「LTO」準拠テープが2021〜2023年で年間出荷容量を更新し続けている。これは単純に企業が多くのテープを導入したというよりも、別の事象によって引き起こされている可能性がある。それは何か。
2021年から3年連続で、磁気テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)に準拠したテープの総出荷容量は更新を続けている――。これはLTOを策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(TPCs)が公開した、2023年の報告書に基づく事実だ。テープの需要は衰えていないことを意味する。
ただし、企業におけるテープの利用が増えているのかどうかに関しては、疑問を呈する専門家がいる。では、テープの出荷容量が増えている本当の理由とは何か。
TPCsの報告書によると、2023年のLTO準拠テープ出荷容量は152.9E(エクサ)Bに達した。2022年の出荷容量である148.3EBと比べると、3.1%増加したことになる。
調査会社IDCのアナリスト、アシーシュ・ナドカルニ氏によれば、プライマリーストレージ(本番環境で使用されるストレージシステム)と、セカンダリーストレージ(バックアップ用のストレージシステム)の需要がそれぞれ増している。このことが、テープの出荷容量の増加と直接的に関係しているという。ストレージの需要が増すにつれて、テープをはじめとするストレージの需要が増すのは自然な流れだ。
2022年から2023年にかけての出荷容量の増加率は3.1%に達した一方で、2021年から2022年にかけての増加率は0.002%に過ぎない。TPCsはテープカートリッジの出荷本数や世代に関する情報を公開していない。「そのことを考慮すると、出荷容量の増加は需要の増加というよりもテープの高密度化が要因である可能性が高い」と、調査会社IDCのアナリストであるグレッグ・マカティー氏は指摘する。この場合の高密度化は、テープ1本当たりに保存できるデータ量が増えたことを意味する。より高密度なテープを販売するようになったことで、出荷容量が増えたというわけだ。
2021年公開の「LTO-9」は、2015年公開の「LTO-7」と記憶容量を比較すると300%増、2017年公開の「LTO-8」と比較すると50%増となっている。顧客企業が新しい世代のLTOテープに更新する際には、自然と出荷される容量が前世代に比べて増加する。
テープはコストパフォーマンスに優れ、環境に優しく、長期保存に適したストレージだ。LTOは誕生以来、磁気テープとデータ圧縮技術を用いた、オープンフォーマットの大容量ストレージメディアの標準規格であり続けている。保存するデータ量の増大に伴い、企業はバックアップ用ではなくアーカイブ用としてテープを再び採用するようになった。調査会社Data Center Intelligence Group(DCIG)のCEO、ジェローム・ウェント氏は、「テープはようやく、テープが最も得意とする分野に戻ってきた」と述べる。
次回は、新たなテープの用法を展望する。
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