医療業界は比較的高いセキュリティ評価を得ている一方で、依然としてサプライチェーンを狙う攻撃やランサムウェアなどの深刻なリスクにさらされています。その実態と、必要な対策を解説します。
医療組織に対するサイバー攻撃やデータ侵害は、金銭的損失や評判の低下にとどまらず、患者の生命に直接的な影響を与えるリスクがあります。医療分野におけるリスク管理を強化し、患者の安全と健康を最優先にするためには、最新のサイバー脅威を把握し、効果的な対策を講じることが不可欠です。
本記事では、
について解説します。
米国の大手ヘルスケア企業500社を対象に、セキュリティ評価サービスを提供するSecurityScorecardが実施した調査によると、2024年上半期における医療業界全体のセキュリティレーティング(セキュリティ態勢を客観的に評価する指標)は「B+」でした(最高ランクは「A」で100点満点)。比較的高い評価を得ている一方で、サプライチェーン(部品やサービスの供給網)を狙ったサイバーリスクが依然として大きな課題となっています。
医療業界のセキュリティ評価に関する調査結果の要点は、以下の通りです。
2024年2月12日、ヘルスケア企業UnitedHealth Groupの中核的な請求処理部門であり、米国の医療請求処理の大手企業であるChange Healthcareがランサムウェア攻撃を受け、一部の病院は1日当たり数百万ドルの損害を被りました。このサイバー攻撃は、米国の医療業界全体の業務の継続性や財務の安定性を大きく揺るがし、甚大な影響を及ぼしました。
Change Healthcareは犯罪グループ「BlackCat」(ALPHV)が実行したランサムウェア攻撃を受け、100個を超えるシステムの接続を切断せざるを得なくなり、医療請求処理プロセスは完全に停止、多くの医療提供者が廃業の危機に瀕しました。その後、約2200万ドル(350ビットコイン)の身代金を支払ったと発表しています。
BlackCatは、2021年11月に登場したRaaS(サービスとしてのランサムウェア)グループで、ランサムウェア「DarkSide」の後継として知られています。過去には、石油パイプライン運営会社Colonial Pipelineへの攻撃に関与したBlackMatterの後継と見なされていたこともあります。高度な攻撃手法を用い、米国の企業や機関を標的にしています。
Change Healthcareがランサムウェア攻撃を受けたことで、企業のセキュリティ担当役員はサプライヤーの監視とセキュリティ対策を強化する取り組みを余儀なくされています。医療サービスの継続のためにどのような対策が必要なのでしょうか。
上述の調査結果でも明らかになっているように、医療業界は機密性の高い膨大な量の患者データを保有しているため、攻撃者にとって魅力的なターゲットになりやすいのです。デジタル技術の普及により、そのリスクは増大しています。患者のプライバシーを保護し、業務の完全性を確保するには、強固なセキュリティ対策とコンプライアンス(法令順守)の徹底が不可欠です。
効果的なセキュリティリスク管理プログラムを導入することで、組織はコンプライアンス対応を強化し、ネットワークの安全性を向上させることが可能です。医療ITにおけるコンプライアンスとセキュリティを維持するための重要な戦略は次の通りです。
さらに、患者ケアのために電子医療記録(EHR)やインターネットに接続された医療機器を活用する施設が増え、病院や診療所などの医療機関は高度なテクノロジーにますます依存するようになっています。その結果として、効果的に医療リスクを管理するためのセキュリティの重要性がこれまで以上に高まっています。今日の医療機関がリスク管理システムを構築する際に考慮すべき重要な点を詳しく見ていきましょう。
医療業界は、デジタル技術の台頭や患者データのプライバシーに関する懸念の高まりにより、急速に変わりつつあります。医療リスク管理は必要不可欠となっています。医療におけるリスク管理の 3 つの重要な対策をご紹介します。
サイバーリスクは、今後も進化し続ける脅威です。医療機関はリスク管理を継続的に見直し、適応し続ける必要があります。次回は、医療データのリスク管理と未来、そして健全な医療システムを構築するための方法について解説し、持続可能なセキュリティ対策の方向性を探ります。
1996年に日本電信電話に入社し、東日本電信電話、NTTコミュニケーションズで法人営業に従事。 製造業、サービス業、金融業等の大手日本企業や外資企業を担当し、ネットワークサービスのみならずさまざまなセキュリティサービスを提供。 2017年にファイア・アイに入社、パートナー営業部長として主に大手通信事業者とのパートナービジネスの拡大に貢献。 2020年7月1日にSecurityScorecardに入社し、2021年6月24日より現職。1971年長崎県長崎市生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業
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