ユーザー当たり月額7ドルで提供されている。Microsoft Entra ID P2のアドオン料金は公開されていない。Microsoft Entra Permissions Managementは、使用するクラウドリソースごとに月額10.4ドルで提供される。Microsoft Entra Workload IDには無償版があり、Microsoft Azureなどの商用クラウドサービスのサブスクリプションに含まれる。有償版「Microsoft Entra Workload ID Premium」は、1ワークロードID当たり月額3ドルだ。

最新情報はどこで入手できる?

 Microsoft Entraに関する最新情報は、ポータルサイトや製品情報ページなどの公式Webサイトで入手できる。MicrosoftのID管理チームが運営するコミュニティープロジェクト「idPowerToys」のWebサイトは、Microsoft Entraサービス群の関連サービスを視覚的に表現したマインドマップを掲載している。

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