Microsoftは新たなAI PCとして「Copilot+ PC」を打ち出した。Copilot+ PCの登場で市場はどう動くとみられるのか。Arm版Windowsに関する同社の過去の施策も踏まえて、その影響を探る。
Microsoftは2024年5月、AI(人工知能)技術関連のタスク(AIワークロード)の処理能力を向上させたPCブランド「Copilot+ PC」を発表した。Copilot+ PCはAIワークロードの処理に最適化されたNPU(Neural network Processing Unit)の他、Qualcomm製の「Arm」アーキテクチャ採用CPU「Snapdragon X Elite」など一定の要件を満たすSoC(統合型プロセッサ)を搭載している。
AI技術の新たな活用例を強調するこの動きは、大きな反響を呼んだ。以下ではこのニュースに対する率直な感想と、PCやプロセッサ市場の展望を述べる。Microsoft が過去に試みたArm版Windowsの施策も踏まえて、Copilot+ PC登場の影響を探る。
クラウドサービス群「Microsoft Azure」で稼働する大規模言語モデル(LLM)と、Copilot+ PCで稼働する小規模言語モデルを併用する点も、今回のMicrosoftの施策の特徴だ。同社はPCやCPUの主要ベンダー、ソフトウェアベンダーとの提携の下、Copilot+ PCブランドの拡充に努めている。
「AI PC」という言葉はやや曖昧だ。これまでにAI PCとして発表されたものは、概してデバイス内のプロセッサを利用してAIワークロードを実行するという共通点がある。MicrosoftはCopilot+ PCというブランドを導入したと同時に、AI PCの定義を明確にすることに寄与した。
Copilot+ PCはデバイスでAIワークロードを実行する処理能力を備えており、搭載するNPUは40TOPS(1秒当たり40兆回の演算)以上のものだ。Microsoftは40TOPSを基準に据えているものの、この数字は今後数カ月から数年で変化する可能性がある。もしあなたが、10TOPSのSoCを搭載するマシンの処理能力について2023年時点では優れていると感じたとしても、2024年時点で同じように感じるとは限らない。近年のPCやデバイスの性能は、急速に進化している。
Armアーキテクチャ採用プロセッサで「Windows」を動作させようとするMicrosoftの試みは、Copilot+ PCだけではない。その一例が、2012年に登場した「Surface RT」だ。Surface RTは、Armアーキテクチャ採用プロセッサで動作するWindows「Windows RT」を搭載するタブレットだ。同社は当時、AppleやGoogleといった競合他社に対抗して、自社のエコシステムを強化、拡大しようとしていた。具体的には、サードパーティーがアプリケーションストア「Windows Store」(現「Microsoft Store」)向けにアプリケーションを開発してくれることを期待していた。
だがMicrosoftのその期待は、以下の要因が重なったことによって裏切られることになる。
これらの要因が重なり、Surface RTを含む初期のWindows RT搭載デバイスは成功しなかった。だがこれは過去の話だ。以下の変更を遂げたことで、Copilot+ PCは企業向けPCに大きな影響を与え得る存在になっている。
次回は、Copilot+ PCがAppleの製品に及ぼす影響も踏まえて、Copilot+ PCの真価を探る。
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