競合他社の大手IT企業が派手なAI関連の発表を続ける中、沈黙が目立つApple。だがそれは「周回遅れ」ではなく、次の一手への布石だと指摘する専門家がいる。同社の戦略は今後のAI市場をひっくり返せるのか。
AI(人工知能)技術、特に画像やテキストを自動生成する「生成AI」の開発競争において、Appleの「周回遅れ」を指摘する声は大きい。鳴り物入りで発表されたAI機能群「Apple Intelligence」は期待外れとの意見が相次ぎ、デジタルアシスタント「Siri」の強化も延期になった。
こうした見方に対して、一部のアナリストはAppleの沈黙や遅れを「敗北」ではなく、将来の逆転劇に向けた壮大な「布石」だと分析する。
AppleがAI分野で本当に「出遅れている」のかどうかについては、見方が分かれている。同社はApple Intelligenceの機能として以下を公開済みだ。
調査会社The Futurum Groupのアナリストであるデービッド・ニコルソン氏は、「話題性や情報発信の面でAppleが遅れているのは確かだ」と述べる。一方で、Appleが長期的に提供する「エンドユーザーの全情報を安全に連携させた、真にパーソナライズされたAI体験」の価値を考慮すれば、「1〜2年後には現在の発表ペースの遅さは問題にならなくなる」とも推測する。
Appleが消費者向けデバイス市場で圧倒的な地位を築いている理由は、「iPhone」「Mac」「iPad」「Apple Watch」といった製品群全体で、エンドユーザーの写真、カレンダー、メールなどの個人的なデータを囲い込んでいるからだ。このエコシステムによって、エンドユーザーは他社製品へ乗り換えにくくなり、Appleの支配的な地位が確立されている。
「自律的にタスクを遂行する『AIエージェント』や生成AIをエンドユーザーに提供するために、Appleはこれらの膨大な個人データを安全に管理しなければならない」とニコルソン氏は指摘する。その上で同氏は、Appleが“真の勝者”になるのは、「複数の企業買収を通じて、デバイスの裏側で個人データとAI技術をうまく組み合わせる方法を見いだした時」だとみる。
ニコルソン氏は、企業買収は「Appleの常とう手段」だと補足する。メディアプレーヤーおよび音楽配信サービス「iTunes」や「Siri」も、元はAppleが買収によって手に入れ、自社のサービスに組み入れたものだ。
Appleの最大の目標はSiriの性能を向上させることであり、その実現にはPerplexity AIやAnthropic、OpenAIといったAIベンダーの技術を活用する可能性がある。「Appleの最終的な目標は、われわれが普段、生成AIを使って実現する機能を、Siriが実行できるようになることだ」とニコルソン氏は語る。
「そう遠くない未来、『ヘイ、Siri』と呼び掛けるだけで、Siriがエンドユーザーに代わり、エージェントとしてさまざまなタスクを実行するようになるだろう」とニコルソン氏は続ける。強固なセキュリティ対策が施されたApple製デバイスの中で、エンドユーザーのあらゆる情報を参照し、世界中のApple製品ユーザーにとって効果的に機能するエージェントAIになるはずだと同氏は考える。このような安全性を支えているのが、エンドユーザーのデータを自社製品やサービスの中にとどめるという同社の戦略だ。
生成AIを自社のサービスに統合する点で後れを取っているのはAppleだけではない。Amazon.comのデジタルアシスタント「Alexa」も、生成AIの活用という点ではまだ発展の余地がある。ただしAmazon.comは2025年2月、Alexaの大幅なアップデートを実施し、要約作成や予約、カレンダー管理、メールの送受信といった機能を追加した。
「人々が他の大規模言語モデル(LLM)に期待するような、『真のデジタルアシスタント』としてSiriを機能させるために、Appleはまずインフラを整備する必要がある」とニコルソン氏は語る。
「Appleに対する『良い結果を出すべきだ』というプレッシャーは非常に大きい。だが時間がたてば、現在の生成AIにおける開発ペースの遅れは重要ではなかったと見なされるようになる可能性がある」(ニコルソン氏)
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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