LLMベンチマークの全体像を知る【後編】
今すぐLLMを比較したい 性能が一目で分かる「リーダーボード」はどれ?
LLMの性能をまとめて評価したい場合に有用なのが、リーダーボードだ。さまざまなLLMの性能を評価した情報が公開されている。LLM選びの参考にできる、主要なリーダーボードを紹介する。
大規模言語モデル(LLM)の性能は日々更新され、さまざまなベンチマークが存在する。そのため、ベンチマークテストの実行やツールの比較は簡単ではない。本稿は、ベンチマークやLLMを比較検討するためのリーダーボード(ランキング表)を掲載しているWebサイトを紹介する。
LLMの「リーダーボード」はこれだ
併せて読みたいお薦め記事
連載:LLMベンチマークの全体像を知る
LLMを詳しく知る
LLMやベンチマークの情報を収集するのであれば、AI(人工知能)モデルやデータセットの共有・公開サービス「Hugging Face」を訪れるのは一つの手だ。Hugging Faceは、エンドユーザーがLLMの性能をランキング形式で掲載するリーダーボードを提供している。注目すべきリーダーボードには以下がある。
- Big Benchmarks Collection
- Chatbot Arena LLM Leaderboard
- OpenVLM Leaderboard
- GAIA Leaderboard
ベンチマークを選定するに当たっては利用料がどの程度発生するかも考慮に入れる必要がある。オープンソースソフトウェア(OSS)であれば、ソースコードが公開されており、無料または安価な費用で利用できる。エンドユーザーの手元にある端末で実行可能だ。一方、ソースコードが公開されていないクローズドソースソフトウェアはその性能やセキュリティといった要素の評価が難しい上、利用料も発生する。
Hugging Face以外でベンチマークの評価、測定値といった情報を入手したい場合、以下の情報が役に立つ。
- AIアプリケーション開発ツールVellumのWebサイトが提供する「LLM Leaderboard」
- 2024年4月以降に公開された、主要なLLMベンチマークの最新版の性能をリーダーボードで評価している。Vocifyが運営している。
- 「SWE-bench」のWebサイト
- SWE-benchは、ソースコード管理ツールGitHubに存在するIssue(課題)から作られたデータセットを基にしたベンチマークだ。Issueを自動的に解決するLLMの能力を測定する。SWE-benchのWebサイトでは、リーダーボードでLLMの問題解決率を掲載している。
- Berkeley Function-Calling Leaderboard
- LLMが、サードパーティーツールをどれだけ正確に選び、結果を解釈できているか、能力を測定し、評価を掲載している。
- 「LiveBench」のWebサイト
- LiveBenchは、推論、データ分析、数学、コーディング、言語理解、指示への追従の6つの分野、17のタスクで構成されるベンチマークだ。LLMの推論や問題の処理能力、簡単なコーディングタスクの性能を測定し、リーダーボードに掲載している。
- LLMベンチマーク「Humanity's Last Exam」の紹介サイト
- AI技術の安全性に関するNPO(非営利団体)CAIS(Center for AI Safety)とAIベンダーScale AIは、ベンチマーク「Humanity's Last Exam」を提供している。同ベンチマークは、人間の高度な知識でAI技術の限界を試すことを目的に設計された。Scale AIが運営するWebサイト「scale.com」では、Humanity's Last Examを使ったLLMの性能の評価をリーダーボードに掲載している。
ベンチマークの限界は?
LLMのベンチマークには、組織が抱える特定の課題を反映できないという制約がある。代表的な例が「HumanEval」だ。HumanEvalは、プログラミング言語「Python」で記述したソースコードをどの程度実用的かつ正確に生成できるかを評価する。
HumanEvalを使えば、単純な英語のプロンプト(質問や指示)からソースコードをどの程度の精度で生成できるかを評価することは可能だ。一方、以下の要素はHumanEvalの評価対象外だ。
- 3D(3次元)画像の処理能力
- すでにあるソースコードのリファクタリング(ソースコードの動作を変えずに内部構造を整理すること)
- ソースコードの読みやすさ
- CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツールとの連携
- Python以外のプログラミング言語で記述したソースコードの生成
一般的に、ベンチマークの大半は、ツールの処理速度やレイテンシ(遅延)、システムやセキュリティといった運用面の課題は評価の対象外だ。LLMベンチマークであれば、クラウドサービス、自社のサーバあるいは端末でLLMを稼働させた場合、性能がどう異なるのかは評価できない。例としてHumanEvalは、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)で生じる画面サイズ変更時のエラー、フォントの視認性、アクセシビリティー(利用のしやすさ)といった項目は評価対象外だ。
AIモデルが自律的に意思決定して行動する「AIエージェント」についても、信頼性の高い網羅的な評価手法は存在していない。一部の専門家は、AIエージェントが自律的にソースコードをソースコード管理ツールに登録したり、データベースを更新したり、CIツールを実行して本番環境にソースコードを反映させたりするようになると期待している。一方で、AIエージェントに関するベンチマークには、2022年に公開された「MARL-eval」や2024年に公開された「Sotopia-π」があるが、信頼性の確立は途上にある。
オープンアクセスリポジトリarXiv.orgに公開されている論文
MARL-eval:Towards a Standardised Performance Evaluation Protocol for Cooperative MARL
Sotopia-π:SOTOPIA-: Interactive Learning of Socially Intelligent Language Agents
LLMは言語の翻訳、数学的な問題への回答、3D画像の形状調整、データの中にある不適切な項目の識別、事実の記憶、段落の構成など、単一のモーダル(データ形式)を処理するのが得意だ。
現行のLLMのベンチマークでは、感情的知性、人間性、誠実さといった要素の測定は難しい。そのため、どのLLMを、誰が、いつ、どの業務に使うかは、各組織が自ら判断する必要がある。多角的な評価指標を持つことで、自組織にとって適切なLLMを見極める助けになる。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
7
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI活用」を掲げた年金刷新が炎上 英政府が大手ITアウトソースを切り捨て「内製回帰」した理由
-
10
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー