AWSの「CloudWatch」「CloudTrail」を比較【前編】
「Amazon CloudWatch」と「AWS CloudTrail」でできるAWS運用監視の違いとは?
「Amazon CloudWatch」と「AWS CloudTrail」は、AWSサービスのログを記録してトラブルシューティングを支援する点で共通する。しかし両者の役割や機能は異なる。それぞれの違いと機能を解説する。
Amazon Web Services(AWS)の「Amazon CloudWatch」(以下、CloudWatch)と「AWS CloudTrail」(以下、CloudTrail)は、AWS管理者にとって不可欠なツールだ。CloudWatchは、AWSインフラの予測監視やログ管理、アラート設定を実行するクラウド監視サービス。CloudTrailは、AWSアカウント内での設定変更履歴や、管理イベントの記録を提供するログ監視サービスだ。
CloudWatchとCloudTrailの役割は異なるが、両者を組み合わせることで運用管理におけるさまざまな利点を引き出せる。2つのツールの違いと、何ができるのかを押さえておこう。
「Amazon CloudWatch」と「AWS CloudTrail」の違い
CloudWatchとは
CloudWatchは、AWSインフラの稼働状況の傾向を特定したり、予測したりするのに使えるツールだ。AWSインフラの稼働状況を把握し、問題発生の予兆を事前に警告する。
イベント(システムにおける状態の変化や変更)に応じてコードを実行する「AWS Lambda」の仮想CPU(vCPU)使用率や、仮想マシン(VM)サービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)で利用中のVMのメモリ使用量など、実行時のメトリクス(システムのパフォーマンスに関するデータ)を監視し、設定したしきい値を超えるとアラームを出す。この仕組みで、管理者はインフラの可用性に影響する問題が発生する前に、問題の原因に対処できる。
CloudTrailとは
CloudTrailは、AWSインフラに対して「誰が、いつ、何をしたか」を管理者が把握できるようにするツールだ。
CloudTrailはCloudWatchとは異なり、実行時のメトリクスを扱わない。特定のユーザーやロール(役割)、AWSサービスが、AWSサービスに加えた設定変更の全てを記録する。CloudTrailのこの機能は、ユーザーの行動の追跡やシステムの問題解決に役立つ。
コンサルティング会社Xennial Innovationsのフルスタック開発者のイーウェイ・シェン氏は、CloudTrailの利用例を次のように説明する。「AWSのコードデプロイ自動化サービス『AWS CodeDeploy』が突然中断したら、CloudTrailのログから、デプロイグループの情報を記録している『UpdateDeploymentGroup』の変更履歴を参照できる。誰がいつデプロイグループを更新したかを知ることで、トラブルシューティングを大幅に簡素化できる」
「CloudWatch」と「CloudTrail」の比較
CloudWatchは実行中のシステムのメトリクスをリアルタイムで積極的に監視し分析するのに対し、CloudTrailはAWSのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じて発生した設定変更や状態の変化を受動的に記録する。
CloudWatchでは、リアルタイムのメトリクス追跡やイベント履歴の管理、時系列データに基づく傾向のグラフ化が可能だ。これにより、AWSのインフラにおける将来の使用パターンを予測できる。管理者はその結果を基に、ボトルネックやパフォーマンスの問題が発生する前に追加でリソースを割り当てることができる。
CloudTrailは特定のAWSアカウントで生じたリソース変更を追跡し、「Chain of Custody」(証拠保全)に必要なデジタル証跡を提供する。AWSアカウントで実行された全てのAPIコールを記録し、AWSの設定や管理、やりとりに関するアクションを可視化する。CloudTrailはこれらのイベントの履歴を、ストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)で作成したバケット(データ保存の基本単位)に保存する。
CloudTrailは監査やガバナンス、コンプライアンス(法令順守)のための機能に特化している。リソースの更新に起因するトラブルシューティングにも役立つ。監査の他、インフラの設定ミスの根本原因の分析を実施するときに、CloudTrailは以下の情報を提供する。
- 実行されたアクション(操作や処理の総称)
- 以前に実行されたアクション
- アクションを実行したユーザーやアカウント
- アクションの発生時刻
CloudTrailは、過去のアクションの履歴に関する洞察を提供する。一方でAWSリソースの管理サービス「AWS Config」と異なり、悪意のある設定変更やAWSインフラの異常な活動に対してアラートを出すことはできない。
AWSのクラウドエンジニアであるヴァイシュナヴ・ジョイス氏は、S3におけるバケットの消失や、EC2インスタンスが意図せずオンライン状態になった際にCloudTrailを使って原因を特定している。「CloudTrailは、私のお気に入りのAWSサービスだ。重要なタイミングでどのユーザーやサービスがリソースを削除したり、作成したりしたかを特定することは、デバッグ時に非常に価値がある」。ジョイス氏はそう語る。
CloudWatchはCloudTrailが追跡するアクションやイベントの履歴を取り込み、AWSインフラに異常な動きがあった際にアラームを出せる。後編はCloudWatchの詳しい機能と、両者を組み合わせて利用する方法を説明する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
7
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
8
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
9
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー