「仮想CISO」や「AIエージェント」が話題に 2025年のセキュリティ動向2025年のセキュリティトレンド10選【後編】

攻撃手法の巧妙化やセキュリティ人材不足の深刻化など、セキュリティ分野では依然としてさまざまな課題がある。2025年はどのような問題に向き合うことになるのか。セキュリティトレンドを解説する。

2025年02月12日 05時00分 公開
[Kyle JohnsonTechTarget]

 巧妙化するサイバー攻撃からシステムを守るには、まずは攻撃手法や防御技術の最新動向を知ることが重要だ。2025年、セキュリティ分野では何が起きるのか。セキュリティトレンド10選のうち、本稿はその後半として5つのトレンドを紹介する。

6.持続的標的型脅威への備え

 攻撃者は必ずしも短期的な成果を求めているわけではない。長期間にわたって標的システムに居残り、攻撃の領域を拡大するケースもある。例えば、中国政府が支援しているとみられるサイバー犯罪集団「Volt Typhoon」は、少なくとも5年間、入り込んだシステムへのアクセスを維持していたことが明らかになっている。

 セキュリティベンダーTitaniaでシニアバイスプレジデント(マーケットストラテジーとデベロップメント部門)を務めるフィル・ルイス氏によると、Volt Typhoonのような「持続的標的型脅威」(APT:Advanced Persistent Threat)には2025年にも注意する必要がある。APTは検出や対処が難しいため、ユーザー組織は「予防」よりも「サイバーレジリエンス」(回復力)を重視することが大切だという。「APTによる被害を最小限に抑えるためには、マイクロセグメンテーション(ネットワークを複数のセグメントに分割する技術)の手法が有効になる」(ルイス氏)

7.オープンソースソフトウェアを狙った攻撃の増加

 近年、オープンソースソフトウェア(OSS)への攻撃が広がっている。セキュリティベンダーのSonatypeは2023年11月以降、OSSを対象とした新しいマルウェアを50万個以上発見しているという。OSSセキュリティ団体Open Source Security Foundation(OpenSSF)は、2025年もOSSへの攻撃が増加すると予測する。

 OpenSSFチーフセキュリティアーキテクトのクリストファー・ロビンソン氏は、「OSSを使ったアプリケーション開発者がセキュリティのトレーニングを十分に受けていない場合がある」と指摘する。その結果、アプリケーション開発の過程で不正コードが挿入されるといった攻撃を受け、安全ではないアプリケーションを作ってしまうリスクがあると同氏は懸念を示す。

 ロビンソン氏はOSSの安全利用を高めるために、ソフトウェア部品表「SBOM」(Software Bill of Materials)を使うことに加え、ソースコード分析や脆弱(ぜいじゃく)性スキャン、動作テストといった対策を推奨する。ユーザー組織がOSSを利用するに当たっては、攻撃リスクだけではなく、欧州連合(EU)などによるさまざまな法規制にも対応しなければならない。

8.クラウドサービスの可視性

 近年、クラウドサービスの利用が広がっている。セキュリティベンダーDirectDefense最高技術責任者(CTO)のジム・ブルーム氏は、複数のクラウドサービスを組み合わせた「マルチクラウド」の環境において可視性が重要だと説明する。「ユーザー組織は2025年、クラウドサービスでどのようなデータを扱い、それにはどのようなリスクが伴うのか明確に把握し、対策を講じる必要がある」(同氏)

 ブルーム氏は、クラウドサービスで扱うデータを保護するための有効な対策として、「CSPM」(Cloud Security Posture Management)ツールの利用を挙げる。CSPMとは、クラウドサービスの構成と設定が正しいかどうかのチェックに加え、脆弱性を特定するための機能も備える。CSPMツールを利用することでクラウドサービスのセキュリティリスクを可視性できる。

9.「vCISO」が登場

 2025年はCISO(最高情報セキュリティ責任者)の業務負荷を減らすために、外部の「仮想CISO」(virtual CISO:vCISO)に頼る動きが広がると予測される。コンサルティング会社の力を借りて、CISOに外部委託の専門家を付けるといった具合だ。

 CISOがいない組織においてもvCISOの利用増が見込まれる。セキュリティベンダーBlack Kiteシニアバイスプレジデントのジェフリー・ウィートマン氏は、インシデントが発生した場合にCISOがその全ての責任を引き受けなければならない点を指摘する。それがCISOを目指す人が多くない背景にあるという。vCISOを付ければ、自社にCISOがいなくてもセキュリティの管理体制を強化できる。

10.AIエージェントを狙った攻撃の増加

 AIエージェントとは人工知能(AI)技術を取り入れたソフトウェア機能で、自律的に意思決定をしたり、アクションを起こしたりする。AIエージェントは例えば、チャットbotとして顧客や従業員の質問に回答する。業務管理や調査、分析といった作業もできる。セキュリティベンダーDataminrバイスプレジデント(プロダクトマネージメント部門)のシモン・モディ氏は、「AIエージェントの導入が広がるにつれ、これを標的にした攻撃も増える」と予測する。

 AIエージェントを狙った攻撃の手口として「プロンプトインジェクション」がある。攻撃者が悪意のあるプロンプト(AIツールへの指示や命令)を入力してユーザーをだましたり、データを盗んだりする手法だ。モディ氏によると、2025年はAIエージェントを標的にした攻撃により、パスワードや機密情報の流出が増える可能性がある。

 モディ氏は、組織がAIエージェントを保護するためには、従来のセキュリティの原則をAIセキュリティにも適応させる必要があると説明する。例えば、AIエージェントの脆弱性評価やペネトレーション(侵入)テストを実施する他、AIエージェントがアクセスできるデータや実行可能なタスクを制限することが有効だ。

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