Microsoftの「Copilot+ PC発表」でAppleではなくIntelが苦境に陥る訳「Copilot+ PC」は市場を動かすか【中編】

Microsoftは、「Copilot+ PC」のプロセッサとしてQualcomm製のSoCをまず採用した。これはMicrosoftの競合であるAppleや、CPU市場で中心的な存在だったIntelにどのような影響を与えるのか。

2024年07月27日 07時00分 公開
[Gabe KnuthTechTarget]

 Microsoftが2024年5月に発表したPCブランド「Copilot+ PC」は、AI(人工知能)技術関連のタスク(AIワークロード)の処理に最適化した設計を取り入れている。Copilot+ PCは、Qualcomm製のSoC(システムオンチップ)「Snapdragon X Elite」など一定の要件を満たすプロセッサを搭載する。

 Copilot+ PCが、MicrosoftのクライアントOS「Windows」搭載PCとしてQualcomm製のプロセッサをまず搭載したことで、PC市場はこれからどう動き、AppleやIntelにはどのような影響があるのか。実は苦境に追い込まれる可能性があるのはIntelだ。それはなぜなのか。

「Copilot+ PC発表」でAppleではなくIntelが苦境に立つのはなぜか

 Copilot+ PCは、AIワークロードの処理を担うプロセッサである「NPU」(Neural Processing Unit)を搭載する。Copilot+ PCに搭載される QualcommのSnapdragon X Eliteは、「Armアーキテクチャ」採用のCPUを搭載している。MicrosoftとQualcommのこの協業は、Microsoftの競合であるAppleや、半導体ベンダーのIntelにどう影響するのか。

Appleへのプレッシャー

 MicrosoftはQualcommと協力して、Appleに対する競争圧力を高めている可能性がある。Apple製品を好むユーザーは一定数存在し続けると考えられるが、Microsoftが消費者の評価や信頼を従来以上に獲得し、市場でのシェアを増やすことは十分あり得る話だ。2社の協業は、特にバッテリー寿命と性能の面での進歩を実現しており、Apple製品の魅力やエンドユーザーの選択に影響を与える。

Intelの立場の喪失

 Microsoftは今回、IntelやAMD(Advanced Micro Devices)といった従来の重要パートナーとの協力には重点を置かない形で、Copilot+ PCを発表した。Appleも独自のArmアーキテクチャ採用プロセッサへの移行を進めており、Intelにとっては市場シェアを喪失しつつある状況だ。

 この状況に対処するために、Intelは以下をはじめとする技術革新を進めている。

  • プロセッサの機能を独立したモジュールとして設計し、それらを組み合わせる「モジュラーアプローチ」の採用
  • AIワークロード処理を強化するNPUの提供開始

 これらの進化は、Intelの次世代プロセッサ「Meteor Lake」「Lunar Lake」の性能を向上させることが期待される。IntelはMicrosoftとAMDがCopilot+PCの強化に向けてハードウェアを構築していることを認識しており、プロセッサ市場の競争は激化していると言える。

 Intelは依然として業界の中心的存在だ。例えば「Intel vPro」は、PC管理やセキュリティを重視した技術および機能群であり、同社の競争力を高める製品の一つになっている。とはいえMicrosoftがQualcomm製SoC搭載のCopilot+ PCをまず発表したことは、Intelにとってはこれまでにない苦境だ。同社はこの状況に慎重に対処し、新しい技術や改善を継続的に導入することで、競争力を高める必要がある。


 次回は、Copilot+ PCの主要機能と懸念点を取り上げる。

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