自律的にタスクを遂行する「AIエージェント」への期待が高まっている。一方で、高額な投資に見合う成果を得られずに悩む企業が後を絶たない。導入を成功させるために検討しておくべきこととは。
人工知能(AI)モデルが自律的に意思決定して行動する「AIエージェント」が台頭する中、AIエージェントを活用する企業には疑問が山積みだ。ROI(投資対効果)の測定方法は確立されておらず、AIエージェントへの投資が、従業員の働き方をどう変えるのかが明確だとは言い難い。AIエージェントの導入に先立ち、企業が考慮すべき5つの項目を紹介する。
予測と生成の能力を併せ持ち、複数のシステムを横断して意思決定し、自律的にタスクを遂行するのがAIエージェントだ。その導入を考えたときに避けて通れない問題として、費用や人材などのコストがある。サブスクリプション料金や導入費だけではなく、AIエージェントを運用し続けるための運用費についても考える必要がある。
クラウドコンピューティングやAI技術を用いて業務を自動化する「インテリジェントオートメーション」を超え、AIモデル自身が目標達成のために自律的に思考、行動するシステムを実現するには、膨大なデータを常に取得、処理、分析し続ける必要がある。それに伴って、必要な計算能力やストレージの容量、ネットワークの帯域幅(データ伝送速度)も増加し続ける。こうしたインフラ増大のための費用を潤沢に持つ企業ばかりではない。
AIエージェントを監視するための人材も必要になる。AIエージェントが自律的に動くからといって、手離しで見守ることはできない。AIエージェントに不審な挙動があった場合に、監視、調整、介入するための人材は必要だ。このような人材は新たな形態のインフラであり、費用が発生する。それにもかかわらず、ほとんどの企業はその人材に必要な費用を見誤っている。
だからこそ、AIエージェントへの投資が有効に使われているのかを常に検証することが必要だ。まずは、AIエージェントとその運用に必要なシステムや人材に十分な予算を配分する必要がある。少なくとも、想定している予算では不十分な場合がある可能性を認識しておこう。隠れたコストが後から表面化する恐れがあるからだ。
AIエージェントは、倫理的問題をはらんでいる可能性がある。AIエージェントが偏った判断を下した場合、誰がその責任を負うのかを明確化することも重要だ。責任を明確にしないまま使い続けることは、時限爆弾のような危険性を秘めている。
本番環境でAIエージェントを運用する前に、適切な倫理的枠組み、ガバナンスポリシー、監査証跡を整備する。これはコンプライアンスの順守だけでなく、信頼を築くための取り組みだ。AI技術が普及する時代において、企業の関係者に信頼性を示すことは欠かせない。
「Garbage In, Garbage Out」(ごみを入れたら、ごみが出てくる)という言葉がある。これはコンピュータサイエンスにおける格言の一つで、入力したデータの品質が悪ければ、出力されるデータの品質も悪くなるという原則を指す。AIエージェントも例外ではない。AIエージェントの出力は、学習データや意思決定に用いるデータの質に大きく依存するためだ。事実、一部の企業は、分析における最重要課題としてデータの品質を挙げている。
品質の悪いデータをAIエージェントに与えると、その洞察や判断が偏向していたり、不正確だったり、危険なものになったりする可能性が高まる恐れもある。
そのような事態を避けるためには、データクレンジング(データの重複やエラーを修正すること)や検証、ガバナンスを強化する必要がある。AIエージェントがバイアス(偏見)を強化したり、誤情報を作り出したりしないようにするための対策も必要だ。こうした問題への完全な解決策は、現状確立されているとは言い難い。
AIエージェントは、データアナリストの役割を根本から変える可能性がある。データアナリストは単に数値を処理したり、ダッシュボードを作成したりするだけではなく、AIエージェントの設計、訓練、管理を担うことになる。
現代のデータアナリストには、従来の批判的思考力に加え、AI技術に関するリテラシー、AIエージェントの設計、倫理的思考といった新たな知識やスキルが求められている。一方、そのような人材を今すぐ確保することは困難だ。企業は、AIエージェントを使いこなすことができる人材を引き付け、確保するために、採用戦略を抜本的に見直す必要がある。
経営層は、部門ごとにデータが断片化したりサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)したりする状態を解消すべきだと訴えてきた。AIエージェントは、この課題を解決できる可能性を秘めている。企業のデータを一元化して可視化できるようになれば、部門内の業務を自動化するだけではなく、部門を超えた連携を実現できる見込みがある。
しかし、そのためには従来型の考え方を改める必要がある。自部門でデータを囲い込むのではなく、部門横断でデータを共有し、連携を重視する文化を醸成する。この取り組みが進行すれば、AIエージェントは、技術部門と事業部門を効果的に結び付けられるようになる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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