結局「Copilot+ PC」で何ができる? Microsoftの“新AI PC”向け機能群「Copilot+ PC」は市場を動かすか【後編】

Microsoftの「Copilot+ PC」は画期的な機能を複数搭載しており、新たな「AI PC」としてPC市場を動かす可能性がある。Copilot+ PCで何ができるのか。その革新性の陰にはある懸念も潜んでいる。

2024年08月03日 10時00分 公開
[Gabe KnuthTechTarget]

 Microsoftは2024年5月、AI(人工知能)分野において大きな動きを見せた。それが、AI技術関連のタスク(AIワークロード)の処理能力を向上させるPCブランド「Copilot+ PC」の発表だ。

 Copilot+ PCはAIワークロードの処理に最適化されたNPU(Neural Processing Unit)とQualcomm製の「Armアーキテクチャ」採用プロセッサを搭載するSoC(システムオンチップ)「Snapdragon X Elite」など、一定の要件を満たすSoCを搭載する。こうした要件は、それまで曖昧だった「AI PC」に1つの定義を与えることになった。

 企業でのAI PCの普及には、さまざまな用途で役立つ機能が必要だ。実際のところCopilot+ PCを使うと何ができるようになるのか。使用時の懸念はあるのか。そうした疑問への答えを見ていこう。

結局「Copilot+ PC」で何ができるのか?

 MicrosoftはCopilot+ PCの発表とともに、Copilot+ PCで利用可能になる機能として以下を挙げた。

  • Restyle Image
    • 画風や画像スタイルを変化させたり、画像中の背景や前景を変化させたりできる機能。
    • 視覚的に楽しいだけではなく、コンテンツ作成にも役立つ。
  • Cocreator
    • ラフスケッチやテキストベースの指示を基に、グラフィックやアートを生成する機能。
    • コンテンツ作成を支援する。
  • Recall
    • PCの画面を5秒ごとにキャプチャーしてタイムラインに保存することで、エンドユーザーが過去に見たコンテンツを素早く検索し、再びアクセスできるようにする機能。
  • ライブキャプション
    • リアルタイムで40種以上の言語を英語に翻訳できる、自動音声書き起こし機能。
  • Windows Studio Effects
    • オーディオやビデオカメラに特殊効果を与える機能。

 その他にも、Copilot+ PCのNPUは以下のアプリケーションを強化する。

  • Cephable
    • ビデオカメラで人の表情やジェスチャーを捉え、それらに基づいて特定の操作を実行するアプリケーション。
  • Adobe Creative Cloud
    • Adobeが提供するクリエイター向けサブスクリプションサービス群。
    • 「Photoshop」「Lightroom」などのアプリケーションがCopilot+ PC用に最適化される。
  • DaVinci Resolve
    • Blackmagic Designが提供する映像編集アプリケーション。

Recallへの懸念

 このうちRecallについては、検索機能を修正するWindowsの取り組みは評価できる。だがキャプチャーしたデータの扱い方やセキュリティについては、追加の情報が必要だ。Microsoftによると、Recallに関するデータは全てローカルストレージに保存される。それはセキュリティ面では一定の評価はできるが、そうしたデータはどの程度隔離されているのか。例えばPCが侵害された場合、攻撃者がそのデータを閲覧できる可能性はあるのか。マルウェアはRecall関連のデータや情報にどの程度アクセスできるのか。

 Recallのセキュリティ面については、画面キャプチャーを一定時間オフにしたり、特定のWebサイトでRecallが機能するのを許可しないようにすることはできる。一方で、例えば以下の問題が考えられる。

  • Recallはエンドユーザーやその人の勤務先のリスクをどの程度拡大するのか
  • IT運用やセキュリティの観点から見て、Recallをどのように設定すべきか
    • 勤務先から運用の許可を得るために手間がかかる可能性がある。
  • Recallは機密データとそうではないデータを区別できるのか

 デバイスの技術的進歩や市場活動は近年活発化している。今後オンプレミスのWindowsアプリケーションに関する活動が盛んになることによって、新たな形で市場に影響が生じる可能性がある。

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