Chromeのゼロデイ脆弱性「型混乱」とは? Web閲覧だけでPC乗っ取りの危険性Googleが直ちに修正を適用

GoogleのWebブラウザ「Chrome」で、すでに攻撃が確認されている深刻な脆弱性が見つった。今回の脆弱性は「型混乱」と呼ばれる。その危険性と、想定される被害とは何か。

2025年08月14日 06時00分 公開
[Alex ScroxtonTechTarget]

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 Googleは同社のWebブラウザ「Chrome」に深刻な脆弱(ぜいじゃく)性「CVE-2025-6554」が見つかったことを受け、2025年6月、緊急アップデートを配信した。CVE-2025-6554はChromeの中核を成す「JavaScript」エンジン「V8」に起因するものだ。「型混乱」と呼ばれるこの脆弱性は、どのような危険をもたらすのか。

悪質Webサイトを訪問しただけで被害に?

 CVE-2025-6554は、エンドユーザーがChromeを通じて、攻撃者が制御するWebサイトにアクセスするだけで、不正なプログラムの実行を許してしまう恐れがある。Googleのセキュリティ研究部隊Threat Analysis Group(TAG)のクレマン・ルセーニュ氏が2025年6月25日(米国時間、以下同じ)に発見した。

 米国立標準技術研究所(NIST)の「NVD」(国家脆弱性データベース)は、CVE-2025-6554の深刻度を「高」と評価する。CVE-2025-6554が悪用されれば、マルウェア感染によるシステムへの不正アクセス、機密情報の窃取といった被害が想定される。GoogleはCVE-2025-6554が実際の攻撃で悪用されていることを確認したと説明する。

 Googleは2025年6月26日に暫定的な修正として設定の変更を反映させ、同月30日にCVE-2025-6554のパッチ(修正プログラム)を含めたアップデートを配信した。エンドユーザーは、Chromeのヘルプメニューで「About Google Chrome」をクリックすれば、アップデートが適用されているかどうかを確認できる。

型混乱とは

 今回の脆弱性は型混乱(Type Confusion)と呼ばれる。型混乱は、プログラムがデータの型を誤認し、本来とは異なるデータとして処理することで発生する。誤認によって、データ破損やメモリへの不正アクセスなどの問題が生じる。例えば、プログラムが本来「数値」として扱うべきデータを「ポインタ」として処理すると、不正なメモリ領域へのアクセスにつながり得る。深刻な場合、攻撃者による任意コード実行(標的システムで任意のプログラムや命令を実行すること)も可能にする。

 型混乱は、ChromeやV8の開発で用いられる「C++」など、メモリ管理の安全性が開発者に委ねられているプログラミング言語で発生しやすい。ただし、「PHP」や「Perl」などメモリ管理を自動で実行するプログラミング言語でも確認されている。型混乱は、Chromeや「Mozilla Firefox」「Safari」などWebブラウザの他、PDFリーダーやJavaScriptエンジン、OSのコンポーネント(部品や機能)でも発生し得る。

 開発者は以下の方法で型混乱の脆弱性の発生リスクを軽減させることが可能だ。

  • プログラムのコンパイル(実行ファイルへの変換)時や実行時の型チェックを徹底する
  • メモリ安全性に優れたプログラミング言語を使用する
  • 型キャスト(データ型の変換)を実施する箇所に注目したソースコードレビューを実施する
  • 静的解析ツールなどのセキュリティツールで脆弱性を事前に検出する

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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