なぜ自前主義のAppleが「OpenAIとの提携」に踏み切ったのかOpenAIとApple提携の影響【第1回】

Appleは独自のAIシステム「Apple Intelligence」を発表すると同時に、OpenAIとの提携を発表した。自前での開発にこだわってきたAppleは、なぜOpenAIと手を組むことにしたのか。

2024年09月07日 08時00分 公開
[Sean Michael KernerTechTarget]

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 Appleは2024年6月に開催した年次カンファレンス「Worldwide Developers Conference 2024」で、独自の人工知能(AI)システム「Apple Intelligence」を発表した。Apple Intelligenceは年内に同社のOSに実装され、Appleが開発したさまざまなAIモデルを使用できるようになる見込みだ。 Apple Intelligenceの提供に当たり、AppleはAIベンダーOpenAIとの提携も明らかにした。自前での開発にこだわってきたAppleがOpenAIと提携した理由は何なのか。

なぜAppleはOpenAIと提携するのか?

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 2010年以来、Appleは音声アシスタント「Siri」を同社のデバイスに搭載し、自然言語処理機能を提供してきたが、テキストや画像を生成するAI技術「生成AI」を同社のOSに搭載したのは今回が初めてとなる。従来Appleは、生成AIサービスの開発や提供において、GoogleやMicrosoftなどのライバル企業に後れを取っていた。

 このような状況の中、AppleがOpenAIとの提携に踏み切ったのはなぜなのか。以下のような理由が考えられる。

  • OpenAIが生成AI市場をけん引する存在であるため
    • OpenAIは、生成AI市場のにおける主要ベンダーの一社だ。同社のAIチャットbot「ChatGPT」は、Appleユーザーを含めて広く認知されている。
  • 投資家に理解しやすいストーリーを示すため
    • OpenAIとの提携を通して、AppleはAI分野での存在感をアピールできる。特に投資家に対して、AppleがAIトレンドに後れを取らず、競争力を維持していることを示すことができる。
  • エンドユーザーに最先端のAI機能を提供できるため
    • OpenAIとの連携を通して、Apple単独では実現が難しい高度な生成AI機能をエンドユーザーに提供できる。
  • Siriの機能を補完できるため
    • Siriがクエリに対する回答を作成する際、追加支援が必要になった場合にChatGPTが使われる。これによって、Siriが対処できるタスクや質問の範囲が広がる。
  • より広範な知識を提供するため
    • Apple Intelligenceは、ユーザーデータを活用するパーソナルアシスタントとしての用途に特化している。一方でChatGPTは、歴史や時事問題、一般知識など、より幅広い情報を提供する。
  • ユーザープライバシーとAI技術を両立させるため
    • Appleのプライバシー保護機能を活用しつつ、エンドユーザーに最先端の生成AI機能を提供できる。
  • Appleが競争上の優位性を確保するため
    • AppleのデバイスにChatGPTを組み込むことで、Appleは競合他社との差別化を図り、より多くのエンドユーザーを同社のエコシステムに引き込むことができる。
  • AppleとOpenAIの両社にメリットがあるため
    • Appleは先進的なAI技術をユーザーに提供できる。OpenAIはAppleユーザーにChatGPTを使ってもらうことができる。

 Apple Intelligenceでは、ChatGPTがOS「iOS 18」「iPadOS 18」「macOS Sequoia」で利用可能になる見込みだ。


 次回は、Apple IntelligenceとChatGPTとの違いを解説する。

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